第5話朝からヤバい夏美に翻弄される兄と金瀬

翌日。

腹に圧迫感を感じて、瞼をあげて理解できない光景を目が捉えた。

腹に金瀬の頭があり、顔をこちらにむけて、すぅすぅと気持ち良さそうな寝息をたてている金瀬の姿だった。

彼女の顔に涙が流れた跡が残っていた。

夢でみた内容は、実際にあったのか。

金瀬は、泣きながら起こそうとしてたんだよな......俺のこと。

不安だよな、知らない土地に知らない奴の家に泊まることは。

夏美がいるだけましだろうな、金瀬は。


──ねぇ、お兄さん。お兄さん、起きてください。お兄さんの隣で寝てもいいですか?寝付けないんです。私ぃっ、私は......


泣きながら、そういって起こしている金瀬の姿を夢でみた。


寝かしておきたいが、出社しなければいけない。

「金瀬さん。金瀬さーん、起きてよ。起きてくれないかな、金瀬さんー」

うっうう......ううあぁぁっうアッーあっ、お兄ぃ......さぁーん?

「朝だよ。金瀬さん、起きて」

「あうっ!はわわっとぉーっ、ごっごごめっんなさぁっいっっ!いつの間にか寝てました。すみませんっっ!」

目を見開いて、彼女らしからぬ声をあげて、二度も謝る。

両手を左右に大きく振っている彼女。

「おはよぅーっ、いー兄。朝から煩いよ、何なのぅー?」

リビングに入ってきた夏美が低い声で挨拶を言い、注意してきた。

「夏美、おはよっ......てぇっ、おまっなんで部屋着着てないんだよ。夏じゃないぞ、今は!ブラもしてねぇし、下着だけって何考えてんだよ!」

「ふへぇ?あれぇっ、ルームウェア着てないや。暖房つけてたら暑くなって、いー兄に脱がされた?もしかして」

寝ぼけたような声をあげて、下着だけの姿に気付き、おかしなことを口走る。

「妹にそんなことしねぇしっ!もっと恥ずかしがるもんだろ!夏美が脱いだんだろ、部屋着を!着てこいって、部屋着を」

金瀬は、夏美の裸を見て、手で顔を覆い隠して、恥ずかしがる。


そういえば、風呂上がりの夏美は開放的になることがあったのを思い出した。

夏になると、夏美は──ことを。


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