第2話部屋の前の扉に見知らぬ女子高生が座っていた
俺達は、マンションのエントランスを抜け、エレベーターの前で扉が開くのを待つ。
エレベーターの扉が開いて、乗り込み、3Fのボタンを押して、動き出す。
3Fにエレベーターが止まり、住まう部屋まで歩くと、扉の前で制服のブレザーを羽織っている女子高生が膝を抱え、座っていた。
「あの......ここ、俺の部屋なんですけど。何で座ってるの扉の前で」
彼女は、顔をあげて、「よっしょ」と言って立ちあがりお尻についた汚れを軽く払う。
「遅いよ、お腹ぺこぺこ~もしかして、それって私の?」
彼女は、茶目っ気のある高い声で、ひとさし指で、レジ袋をさしながら、そんなことを言う。
「名前も知らない女子高生に飯をやるわけないでしょ。誰なの、きみ?」
レジ袋を後ろに隠しながら、名前を訊ねる。
「えっ、私のこと忘れたの?西條だよ」
今、西條と名乗ったのか、彼女は。同じ苗字だけど、女子高生の知り合いはいないけど。
「えっ、俺は西條だけど」
「そりゃ、そうじゃん。あはは、そんな冗談言わなかったのに。前は」
目の前の彼女は、無邪気に笑いながら引っ掛かる言葉を口にした。
昔の俺を知っているように感じた。
「俺って、きみと会ったことある?」
「もう~冗談はいいよ。とぼけないでよ......えっ、こんな可愛い身内を記憶から抹消してるの?」
慌て始めた彼女。
身内っ、この女子高生が俺の身内だって。
「これならわかるよね、いー兄っ!」
「夏美かぁっ!?何で知ってんだよ!」
「うんっ!家を出てったときにお父さんから聞いたの」
「お兄さん、この方は?」
隣で口を挟まず、状況を見守っていた金瀬が小さく訊ねる。
「あっごめん、金瀬さん。妹だよ、西條夏美......高一だっけ、今は?」
「そこも忘れてるの?信じらんないよ、いー兄。そうだよ、高一」
膨れっ面になり、腰に手をあて、顔を逸らした。
「妹さんがいたんですか、意外です」
「まあ......近所迷惑になるからあがってからにしない?」
「そうだね、いー兄」
「そうですね」
俺は、鍵を取り出し、扉を開けて、靴を脱いで家にあがり、リビングに向かう。後ろから二人がついてくる。
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