努力は実る。
突然の生理痛により学校で倒れ、その時の
担任の動作・声・目付き・姿勢…。
出会ってわずか1週間足らずで全てに心を奪われ、担任を目で追うようになった私、そら。
だが私は、担任と両思いになりたいわけでは無かった。
担任には愛する奥さんがいる。
なんなら、今年入籍したばかりの新婚さん
だった。
私は担任の幸せを奪ってまで、幸せになりたいとは思わない。
というかそもそも、私と担任が付き合えることは"ない"のだ。
"もし担任が奥さんと出会っていなかったら
私を好きになっている可能性はあるか。"
どう考えても有り得ないだろう。
もし仮に私を好きだったとしたら、
35歳と13歳、叶うはずのない恋だ。
というか、普通に下心しかないだろう。
年齢差は22歳。私の母は35歳。
お父さんでもおかしくない年齢なのだ。
でも私は
担任の大切な人にはなれなくても、
"お気に入りの生徒"にはなりたかった。
特別特技がある訳でもないし、
顔が可愛い訳でもない。
なんの取り柄もない私が担任に好かれるためにはどうしたらいいんだろう、
と考えた結果、
・担任の担当教科である英語の勉強をすること
・英語のスペコンで一発合格をとること
・自習学習ノートを埋めること
の3つだけだった。
(スペコンというのは、簡単に言うと
100問ある英単語テストのことである。)
元々訳あって精神科に通っている私はあまり学校に行けていなかったため、
アピールするには自習勉強をして結果を出す方法しか無かった。
だが、今英語を頑張ろう〜と言ったものの、
実を言うと、私は小学生の頃から英語が
嫌いだった。
小学生の頃からずっと、英語と数学だけは
どうしても苦手だったのだ。
私はとにかく、覚えるのが苦手だった。
友達の名前や先生の名前、
数学の公式、英語の文章構成。
いわゆる"やり方"や"作り方"や"名前"を覚えるだけで、普通の人の2倍時間がかかる。
だから自然と、英語と数学はどうしても
好きになれなかった。
だが、ローマ字は得意だった。
当時流行っていた3DSのどうぶつの森で、
当たり前の様にローマ字を打っていたから
だった。
自然と染み付いていたローマ字だけは、
誰よりも覚えるのが早かった。
そして今回やろうと決めた英語の勉強。
担任に好かれる為に、私は苦手なりに頑張った。
ひたすら英単語をノートに記入し、
間違えたところだけやり直す。
そしてまた、ひたすら英単語を記入し
間違えたところだけやり直す。
これを徹底的に続けた。
得意のローマ字を利用し、がむしゃらに。
"FRIEND"を"フリエンド"と覚えるように、
ひたすらノートに書き続けた。
そして約2週間かけ、100個の英単語を覚えることが出来た。
本番は凡ミスを連発し95点だったが、
合格ラインは80点だった為余裕合格だった。
そして、次の目標。
自習学習ノート(Bノート)を埋めること。
わかる人にはわかるが、私の担任は
とてつもなく字が汚い。
そして私も字が汚い。
だからまず、綺麗に書き残す事を目標にした。
丁寧に、そして早く。
スペコン本番で間違えた単語を、ひたすら
ノートに書き続けた。
そして私は、Bノートを全ページ埋めることに成功した。
そして私は、晴れて約80ページやり終えた
ノートを提出する事が出来た。
先生はすごく驚いた顔をして、
誰よりも喜んでくれた。
あの時の笑顔は今でも忘れられない。
そして約2ヶ月後、係決めがあった。
係は9つある。
国語、数学、理科、社会、英語、家庭科、技術、音楽、美術だ。
私はもちろん、英語係を希望した。
『はーいそれでは、英語係を希望の人〜』
そう教室で聞かれた瞬間、
私はすぐに手を挙げた。
すると
「お!俺の推しじゃん〜!!いいねえ、
俺が1番やって欲しかった人が
自ら希望して手上げてくれた!
おっしゃ〜一緒に頑張ろうな!」
と、満面の笑みで言ってくれた。
思わず
「へ」
と声が出る。
「だってさぁ、Bノート全ページ自主勉して
きてくれたの、俺すっげえ嬉しかったんだもん。スペコン1発合格だったし、本当に頑張ったんだなぁって言うのが伝わってきたよ。」
『俺の推し』『1番やって欲しかった人』
そう言って貰えて、私はすごく嬉しかった。
最初は聞き間違えかと思ったけど
英語係を立候補したのは私だけだった。
紛れもない私が、
私にはもったいないような事を思ってもらえていたのだった。
そう理解した時、今までにない喜びを感じた。
そして、私のBノートをちゃんと見ていてくれたのだ。
本当に頑張ってよかった、と心から思った。
"努力は実る。"
今のこの状況には、この一言がお似合いだ。
こうして私は、
担任のお気に入りの生徒、かもしれない
生徒になれたのだった。
そして私は、叶わぬ恋をした。 そら。 @sora_1228
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