第53話 冬休みの始まり

今があるのはきっと、友達との思い出のおかげだろう。過去を振り返れば色々なことがあった。バーベキューの時は、ある意味色々大変だったな〜。


夏祭りの時は、輝色きいろちゃんがはぐれて探したっけ。花火は初めからは見れなかったけど、綺麗だったな〜。


体育祭は皆が種目頑張ってたし、文化祭デートは恥ずかしいこともあったけど、いつもと違う皆が見れて嬉しかったし楽しかった。


他にも沢山の思い出が詰まってる。けど、あの冬休み。いや、本当はいつからなんだろうか。僕は気づいたんだ、彼女に恋をしていたんだって。



☆☆☆



「あ〜、温かい〜」


僕は寒い季節の冬休みになった今、コタツでぬくぬくと過ごしている。


朝は散歩しようかどうか迷うほどに寒かった。きっと、雪がもっと降る地域であれば、確実に家で温かいお茶をすすりながらコタツでのんびりまったりと過ごしていただろう。


今はお菓子を食べながら、携帯で小説を執筆中だ。調べてみると執筆にもルールがあるらしく、初めは衝動書きしてしまい内容が荒くなってしまうことが多かった。


どんな作品を書いているのかというと、若者向けの読みやすい小説で、輝色きいろちゃんやあかねたちがそういったものに詳しいので聞いたところによるとライトノベルというものらしい。


最初は、衝動書きしてみようかなと書き始めると、中々上手くはいかなかった。素人なので、うまくいかないことは分かっていたけど、ここまで書けないとは正直思っていなかった。


自分が書きたいようにしているのに、キャラに魅力が無かったり、文の辻褄が合わなかったりする。


とりあえず30分くらいゴロゴロと寝転がりながら考えて話を書いていく。しかし、あまり進み具合は良くなかった。


「小説書くのって大変なんだなぁ〜」


棒読みで言いながら、大変さを思い知りる。

集中しているとあっという間に時間が過ぎるのだが、携帯を長時間見るのはあまりよくないので、気晴らしに寒いけれど散歩に行くことにした。


冷たい風が吹き、体が冷える。手袋にマフラー、上の服は二重に着ているがそれでも寒い。


手袋をしているにも関わらず、自分の息で少しでも暖めようとするも無駄に終わり、あの近くの公園までで散歩を終えることに決めた。


「こんなに寒いのに、あのおじいちゃん半袖って。僕には絶対無理」


ランニングをしている半袖半ズボンのおじいちゃんが、寒がりな僕の目の前を寒さなんて屁でもないと言わんばかりに駆け抜けていく。


「最近のおじいちゃんは寒さに強すぎじゃない?」


寒さに強いおじいちゃんの事を考えていると、あっという間に公園へと着き、引き返そうとする。


すると帰る方向から、誰かが走ってこっちに向かってくるのが見える。


誰なのかをよく見ると、どうやらりょうのようだ。


僕の目の前まで来ると、息を切らしたのか呼吸を整え、汗だくで息を荒くしながら用件を話した。


「ご、ごめん!」

「急に来てどうしたの? ごめんって何が? とりあえず、すごい汗だから僕の家来て。中で落ち着いて話そう」

「わ、分かった」


僕は家に帰り、涼にお風呂を貸した。服は代えを持ってきてないと思い、僕のを貸すことに。


なんなに焦って何の用事だろうかと考えていると、お風呂を終えたりょうが着替えて僕のいるリビングにやってきた。


「で? なんであんなに焦ってたの?」

「まだ言えてなかったから……」

「え?」

「まだ、謝れてなかったから」


あの時の話はもう終わらせたはずだ。俺はりょうに助けられたのだ。たとえ救急車に電話を一本してくれただけでも、僕にとっそれは助けてくれた行為だと断言できる。


過去をまだ悔いているなら、それなら……。


「幼稚園の頃の事だよね?」

「あぁ」

「もう過去のことなんだよ?」

「それでも、お前の大切な記憶を……」


過去に縛られている彼に、僕はりょうの目の前まで移動し肩に手を置いた。


そして、彼の目を真剣に見ながら告げる。


「ならさ、過去の罪がどうでもよくなるくらい友人としてずっと一緒に隣にいてよ。大人になっても一緒に遊べるくらい、もっとお互いのことをこれから知っていけばいいんだから」

「分かった。今度は俺からだな……。俺と、本当の友達になってくれないか?」

「うん、喜んで」


なぜ彼がずっと縛られていたのか、それは罪悪感というものだろう。たとえ幼稚園の頃でも、自分の罪というものは嫌なことだから思い出すのではなく、大事なことだから覚えているのだ。


りょうはもう大丈夫だろう。友達である僕がそばにいるのだから。


「で、結局どうするの?」

「急に何のことだ?」

腹黒ふくぐろさんに告白しないでいいの?」

「言っただろ? もう覚えてないだろうし、今はなんとも……」

「俺は告白するよ」


友達であるりょうには最初に話そうと思っていた。どんな結末が迎えていようとも、僕は彼女に告白することを決めた。








































 





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