第48話 仲直り(後編)
学校の放課後、教室で僕と
「幼稚園の頃、好きな子がいたんだ。正義感が強くて優しい子だった。今、その子はメイド喫茶で働いてる」
「え、それって……」
「そうだよ。
衝撃の事実に驚かされる。ラブレター貰って全部お断りしているのと関係あるのだろうか。
改めて、本当に一緒の幼稚園に通っていたのだと話を聞いて実感する。
「告白できなかったのは自分のせいだ。けど、あの頃にはとっくにあいつはお前のこと好きだったから」
小さい頃であれば、感情が表に出やすい。きっと僕に対して恨みがあったのだろう。
「で、階段で突き飛ばしたと」
「……」
どうやら、本当に突き飛ばしたようだ。
「でも、流石に話す機会は幾らでもあったと思うけど。なんで話してくれなかったの?」
「小学校の時にお前は、あの時のことや俺のことを覚えてなさそうだった。だから、たぶんもういいかって甘えがでたんだと思う」
過去の記憶が飛んでたから、謝るにしてもって感じだったのかと把握する。
「突き飛ばしたことはもういい。許す。過去の事だし」
僕の言葉に、彼は安堵した。多少怒鳴られることも覚悟していたのだろう。まぁ、病人を突き飛ばすという行為に関してはどうかと思うけど。
「ありがとう」
「で、
好きという言葉に若干恥ずかしがりながら聞く。
「いや、流石に小さい頃の話だ。当然何も思ってないよ。時間も経ちすぎてるし、彼女も俺のことなんて忘れてる」
「そっか、じゃあなんでラブレター断ってるの?」
「なんでって、好きでもない人と付き合うような趣味は持ち合わせてないだけだ」
どうやら、真剣に考えて全部断っていたようだった。彼の言葉全てが本音ではないとは思うけれど、この言葉だけは信じることができた。
「お前こそ、告白されたんだろ? 皆に」
「……やっぱり顔覚えてたのか」
「まぁ、目立ってたからな。女の子を5人も侍らせてる幼稚園児だったし」
「その言い方はやめてよ。辛い」
「でも、皆じゃないぞ。
「
僕はなぜかその言葉を聞いた後、何もしていないのに心臓に負荷がかかった。
「確か名前が……
僕は倒れ、救急車で病院に運ばれた。この後、大事な事がまだ思い出せていないことを知ることになる。
初めて好きになった、あの女の子の事を。
☆☆☆
ここは、うちのお姉ちゃんのお墓。ここに来ると、あの病院での日々を思い出す。楽しかったことや悲しかったことなどを話す日々。お姉ちゃんの本当の笑顔を引き出した、うちも好きになった男の子と話す日々。
もう手術しないと助からない状態だった、ずっと一緒にいたかった。お母さんやお父さんの悲しむ顔を見たくなかった。最後に話をしたのは、いつだったかな。泣き虫だったし、もう覚えてられないくらい時間が経ったよ。
うちねお姉ちゃんが好きだった男の子のこと、好きになっちゃったの。いいのかな。やっぱり、駄目だよね。
「お姉ちゃん、また来たよ〜。今ね、あの男の子と一緒の学校通ってるんだよ。奇跡だよね、こんなの。うち、苦手なもの食べれるようになったんだよ。好きなもの食べてただけなのにね、テレビ映っちゃったよ。天国でも、お姉ちゃん元気? また会いに来るね」
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