第45話 喧嘩

「部活動あるからさ、早速だけど話って?」


 彼には、話があると言って放課後に残ってもらった。


 小学校の頃からずっと一緒だと思ってた。

 なんでなんだと届かないのは分かっていながら、心の叫びを彼にぶつける。


「なぁりょう、僕たちが出会ったのは小学校からだよな?」

「あ、あぁ。そうだよ、今更なんだ?」


 自分から話してくれるのを待っていようとは言ったが、どうしても待てなかった。


「じゃあ、なんで僕が幼稚園の頃の記憶にりょうの姿があるの?」

「……」


 僕の言葉に彼は少し沈黙してから、自分とは全然関係ないような言い方で答える。


「さ、さぁな。覚えてない、そっくりさんか夢じゃないか?」

「……」 


 明らかに反応を見せるりょう


好味このみさんからも聞いたよ。僕たちが星空の下っていう公園で願い事した後だ。あの時、降りている階段付近に君がいたって」

「見間違いだって。他人の空似。そのの公園なんて知らないし、俺がお前と会ったのは小学生の時からだ。もう部活行くな」

「ちょっと待って……」

「なんだ? まだ何か……」


 僕は見つけた疑問をぶつける。


「なんでさっき丘って分かったんだ? 星空の下っていう公園としか言ってないのに」

「な……」

「その場所を知っているか、行ったことがある奴しか分からない筈だ。もしこれが真実だとしたら、階段から僕をつき落としたのも、お前なんだろ?」


 ここまで言って、彼は閉じていた口を開ける。


「……。お、俺は……」


 何も話してくれないりょうに僕は、怒りが込み上げてくる。


「分かった。もういい」


 僕の言葉に反応し、りょうはこちらを向く。


「じゃあね。部活頑張って」


 教室を出た僕は、家に帰った。次の日から、僕とりょうは席が隣だろうと一緒に話すことは無くなった。


 席を合わせて一緒に昼食を取ることさえしなくなった。あかね輝色きいろちゃんには、なんで喧嘩しているのかを聞かれた。でも、これは僕たち2人の問題。


 だから喧嘩している理由は言わなかった。


 僕は別に喧嘩をしたくてしているんじゃない。正直、階段から突き落とされたことは全くじゃ無くても怒っていない。そりゃね、全部を許せるかと言ったら許せるわけがない。


 下手をしたら心臓にも影響がでてたかもしれないし、頭の打ちどころが悪ければ死んでたかもしれない。


 けど、僕は今も生きてる。しかも薬を飲んでいるとはいえ、高校生まで生きてこれた。


 好意を持って接してくれて、友達とまだ言ってくれる懐かしい女の子5人とも出会えた。


 だから、この事については怒っていない。


 じゃあなぜ僕はこんなにも怒っているのか。


 決まっている。黙ったままだから、話してくれないと分からないから。なんだかんだ高校生になってもずっと、そばにいてくれた友達なのに。なんで、話してくれないのか。


 何か理由があってやったのは分かる。友達になってくれたのも思えば理由すら聞いてなかった。


 彼には返しきれない恩がある。いつも僕に見せていた心配そうな顔は嘘じゃなかった。

 誤解だったなら、それでもいい。でも、何かを話してくれなきゃ納得も相談に乗る事も、相手を許せる事もできない。


 だから怒っている。


 休みの日、インターフォンが鳴る。

 ドアを開けると、そこには紫微垣しびえんさんの顔があったのでとりあえずお約束のドアビンタ。


「あ! ごめん!」

「いあ〜、ゆっ君からのドアビンタ。幸せ〜えへへ〜」

「駄目だ。早くなんとかしないと」


 とりあえず家へと上げる。


「今日は何しに来たの?」

「用がないと来ちゃいけない?」

「え? あ、いや」

「大好きな人と……一緒にいたいから。なら、納得してくれる? えへへ」


 精神状態も治り、縛られてない彼女の笑みに、心の心拍数が上がる。この笑顔が僕に元気を与えてくれたのだった。









































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