第44話 ペアで食事

 とある学校の日。昼休みの時間に、好味このみが僕のいる教室。2年E組にやってきた。どうやら、遊びに来てくれたようだった。


 昼食をとっている僕達に気づく。すると、僕達というより輝色きいろちゃんとあかね。彼女達2人を見て、なんでか羨ましそうに見てからこっちにやってくる。


「どうしたんだ?」

「……遊びに来た」


 彼女はなぜか1回、りょうの方をチラ見してから話した。


「ねぇ、青島あおじま。小学校からずっと一緒だったって聞いたけど、出会ったきっかけとかあるの?」


 最近になって幼稚園の頃の5人とのお食事以来、あかねは僕の事をよく知りたいのか過去の事をよく聞くようになった。


 好味このみも耳を傾けている。しかし、どこか不思議そうな顔をしていた。


「あ、あぁ。心臓発作になって倒れたのを先生に言いに行っただけだ。俺は何もしてないよ」


 そう。そうだよ。あの時に、僕は……。だから、あの夢はなにかの間違いだ。


「なんか羨ましいよ。知らないゆっ君の姿を知ってるのが」

「そうだね。引っ越した後のゆっ君の事は、全然らないから」


 あかね輝色きいろちゃん。2人は、知らない僕の姿を見ているりょうに嫉妬していた。


 昼休みが終わりに近づくと、好味このみが最後にお願いを言ってきた。


「あの、うちと今度の休みに誰か一緒にお食事いかない?」 


 お誘いはとても嬉しかったけど、僕以外の3人は部活動があって行けないとの事だった。


「僕とじゃ、駄目かな?」


 暇な僕なら、手が空いているので聞いてみる。すると、どこか気まずそうにしている。


「ペアでしか食べられないの。このパフェ」


 だからか、恋人とか知り合いに勘違いされると嫌だもんな。どうしても食べてみたいんだろうな。


「気にしないよ? 気になるなら自分のクラスの友達と……」

「その子達も用事がある」

「そうなんだ……」

「……」


 僕の事は嫌いじゃないけど友達の好き。と前に言っていたけど、何かに遠慮している様子。なんでかは分からないけど。嫌われてるのかな僕。


「僕じゃ駄目? 力にはなれると思うけど。一緒にお店に入ればいいだけでしょ?」

「そうだけど……」

「僕の事が嫌い? 何かしたかな?」

「好き! あ、えっと、嫌いじゃない。うん。分かった。一緒に行ってくれる?」


 なんか僕が強引に一緒に行きたいと言っているようで、なんか複雑な気持ちが生まれた。



 


 ☆☆☆




 好味このみとの約束していた日、商店街で待ち合わせをした。


 どうやら商店街にあるお店でペアで食べられる大盛りフルーツパフェが食べられるとか。2人で食べられる大きさだから大丈夫と行きたい本人から言われている。


 待ち合わせ場所にはとっくに好味このみが着いていた。いつもの髪型の団子。服装が私服だと、やはり印象がいつもと違って見える。


「おまたせ。早いね」

「ま、待ってないよ。大丈夫」

「そっか、ならよかった」


 商店街は家から離れた場所だったので、バスを使いここまで来た。支度が遅れたので、こればかりは自分のせいだ。あんまり遠出しないから時間を気にしていたけど、どうやら杞憂だったようだ。


「そ、その……ど、どうかな?」

「? 何が?」

「だからその……」


 ツッコミをしたらいいのか分からないけど、さっきから彼女の持ってる右手のクレープと左手に持っている袋とゴミの量の存在感が凄すぎて話が入ってこない。ゴミはどうやって支えてるのって言いたいぐらい左手の上に積み上げられている。


「もしかしてさ、商店街の出店で先に余裕もって来て食べてた?」

「照れり……」

「いや、そこ照れるところじゃない」


 どうやら僕の予想は的中していたようだ。


 好味このみの持っているゴミを捨てに行った後、商店街に入る。中は左右にお店が並んでおり道は真っ直ぐ。目当ての店はどこかなと辺りを見る。すると彼女がどうやら見つけたようだった。


 ここがスイーツパフェが美味しい店らしいので、さっそく2人で入る。最初の印象は入り口が狭そうだったこと。入り口の階段を上ってゆく。


 すると、お店の扉があり中に入る。店内は狭そうと思っていたが、案外店内は広く清潔感のあるお店だった。


 ここのお店はどうやら予約制らしいので受付を済ませ、テーブルに案内される。


 食べるメニューはもう決まっているので、そのまま案内してくれた店員さんに好味このみが注文する。


「恋パフェお願いします」


 恋パフェというのが、どうやら彼女の食べたかったものらしい。ペアでなければ食べれないというのは、友達と一緒に行く人もいるだろうけど恋人同士がこういったものを注文するのかなと思った。


「おまたせしました。こちらが恋パフェとなります。こぼれないよう気をつけてお召し上がりください」


 圧倒的な量に目を奪われる。アイスに苺、蜜柑、メロン、マンゴーなどのフルーツを上手に乗せてある。ワイングラスの飲み口をかなり広げたような器に入っていてバランスを崩してしまうのが怖くなる。


 しかし、彼女は迷わず食べる食べる。どうやら、1つだけで十分足りそうだった。


 僕も1つ1つ味わって食べる。苺は甘く、アイスは舌触りもよくひんやり冷たく美味しい。マンゴーやメロンもとても甘くて美味しい。色んなスイーツが楽しめるのが良い所だと思った。


好味このみ動かないで」

「何?」

「じっとしてて」


 僕は彼女の右の頬についてるホイップクリームを取ろうと彼女の左手頬に手を添えゆっくり近づきナプキンで取ってあげようとする。


「そ、そんな……。だ、駄目だよゆっ君。それはお姉ち……」

「はい。取れたよ?」

「え?」

「頬にホイップクリーム付いてたから」


 何かを言いかけていたようだった。彼女の頬がほんのり赤い。なぜかホイップクリームを取った後は沈黙の時間が続いたのだった。


「美味しかったね。今度、皆で色んなの食べに来ようよ。きっと楽しいよ」

「そうだね。あ、皆で思い出した。青島あおじま君って、いたよね?」

「あぁ、同じクラスだし」

「そうじゃなくて、が一緒のはずなんだけど。青島あおじま君」


 好味このみの言葉で、夢の内容が確信に変わった。
























































































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