第43話 遊園地デート(後編)
遊園地のお化け屋敷に入った僕達だったが、
僕は少し疲れて呼吸を少しずつ整える。一方で、腕を離さなかった彼女も僕の顔を見てから、追いかけていたお化けがいない事を何度も確認し落ち着く。
「こ、怖かった〜!」
しかし、また涙目になりながら泣き出す。僕は彼女の頭を優しく撫でながら、落ち着くのを待った。
「もう大丈夫だよ」
「うん。なんで、ゆっ君は平気なの?」
実を言うと、なんで自身は平気なのか。それはなんとなく分かっていた。理由は、
過去の彼女の怖さを見て、あれより全然怖くないと思ってしまったのだ。よって体に負荷もかからず、無事に脱出できたという事だ。
「そんなことより、疲れたでしょ? 薬も飲まなくちゃいけないし、一旦お昼休憩しない?」
「分かった。なんかお昼ご飯買えるとこ行こう」
さっきのお化け屋敷で疲れた彼女を見て、お昼休憩とした。少し歩くと、遊園地内で食事ができるお店があった為そこで食べることに。
僕はフランクフルト。彼女はサイズの大き目のチーズハンバーガーにした。
「う〜ん! うっめじゃ無かった! お、美味しいな」
「い〜よ、今更。素の
「そ、そんな。だってよ、可愛くないだろ?」
「いや、全然思ってないよ。そんなこと」
どうやら、男勝りな口調や食べ方を今更気にしていたようだ。
「ほら、頬にケチャップとマスタードついてる」
「え、嘘。どこ?」
「動かないで。取ってあげるから。はい。取れた。こういうところは可愛いね」
「……ば、バカ……」
紙のナプキンで、彼女の口元と頬についてるケチャップとマスタードを取る。すると、僕の言葉で少し恥ずかしそうにしていた。
食べ終わった後、他のところへと周った。ゴーカートや迷路など様々な乗り物に乗り、辺りは遊んでいる間に暗くなってくる。
ゆっくりゆっくり回るに連れて、景色がどんどん高くなり町並みが見えてくる。綺麗な優しい夕日の光に照らされる町がとても綺麗。彼女の姿と夕日が重なり、じんわりと紅く光輝く。
「なぁ、ゆっ君。恥ずかしいからよ、1回だけの我儘なんだが。私の事、名前で呼んでくれねえか!」
そういえば、彼女の事をまだ名前で呼んだことは1度もない。というか、やっぱり名前呼びというのは恥ずかしさが込み上げてきてくるものだと思う。
僕は彼女に壁ドンされながら頼み事をされているこの状況に苦笑いしながら、頼みを受け入れた。
「み、……緑」
名前で勇気を出して呼ぶと、彼女は赤くなった頬に両手をあててニヤける。その姿はとても可愛らしいものだったと忘れずに記憶に保存したのだった。
帰りのバスの中。彼女は満足したのか笑顔で僕の肩に倒れながら寝ていた。この時も、僕の腕をなぜか掴み離さず安心した顔で、幸せそうに寝言をいいながら寝ていた。
しかし、彼の掴む僕の腕が赤みを帯びていた事はここだけの話にしようと思う。
到着したあと、僕達は家のある同じ方向へ歩く。彼女は名残惜しいのだろうかまだ手を離さず、一緒に家へと帰る。
「ずっと、こうしてみたかった。やっと1つ夢が叶ったよ」
「楽しかったね。また行こうね、皆と行けばもっと楽しいよ」
「バカ!」
「ブッ!」
なんで最後に殴られたのか。本当に女心は難しい。
打たれたあと、先に帰って行く彼女を歩いて追いかけながら家へと帰っていくのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます