第42話 遊園地デート
とある遊園地に僕達2人は来ていた。
「とうとう着いたな! 楽しみだな!」
「そうだね! 母さんが許してくれてよかったよ」
僕と一緒にいるのは
なんでくれたんだろうかと思った。彼女が説明するには、店長はこの日家族との約束があるから行けないのだとか。友人からくれた物だけど使わないのも失礼だと感じた店長が、心優しくくれたとのこと。
一緒に行きたい人と行っておいでと言われたらしく、そこで休日暇をしていた僕に誘いがかかったということだ。
「その店長さんには感謝しないとね」
「ああ。マジで楽しみだ! 何よりお前と、その……居られるのが嬉しい!」
「……。こ、声でかいよ……。」
男勝り、いやヤンキー勝りな口調。可愛い服を着ていてもいつも通りなのが、なんとも言えない。
しかし、やはり女の子である事を思い出させる可愛い笑顔でつい嬉しくなることを言うので、僕は赤面する。
「そういえば、心臓弱いなら絶叫系も無理だよな〜」
「そうだね。乗りたいの?」
「乗りたかったけどな。でもいいんだ!」
「無理しなくても、僕は待ってるよ?」
「無理なんかしてねえよ。お前がいればいい。一緒にいてくれればそれで」
男勝りな台詞を口にする
おかしいな〜。思ってたけど、立場逆だよね。絶対。
「じゃあ、何に乗る?」
「そうだな〜、ティーカップとかどうだ?」
「あ〜、あのゆったり座るだけの。そうだね。あれなら乗れるよ」
僕達が選んだのは茶会のティーカップというティーカップ型の乗り物で、ゆっくりクルクル回るものだった。
順番はそこまで長く待たないで済んだので、乗り込む。席の真ん中にある円盤を回すと回転する速さが変わる仕組みらしい。
「遊園地来るのは、実は2回目なんだ」
「病気のせいか?」
「まぁね。今はずっと薬を忘れずに飲んでるけど。体調に異変があった時の為に隣に誰かがいないと母さん不安がるから。最初は不安がっててね」
友達と一緒に行くと聞いた母さんは、僕に薬を持たせて「遠慮せずに体調悪い時はその人に言うのよ」と遊園地に行くことを許してくれた。母さんには本当に感謝している。
ティーカップに乗った後、僕の次は彼女の乗りたいものを探した。
「
「え、私か? そうだな〜。あ! あ〜、あれも駄目だよな」
彼女が指差す方向にあるものは、お化け屋敷。ここの遊園地は、絶叫系とこのお化け屋敷が目玉。お化け屋敷は大人でも泣くぐらい怖いという噂もあるくらいだとか。
「う〜ん。い、いや。行こう!」
「で、でもよ。大丈夫なのか? 心臓弱いならこういうやつほど駄目なんじゃ……」
確かに駄目かもしれないけど。こう、自分の為に遠慮されているのはなんか違う気がしてならない。
「だ、大丈夫だよ! ほら、行こ!」
「ちょっ! ……」
僕は彼女の手を取り、お化け屋敷へと入った。順番が回ってくると、入口から早速入ることに。
辺りは結構暗い。しかし、少し進むと目で見えなくもないくらいの明るい場所がある。
そこには誰もおらず、1つの立派なピアノと棺桶があった。
「ねぇ、その……」
「うん? 何?」
「ううん。なんでもない! それよりよ、あれなんだろうな」
暗いから分からないけど、恥ずかしいようで嬉しそうな顔をしているのを確認する。なんでもないのならまぁいいかと思い、目立つピアノに目を向ける。
そこには、『弾いてください』という1言だけ書かれている。
なぜか僕は全然怖さを感じないが、隣で僕の腕をしがみつく
「お化け屋敷に行こうっていうから、得意なのかと思ってたけど」
「ば、バカ! 私だって怖いものくらいある!」
「じゃあなんで入ってみようって言ったの?」
「だって、怖くても入らないと勿体ねえだろ! せっかく店長がくれたんだから!」
義理人情が厚いというか、彼女らしい理由だった。
「ピアノ弾くよ?」
「こ、このまま腕掴んでていいか?」
「安心するなら、掴んでて」
僕が不安になっていたのに立場がまた逆転してしまい、僕も内心戸惑っている。
彼女の新しい一面を見て、女の子なんだなと思った。
ピアノは弾いたことが無いので適当に弾く。
すると、弾き終わったにも関わらず、ピアノはある曲を勝手に弾いていた。
そうこれは、ベートーヴェンの「月光」という曲だった。
曲は鳴りやみそうにない。
するとこんな状況の中、ピアノの隣りにある棺桶が突如開く。すると、中から血まみれの顔の人物が包帯姿でこちらに向かってくる。
「きゃーー!」
「
僕も彼女もパニック。っていうか、柔らかじゃなくて!
今は目の前から迫ってくる包帯のお化けから逃げなければならない。
僕は大丈夫だけど、彼女のメンタルが限界だ。
「あの、すみません! 非常口はどこですか?」
僕は目の前のお化けの人に非常口の場所を聞く。すると、指をゆっくり指して案内してくれた。
「ありがとうございました!」
そのまま、僕は非常口から出て、腕を離さなかった彼女を慰めるのであった。
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