第40話 店の中で

 結果、橙好味だいだいこのみという人物と話す機会が無かった。というのも、なんかだいたい暇があれば食べ物を食べてて、幸せそうに食べているところを見てしまうと邪魔しないでおこうとなってしまうからである。


 機会を伺っていると休日になってしまい、今は昼ご飯を外食で済ませようと店を探していた。


「休日だし、人多いな。いや、あのムジが原因か」


 ムジとは、お店の名前である。色んなものを売っており、本や服、子供用おもちゃやブランド品も扱っている大きな店。もちろん飲食店もそのお店の中にある。


 僕はムジに入り、ここの飲食店を利用する事にした。飲食店は1階と2階にあるのだが、今回は2階を利用する。そこには食堂スペースがあり、カレーや海鮮、うどんなど様々なものを売っている店がある。


 今回は、少し高いが海鮮の料理を注文した。注文すると、番号を渡され順番を待つ。


 テーブルのある空いている席に座り待っていると、ある飲食店のところが騒がしい。


 何事かと見てみると、バカでかいチャーハンというチャレンジメニューを頼む猛者がいて皆が気になってみている。


 それもそのはず、そのメニューにチャレンジしているのはうちの高校の生徒。そして、いま人気の橙好味だいだいこのみがチャレンジしているのだ。


 積み上げられたチャーハンのには、唐揚げが数個。さらに、チャーハンを食べ進めていくと、中にはさらに追い打ちをかけるお肉が入っている。制限時間は60分。その間に食べられればお代はタダ。美味しそうに食べてかつみるみると量が減っていく。見ているだけで、お腹一杯になりそうだった。その場を後にし、自分の番が回ってきたので、海鮮丼を先に取りに行き食べるのだった。


 僕の頼んだ海鮮丼には、タコにイクラ、マグロ、イカなど入っていて、1000円ぐらいしたが、とても満足のいくうまさだった。


 僕が食べ終わった頃には橙好味だいだいこのみは、ぺろりと完食。お腹の中身は掃除機かブラックホールでも詰まっているのではと思うくらい食べている。


「あれって……。あっ! ゆっく~ん」


 僕の顔を見てすぐに、こちらに向かって来た。


「え、え~と。半信半疑だったけど、やっぱり僕が幼稚園の時出会った橙の色が入った星……」

「あれ? あの頃にも同じこと言ってたね。絵本の話を真似して見に行こうって言いだしたんだっけ」

「覚えてるなんて凄いね。という僕は、過去の記憶が抜けてたわけだけど」

「覚えてたわけじゃないんだね。久しぶり~」

「久しぶり」


 垂れ目な分、眠たそうな顔をしておっとりとしている。話してみれば外見で見た通りの感じ。あの量を食べた人物であるのが疑わしいぐらいギャップがある。


「見てたけどよく食べるんだな」

「うん。美味しかった」

「あ、そうか。夢で見た星を美味しそうって言ってたのは、君だったのか。納得した」

「小さい頃のうち、そんなこと言ってたの? なんだか照れり。でも、なんか言ってた気がする。他の4人は元気?」

「一緒の学校にいるぞ全員。僕も含めて全員、新谷高等学校だ」


 そう言うと、「お~同じ学校だ~」とマイペースな返事だった。


「僕も人のこと言えないけど、気づかなかったの? 皆がいること」

「皆が引っ越しちゃったからね~。成長した顔は、誰でも分からないと思うよ?」

「まあ、普通そうだよね」

「そっちは体まだ治らないの~?」

「うん。一生付き合っていく体かもしれない。医療費も結構かかるから、薬を飲みながら生活しているんだ」


 僕たちは、デザートのクレープを食べながらお話した。今思えば、この子がマイペースでおっとりした性格のせいかゆったりとした時間を過ごすことができた。でも、あんだけ食べておいてデザートまで食べれるとは思ってなかったので、驚いたけど。


「今度、皆と一緒にお食事したいな~」

「そうだね。予定合わせて皆で行こっか」

「でもそっか~、皆相変わらずゆっ君のこと大好きなんだね」

だいだいさんは、」

好味このみでいいよ~」

「じゃあ好味このみ。皆がその……僕のこと好きなの知ってたの?」

「うん。出会った頃からバレバレ~」


 恐ろしい観察眼をもった子であることをこの時知った。いや、僕が小さい頃というか今も変わんないかもだけど。鈍感なだけか僕が。


 いろいろと話した後、お店を出て挨拶して別れた。僕は一番気なる不思議な子だったな~と思いながら、また話せる時が楽しみになるのだった。





















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