第39話 嫌な夢

『もう終わったの? 満足した?』

『うん! お願いごとしたよ、皆で!』

『願いが叶うといいわね。じゃ、階段降りて車乗って。皆の家まで送るわ』


 これは、母から聞いたあの場所の階段。


『皆! あとは帰るだけなんだから階段走って降りないの! 怪我するでしょ!』


 そうだ。僕はこの時、走ったらいけないから。ゆっくり階段降りてて、母さんは他の5人が怪我しないよう追いかけたんだ。


 であの時、僕は転けたのか?


『お前が、いなければ!』

『え……』


 後から聞こえたあの声と共に、階段から落ちた。そうだ。僕は、誰かに背中を押された。押した人の姿、あれは……。


「はっ!」


 起きたとき、僕の手と額には変な汗がでていた。


 目が覚めた僕は、いつも通り薬を飲み、ご飯を食べ。学校へと向かう。


 登校途中、りょうと偶然出会い、そのまま一緒に登校する。


「よ、おはよう」

「お、おう。おはよう」

「どうしたゆう? 元気無いぞ」

「い、いや。なんでもない」

「……そうか。ならいいが。気分悪いときとかはちゃんと相談しろよな」

「ああ、ありがとう」


 嫌な夢が頭から離れずチラつく。この夢の内容は、今はまだ伏せておこうと決めるのだった。


 昼休みになるといつものように弁当を……。

 ってあれ。弁当がない。


「弁当忘れた。今日は購買か」


 この学校にも購買や学食は存在する。学食にはセットメニューやカレーやらうどんなどが500円で食べれる。購買はパン類が多い。あとは菓子パン。どっちも一緒か。


 僕はりょう達に、先に食べててくれと頼み、少食な僕は購買の物で十分足りると判断。


 購買は食堂の中で売られているのだが……。


「ごめんなさいね。さっき女の子がほとんど買って行っちゃってもう品切れなの」

「そ、そうなんですか。凄い食べるんですねその子」

「毎回よく買ってくれるから、売れ残りが無くて助かるわ」


 購買のおばちゃんは感謝すれど、僕の腹はまだ満たされていない。ちょっと高いけど、学食にすがることにした。


「Aランチセット1つください」


 学食は販売機で券を買って渡せば貰える。今回頼んだAランチセットは、白ご飯に味噌汁。キャベツの千切りとハンバーグに沢庵たくあんまでついている。白ご飯は僕にとっては丁度いい量なので有り難い。


「最近人気だよな。美少女フードファイター。食べることが好きで容姿も可愛い。最高かよ!」

「確かさ、この学校の生徒なんだよな。この間テレビにでてて可愛かった。幸せそうに食べる姿がいいんだよな。食べてたものが売れてて凄いって聞いたぞ」


 静かに1人で食べていると、つい他の人の話が耳に入る。


「確かさ、橙好味だいだいこのみっていうんでしょう? 確か2年D組の」


 名前が出た途端、まさかと思った。最後の1人。過去に僕が見つけた橙色の星かもと思ったのだ。


 他にも失礼ながら聞き耳を立てて聞いていると、食べる量が尋常じゃないことと好きな食べ物が蜜柑。髪型はお団子にしていて葉っぱのついた髪留めを使っているせいか、お団子が蜜柑のように見えるらしい。


 僕は気になるため、2年D組に向かった。出入り口の戸を開けこっそり見ると、6段もの積み上げられた巨大弁当を食べている女子がいた。


「本当に美味しそうに食べるよね。まぁ、でも顔とのギャップあり過ぎて量に引くけどね」

「無駄に弁当デカイもんね」


 影で色々と噂されているその人は、眠たそうな垂れ目で、1段10分ペースで食べている。もはや化け物かと思うが、食べている時は本当に美味しそうに食べる。その姿を見てから、邪魔してはいけないと思い、またの機会に話を伺おうと決めたのだった。


 その後、教室に戻ると休み時間はもう残り少なく。一緒に食べようと思っていたあかね輝色きいろちゃんが怒っていたのは言うまでも無かった。



































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