第34話 メイド喫茶

 今年の文化祭は濃い3日間だった。特に自分からやるようなものじゃない出し物に参加することが多かった気がする。


 ファッションショーは恥ずかしかったけど、モデルのように見せる動きというものが難しいことを知った。メイド喫茶に入ったのは初めてだったし、3年生のダンスパフォーマンスはキレのある格好いいダンスだった。最後の日にやった愛してるゲームなんて、顔から火が出るほど恥ずかしかったけど、想いを互いにぶつける事ができた。


 彼女達が聞いていたかは分からないけど、伝えた言葉を嘘にしない為にも、あと2人を見つけて過去に願った事を思い出す。


「でもあと2人。どこにいるのかな?」

「居ないんじゃない?」  

「今更だけどさ、君達は昔の友達に会いたいとかそういうの無いわけ?」

「え〜、だってパターンからしてさ絶対……ゆっ君好きな人が増えて不利になるだけじゃん」

「え? なんて?」

「あーもう! 馬鹿!」


 質問しただけでぶたれる。理不尽なり。僕の頬には、あかねにつけられたでっかい紅葉の跡ができた。


 今は学校の昼休み。昼食を食べている所なのだが、僕に用があるという他のクラスの人が現れた。


「えっと、僕になんの用ですか? って、貴方は執事メイド喫茶の」

「あの時は〜。ご迷惑おかけしました〜。もしよろしければこれを」


 渡されたのは、本物のメイド喫茶の割引券だった。


「よろしかったら〜、私のバイト先にお友達と一緒にいらしてください。あの時は、他のお客様のせいで迷惑かけたからプレゼント!」


 割引券を貰ったあと、渡しに来た文化祭の時の執事メイド喫茶の人は去って行った。その人は、あの時と同じくどっかで見たことあるけど思い出せない歯がゆい感じがあった。


 その後、皆に何の話をしていたか聞かれた。せっかく貰ったのに行かないのは失礼と思い、皆を誘ってメイド喫茶という未知の領域に足を踏み入れてみることにした。


 輝色きいろちゃんは、この話を聞きとても嬉しそうな顔をしていた。しかし、そういうお店に行ったことがないあかねは、皆で行くならと参加してくれたのだった。




 ☆☆☆




 という訳で休日の土曜日。今日であれば部活動は休みという事らしい。皆の予定を合わせて行けるようにしたのだ。


「お待たせしました」

「やっほー、おはよう」


 待ちあわせ場所に来たのは、僕と輝色きいろちゃんにあかねりょうも彼女たちの後に到着した。


 集まったところで、割引券にも載っているメイド喫茶のお店に向かう。


「ていうか、意外だな。ゆうがメイド喫茶行きたいって言った時は驚いた」

「やりたいことを見つけるには、やったこと無い事や行ったことがない場所に転がっているかもと思って」

「変わったな。前のように、つまらなそうな顔はもう微塵も無くなった感じがする。いい事でもあったのか? って見れば分かるけど。いつからモテだしたんだ?」


 りょうは、僕の片腕を掴んでいるあかね輝色きいろちゃんを見て質問した。


「あはは、なんというか僕も信じられないんだけどね。幼稚園の頃からの友達、でした」


 乾いた笑い方をしながら話すと、りょうは焦った顔になる。


「へ、へえ~。よ、幼稚園の頃か。よく覚え、てるな」

「いや、覚えているというより蘇ってるっていう方が正しいかな。夢で見たりしてるから」


 過去のことを思い出してきていることに驚いているように見えるりょう。しかし、気のせいだろうと思い、話を続けた。


「あ、そういえば遅くなったけど、輝色きいろちゃんに言われた通り、母さんに聞いたらさ確かに頭に怪我をして倒れてた時があったって」

「え? 誰かにやられたの?」

「体が弱かったし階段付近で見つかったから、よろけて転けたんじゃないかって。その時、例の星を見て終わった後の帰り、階段付近で倒れたの見つけたみたいだから」

「じゃあ、その時の衝撃で記憶を失っていたのね」

「恐らくだけどね」


 母さんの話では、僕が過去に星に願い事をした場所。星空の下という丘に女の子含め5人であの場所に行った。そしてその丘は、階段で登るようになっていて、帰りもそこで降りるようなっている。そこで、転けて倒れて頭をうったというらしい。


 これで僕が、過去の記憶を思い出しにくかった原因が分かったのだった。



































































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