第27話 お墓の前で
学校の登校日、教室で
「おはよう。反省文無事にだせた?」
「うん。大丈夫、だよ。うん」
ぎこちない返事に違和感を覚える。そのままホームルームになってしまったので、昼休みにでも話せばいいかと自分の席に座り先生の話を聞いた。
その後の授業中、
昼休みの昼食時。弁当を食べた後で、一緒に外のベンチで話さないかと誘った。
「で、話って何?」
「今日なんか変じゃない?」
「え? な、なんの……」
「
僕の質問に、彼女は沈黙する。何かを恐れているようだった。
「僕もね。悩みがあったけど、
彼女はたまに授業中、自意識過剰でなければだけど僕の方をチラチラと見ていた。だから、僕に用があるのではないかと思ったんだけど。
「私の事……。嫌いになってない?」
「え? なんで?」
「だって、話し合う方法ももしかしたらできたかもしれないのに、拳使っちゃったし」
涙がこぼれ落ちながら語る。あの時、暴力ではなく話し合いや他の止め方をしていればよかったと。
「暴力で解決する人なんて、ゆっ君は嫌いでしょ! せっかく笑顔が好きって言ってくれたのに、あんな……」
僕は落ち着いて話を聞いてくれなさそうな
「え……。!」
彼女が落ち着いてくれるよう母さんが小さい頃よくしてくれていた行動をとってみたが、逆効果だったようだ。
「落ち着いて。大丈夫。あの時は、いきなりだったし。ああしていなければ、
そう、
「確かにもっといい方法あったかもしれないけど、君の行動は友達を守る行為だった。僕が保証する。だから、嫌いになんてなってないよ」
「私、怒るとつい手が出ちゃうから。嫌われたと後で思って。やりすぎたって」
「そうだったんだね」
彼女は、自分でしてしまったことを他人のせいにしなかった。自分の行動を振り返り、反省できる子だった。誰しもができることではない。僕は
「
「それなんだけど、あの子父親がいないの。先生がそれが原因じゃないかって」
「そういえば、部長さんが言ってたな。何か焦っているって」
「ねぇ、もう一度確認するけど、あの子とは付き合ってないんだよね?」
「え? うん」
「なんか妄想癖ありそうじゃない? 先輩や後輩に馬鹿にされてなんかいない。本当は絵を見られてびっくりして引いただけで、それを馬鹿にされたと勘違いしたんじゃ。それに、全部噂だからどこかで事実がネジ曲がっていると思うんだけど」
僕は、彼女の意見を聞いてそうかもしれないと思った。思えば、僕とずっと付き合っているという過剰な思い込みや不安定な感情。先生の噂による対処のなさから見て、先生たちは予め親から事情や彼女のことを聞かされていたのかもしれない。
僕と
「失礼します」
「あら、また来たの」
「部長さん、この間はどうも」
「いえいえ。あの子のことかな? あそこで今絵を描いてるわよ」
「お話したいことがあるんですけど、いいですか?」
「分かったわ」
僕達の真剣な目を見て、話すのを許してくれた。
「大事なことなら、ここじゃないとこでね?」
「分かりました」
僕は
「あの時の事ですよね? 3人とも本当にごめんなさい。最低だよね。怖かったよね。嫌いになったよね」
またネガティブな発言から始まる。そこへ、
「ごめんなさい。私の方こそ、やりすぎました」
気にしていたのか、両方とも謝る形であの時のことを許しあった。
「話はもう終わり?」
「まだ、あるんだ。君のお父さんの話」
「! なんで、知って……」
「辛い時、一緒に居てあげられなくて本当にごめん!」
「そうだよ! 付き合ってって言ったのに!」
僕は言葉をそのまま続けた。
「それってさ、違うよね。本当は分かってるんでしょ?」
「違う」
「あの頃に、何をして欲しかったの?」
僕に執着するってことは、僕に関係がある。そして、それは過去の出来事と何か関係があると思った。
すると、次は
「
幼稚園の時に出会い、同じ人を好きになった。彼女たちであれば、話をしてくれるのではと思い連れてきたのだ。
あんなことがあったので、
「わ、たしは……。ゆっ君にただ居てほしかった。お父さんがお仕事できなくなって、悲しそうな顔で暴力を振るわれて。痛かった、 苦しかった! 助けてほしかった! そばで慰めてほしかったの! ゆっ君の優しい笑みが好き! 私を見てくれるゆっ君が好き! 何かあれば頭を撫でてくれるゆっ君が好き……なの……」
彼女は11年分の悲しみと僕に対する想いをぶつけた。彼女の辛い過去の悲しみは、僕には拭い去ることもできない。でも、
その後、美術部の部長が先輩や後輩が
僕達はあれから数日後の休日に、
この時の彼女は、父親に今いる友達を自慢しているようだった。その時の顔に暗い影は無く、これが彼女の本来の姿であると感じたのだった。
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