第22話 お見舞い
思えばここ数日、自分にとっては忙しい日が多かったかもしれない。
バーベキューでは
それに、夏祭り。誘ってくれた
そして、学校の放課後にベンチで告白されて。最初は偶然だと思っていたのに、今はもしかしたら過去に僕が星に願った事が引き金となって引き合わせてくれているのかもしれない。
でも、輝色ちゃんには悪いことしてしまったな〜。次に
最初は名前も分からなかったけど、絵の事や噂を聞いて次第に気になっていたんだよな。あんなやばいメンヘラと過去の知り合いだったとは記憶を思い出した時には思わなかったけど。
「……」
さて、そろそろ今の現状に目を向けようか。
「熱だから寝てないといけないのは分かるけど、暇だな〜。ゲホッゲホッ。はぁ〜」
入院していた時はなんとも思わなかったのに、今はこんなに静かなのが落ち着かないなんて。友達が増えたからかな〜。まぁ、熱がでたのは慣れないツッコミや心臓への負荷が原因だと思うけど。
ベッドに横たわりながら、こんな事ばかり考えていると、インターフォンの音が聞こえる。
「あーい」
自室の2階から聞こえるはずのない返事をし、頑張って下に降りてから玄関のドアを開ける。すると、ドアの向こうには
「
「今日はちょうど休みになってな。一人になってるお前が心配になって来たんだ」
「一応、ポッカリスエットと軽く食えるゼリーもってきたけど食べるか?」
「ああ、上がって」
「多分後からお前を心配してるやつが、ここに来るから」
「
「ああ、俺が住所教えといた」
「そういえば、
「? ああ」
彼が唯一住所を教えてはいけないやつに教えたせいでで、僕はあんな目にあったのかと思うとやるせない気持ちになる。
「じゃあ、俺は帰るから。早く元気だして学校こいよ?」
「ああ」
☆☆☆
「こんにちはゆっ君。熱はまだ引いて無さそうですね」
「体弱いから免疫力低下してるのかも。とりあえず、上がって」
「はい。お言葉に甘えて。ゆっ君、お昼ご飯は食べれたの?」
「母さんが作り置きしたやつ。ちゃんと食べれたから。案外平気かも」
「夜ご飯は作り置きあるの? 親御さんの帰りが遅いって聞いたんだけど。よかったら、作ろうか?」
「うん。じゃあ、お願いしよっかな」
「お粥でも作り置きしておきます。温めて食べてくださいね」
「
「ゆっ君! ナチュラルに呼び捨て。夫婦みたいだなんて……」
まだ熱が引いてないからか、変なことを言ってしまったかもしれない。小声で悶ている
夜ご飯を作ってくれた後、
☆☆☆
熱が出て2日目、2人のおかげで良くはなったけど、まだ熱が完全に引かない。今日は休日。安静にしていれば今日中か明日には完治しているだろう。
そんなことを考えながら寝込んでいると、今日は
「こんにちは。近くのコンビニで冷たいアイスとか買ってきたんだけど」
「ありがとう。こんな所で話してもなんだし上がって」
「じゃあ、お邪魔します」
「お昼ご飯まだでしょ? これご飯も一応買ってきたんだけど。ありがとう。まだ食欲ないから自分の部屋まで持ってきてくれる?テーブルあるからさそこに置いといてよ」
「分かった」
「他の皆も来たよ。お見舞い」
「そうなんだ。ね、汗かいてるでしょ?タオルで拭いてあげる」
「そ、そこまでしてもらうわけには……」
「い・い・か・ら。それに、後は、届かない所あるでしょ?」
「わ、分かったよ」
「前から思ってたんだけど、ゆっ君って肌綺麗だよね。私はサッカーしてるから、日焼けしちゃって。気をつけてはいるんだけどさ」
「
「……」
いきなり黙り込む彼女の顔は、どこか不満げな顔だった。
「どうしたの?」
「いつまで、名字呼びなの?
「
「あの……子も、そうなんでしょ?」
「やっぱりそうじゃないかと思ってたけど、その顔は
「そう、なんだ……」
僕は彼女に夢の事、引っ越した訳。今分かっていることを全て話した。
「ゆっ君のお母さんが読んでくれた絵本が、全ての始まりって訳ね」
「そう。そのうち、3人が同じ学校にいた。もしかしたら、あと2人も一緒の学校に通っているかも」
「で、
「うん……でも」
「断ったの? 付きあうの?」
「ど、どうしたの急に……」
「だって! あたしだって、ゆっ君のこと好きだから!」
「……」
沈黙の間、
しかし、質問に対し沈黙なのも気まずい為、正直に話した。
「
「分かった。もう一回確認していい? あたし、まだ諦めなくていいんだよね?」
「う……うん」
似たような言葉を聞いたのは、これで2回目。逆にこういう場合、諦めてくださいと言って諦めてくれるものなの?
「あたし、諦めないから! 絶対振り向かせて見せるから! 覚悟しておきなさいよ!」
この時、ある記憶が蘇った。
〈幼稚園〉
『まっかちゃんっていうのやめて!』
『だって名前からして真っ赤っかじゃん』
あの時、
『ねぇ、真っ赤って君のこと?』
『だから、あたしは……だれ?』
『ぼく、やしきゆうしん。えっと先生がくれた紙にたしか、あかいあかねちゃん。きれいな名前だね』
『え、あ、ありがとう……』
突っ込んでいってそんな話をした後、話してた男の子は途中で先生が近くに来たからか逃げたんだっけ?
ていうか幼稚園の頃の僕、今より強くね?特にメンタルが。
☆☆☆
そして、やっぱりかというもう一人。
「……」
「こ、こんにちは。えへへ。心配して、フルーツを持ってきました」
「……」
「あ、あの、やっぱり来ちゃ駄目ですよね。私なんかが、多分というか絶対私のせいで風邪になって苦しんでるんですよね」
「あ〜もう、ドウゾオハイリクダサイ」
「えへへ」
まぁ、この笑顔が目の保養と疲れを忘れさせてくれるからいいか。この前は、地雷踏んだからいけなかっただけだし。メンヘラな部分を除けば可愛いもんな。
「ここがゆっ君の部屋か〜。綺麗に片付けてるね。ちょっと待ってて、リンゴ切ってくるから」
「うん。ありがとう」
どうやら、持ってきたフルーツというのはリンゴらしい。
「はい。切ってきたよ。はい、あ~ん」
「じ、自分で食べられるよ」
「いいから、あ~ん」
「……あ〜ん」
恥ずかしい。ここに
その後、挨拶をしてから普通に帰っていった。しかし、僕は知らなかった、彼女が抜け落ちた僕の髪の毛を持って帰っていってることを。
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