第19話 いざ美術部へ

 皆が集まれる学校の日の放課後。


「あれ? 僕があげた髪飾り付けてきたんだ」

「え、うん。どう? あたしあんまりこういうのつけたことないから分からないんだけど。似合う、かな?」

「うん、似合ってる。可愛……いと思うよ」


 あの夏祭りの日の帰りに、紅井あかいさんに渡した射的屋の景品の髪飾り。


 今日初めて付けているところを見て、どうやら気に入ってくれたようで嬉しかった。


「ごめ〜ん」


「掃除当番で、遅くなった」


 輝色きいろちゃんとりょうも加わり、これで全員集まることができた。


「じゃあ、約束してた通り、美術部覗きに行ってみるか」


 そう、今日は僕が不思議と気になっている美術部員の人を見に行こうという話になり、今日のこの放課後に直接皆で見に行くことになったのだった。


「ここ、だよね?」

「ああ、サッカー部の先輩から聞いた場所だし。この教室使ってデッサンとかイラスト描いてるんだってよ」


 りょうの指示に従って美術部が使っている教室にたどり着いた。早速、4人で教室の中に入る。


「失礼します」

「はぁーい。ここに何か御用ですか?」

「あ、いえ。その、僕たち絵に興味があって見学……とかって駄目ですか?」

「いえ、そういうことなら大歓迎! 部活はやってるの?」

「僕以外は全員やってます」

「? あなたはやってないの?」

「僕は生まれた時から心臓が弱くて、定期的に病院にも行ってるから、部活には入ってないんですよ」

「それは言い訳ね。多分やりたいけど、その病気のせいでまた皆に迷惑をかけるとか思ってるんじゃない?」

「! そんなこと……」

「ごめんなさいね。私も最初、美術部に入った時レベルが違いすぎて挫折しそうになったから。あなたの顔が、過去の私と重なって見えちゃってついね」


 美術部の部長の言葉を聞いて、黙ってしまった。図星をつかれるとはこういうことを言うのだろう。また倒れて皆に迷惑がかかることに、無意識に怯えていたのかもしれない。


「するもしないも、要するに君次第ってことよ。時間はまだ私達にはいっぱいあるわ。じっくり考えるのもいいけど、時間は待ってくれないからやりたいこと早く見つかるといいわね。好きに見学していって、今デッサンやイラスト描いてる人いるから。描いてるとこ見れるわよ」


 僕は部長さんの言葉を頭と心に刻み、目的である例の人を探す。


「へぇ〜、凄いなー。俺にはこういうの無理だ」

「あ、あの人格好いい! サッカーの青島君だ!」

「えっと、どうも」

「来てくれてありがとう!」

「それ君の絵? スポーツしかできないから羨ましいよ」

「そ、そんな……」


 女子に人気なサッカー部のりょうは、部員の人達とすっかり仲良くなり、絵を見せてもらっていた。


「へぇ〜、アニメみたいなイラスト。いいですね! 可愛い」

「ありがとう。でもまだまだ自分が描きたい絵になってないんですよね〜」

「応援してます!」 


 輝色きいろちゃんはアニメ寄りのイラストが好きらしい。花火の時にもアニメキャラの花火について話していたし、もしかしたらアニメが元々好きなのかもしれない。


「あら、その髪飾り素敵ね!」

「あ、さっきの部長さんですよね?」

「ええ。で、この髪飾りは誰から?」

「さっき部長さんと話していた彼から。花火の見える夏祭りがあった日の帰りに貰ったんです。射的の景品らしくて」

「そうなのね。でもその髪飾り、耳貸して」

「え? はい……」

「男性から貰うと恋人になれるっていう噂の髪飾りなの。最近女性の間で人気なのよ」

「え!」


 紅井あかいさんは、さっき僕と話をした部長さんと何やらヒソヒソ話をしていた。一方で僕は、目的の人物を探しているけれど見当たらない。


「あの部長さん。お話中すみませんけど、ここの部員で噂の多いロングヘアーの人は?」

「ロングヘアー。ああ〜、私が気にしている子ね。あの子は確か、あなた達と同じ2年生だけど知らないの?」

「え! 初耳です」

「今頃は、外の運動場付近で風景描いてると思うわ。あの子、描いたものが全部悍ましくなるから、同級生や一部の先輩がね」

「その人の絵、見に行っていいですか?」

「待って……。冷やかしじゃないのよね?」

「はい」

「分かったわ。会うのは構わないけど、あの子には気をつけて。何かに焦っている節があるから」

「分かりました」


 せっかく3人とも楽しく話しているようなので、僕だけ外にいるというその人を探しに行こうとする。


「待って、あたしも行く」

紅井あかいさん。分かった、行こう」
































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