第16話 夏祭り(後編)

 いよいよ祭りも終盤。もうそろそろ花火の時間が近づいてくる。楽しい時というのは時間の流れが著しく早く思えると誰かが言っていた。過去の僕であればどういうことか全くもって分からなかっただろうけど、今であれば少し分かる気がした。


 りょうとは暇があり体調がいい時であれば、結構一緒にいる時が多かったと思う。でも、彼女達に出会った。まだ会ってから一ヶ月とちょいぐらいしか経っていない。でも、いきなり倒れたりする僕に呆れずとはいかないだろうけど、友達としてずっと接してくれていることに感謝しているし嬉しく思う。


 そんな彼女たち2人が、もしかしたら幼稚園の時会った5人のうちの2人? いや勘違いでどちらか? はたまた両方外れか。流石に学校に5人全員ご対面とかはないと思うけど、もし起こったら本当に奇跡というか、悪い気はするけど過去の僕が願ってないのに来たというか。


「いや待てよ? 願った内容は心臓を治してじゃ無かったとしたら……。でも、それ以外無いと思うんだけどな〜」

「何ブツブツ独り言言ってんだ? 花火始まるから急ぐぞ」


 考え事をしている僕にりょうが声をかけ、花火がよく見える場所に皆で急いで行く。


「くそ〜、人混み凄いな〜」


 りょうの言うとおり、花火の時間に近づくにつれて人が多くなったように思う。


「皆いる?」

「あれ? 輝色きいろがいないよ!」

「え?」

あかねは、はぐれないようにりょうの腕掴んで先に言ってて! 僕が探して追いつくから」

「分かった! 今、名前で……」


 人混みにのまれた輝色さんを覚えているきた道を辿りながら探した。すると、輝色さんと思われる人影が見えそこに向かう。


「あ、ゆっ君……」

「見つけた! よかった〜心配したよ」

「ごめんなさい。人混みに押されて、足捻っちゃったみたい。花火間に合わなくなっちゃうよ? 先に行って」

「何言ってるの? 女の子を一人にできるわけ無いだろ? ほら」

「あの時と同じだね……」


 僕が手を差し伸べた時、輝色さんの呟いた言葉が自身の記憶を刺激した。同じ言葉をどこかで聞いたことがあるような気がする。


『あのときとおなじだね……』

『いつ?』

『わたしにやさしくしてくれたでしょ?』

『きいろちゃんに?』

『おぼえてないの?』

『ごめん』

『ううん。いいの……』

『ねぇ、ゆっ君!』

『なーに?』

『大好き!』


 夜空の下で星が見えるまで、遊んでいた? あれは僕と……。


「ゆっ君?」

「……久しぶりだね。11年ぶりぐらいかな? 輝色きいろちゃん」

「ゆっ……君。まさか、思い出したの?」

「さ、手を貸すから。掴まって」

「ゔ、ゔん」

「泣かないで。あの時は笑顔だったよ」


 久しぶりに再開した女の子は、涙目で僕に掴まったままゆっくりと一緒に歩き、花火の見える場所まで向かうのだった。


 皆と合流した頃にはもう花火が始まっていた。それは、たまたま見えた流れる星空と同じぐらい儚く綺麗なものだった。


「ごめんなさい。心配かけちゃって」

「いいよもう。それより、花火綺麗だったね!」

「うん! 一斉に高く上がって凄かった!」

「特にアニメキャラの花火なんだけど、クオリティー高かった〜」


 気にしていたのか紅井あかいさんに謝った後、あの涙が嘘のように笑顔で、花火のことで二人共盛り上がっていた。


「お前1人で行って心臓発作起こったらどうすんだよ! 俺も行ったのに」

「ごめんって。でも、紅井あかいさんを一人にするわけにはいかないだろ?」

「正論だけど、もう少し自分のことを大切にしろよ?」

「分かった。ありがとう」


 一方で僕は、りょうに1人で探しに行ったことを怒られた。万が一心臓発作で途中倒れたらどうするつもりだったのかと。


 けれど、それは輝色きいろちゃんにも言えた事だったので、あの行動は正しかったと思いたい。


 それに、過去の記憶を一部思い出すことができたので、真実にまた一歩近づいた。どういった真実があるのか分からないけれど、過去の僕が起こした奇跡がまだ続くかもしれない。その予感が、不思議にも僕の頭の中を過るのだった。


































































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