第15話 夏祭り(中編)

 あーちゃんとゆっ君がなんかいい雰囲気オーラをだしていて、マジゲキ嫉妬プンプンマルフォーエバー。このままではいけないと危険信号を察知する私、可愛星輝色かわぼしきいろは行動に出る。


可愛星かわぼしさんはりょうとどこまわったの? 僕は紅井あかいさんに連れて行かれてりんご飴を一緒に買ったんだけど」

「へ〜、いいですね! 私はりょうさんとたこ焼きを買いました」

「美味しそうだね」

「食べ終わったら皆で射的でもしませんか? きっと楽しいですよ」

「そうだね、やってみよっか」


 そう、射的。男子が唯一好きそうで尚かつ女の子が欲しいと言ったらノリノリで取ってくれそうなもの。


「いいな、射的。」

「射的か〜あたしもやってみたい!」


 青島あおじま君とあーちゃんもノリノリな様子を見て思わず私はガッツポーズをとる。


 食べ終わり、両手が空いた所で早速皆で射的のある屋台へと向かった。


「あ、あれじゃないですか?」

「そうだね、コルク銃で撃つやつみたいだ」


 私が見つけた射的屋さんはコルク銃で景品を狙い撃ち、落ちたものが貰えるというものだった。


「あたしは、あれかな〜。えい! やった! ちょうどチョコ欲しかったんだよね〜」


 あーちゃんはりんご飴といい甘いものが好きなのかチョコボールが欲しかったらしく、どうやら上手く取れたようだった。


「あ〜駄目だ。射的ってなんでこう倒れねえかな〜」


 運動神経がいいのは全然関係無いかもしれないけど、青島あおじま君は苦戦しているようだ。


「う〜ん。あれかな。よし、ゲット!やった!」

「兄ちゃんうまいな!」

「いえ、たまたまですよ」


 意外にもゆっ君がいいものを撃ち落としたようだった。よく見えなかったが、小さな物だったような気がする。


「取った景品はどんなものだったんですか?」

「ああ、これだよ」


 見せてくれた景品は、女物の髪飾りだった。


「どうして女物の髪飾りを?」

「それは……その。紅井あかいさんに」


 溜めが長かったので、一瞬私にくれるのではと期待してしまった。


「な、なんであーちゃんに?」

紅井あかいさんが誘ってくれたおかげで、今年の夏いい思い出になったから。そのお礼。可愛星かわぼしさんは、何狙ってるの? それとももう景品とれた?」

「あの、アザラシのぬいぐるみを……。可愛いので欲しいんですけど取れなくて」


 実際、一目あのぬいぐるみを見て欲しいと思ったけれどなかなか落ちてくれない。


「……すいません。もう一回やりたいので、いいですか?」

「おう、もっかいね。三百円まいど!」


 何故かもう一度射的をすると言ってお金を払うゆっ君が、私に指示する。


「一緒に狙ったら取れるんじゃないかな?」

「え?」

「ごめん、ちょっと近寄るよ?」

「あわわわ!」

「ご、ごめん。やっぱ近いよね」

「い、いえ。我慢します」

「それじゃ息を合わせて、いくよ?」

「は、はい……」

「1、2、3!」

「やった! 取れました!」

「良かったね」


 恥ずかしかったけど、一緒に勝ち取ったこのアザラシのぬいぐるみは最高の思い出であり大切にしたい物となった。


「ありがとうございます! 大切にします!」

可愛星かわぼしさんが喜んでくれてよかったよ。一緒に取ったかいがあったね」

「……」

「どうしたの?」

「いつも思ってたんですけど、なんで私達のことを名前で呼ばないんですか? いちいち呼びにくくないですか?」

「あ〜、女子に名前呼びはハードル高いかなって。あはは」

「名前で呼んでください」

「え、いいの?」

「今、ナウ!」

「じゃあ、輝色きいろ……さん」

「……」

輝色きいろさん? 輝色きいろさーんおーい」


 好きな人に名前を呼ばれるだけで幸せを感じてしまうのは、私だけでしょうか。呼ばせたのは私なのに顔の火照りが止まらない。顔を見られないように、今は黙ってうつむいてやり過ごすしかない私なのでした。






















































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