第14話 夏祭り

 なんだかんだ楽しかったバーベキューも終わり、夏休みも残り少なくなってきた。しかし、ある日また紅井あかいさんから電話がきた。


「どうしたの?」

「あ、ゆっ君? 今度皆誘って夏祭り行かない?」

「暇だしいいよ。あの2人には? もう連絡したの?」

「うん、もうしてある。その祭り花火もやってるって! 楽しみだな〜」

「あ〜、それ多分僕の家から近いやつだ」

「そうなんだ〜。歩いていける距離?」

「うん。負担かからない距離だから大丈夫」

「じゃあ、今度の夜にまたね〜」

「うん。また」


 こうして、夏休み最後の思い出を飾るのは夏祭りに決定した。内心、紅井あかいさんに誘われてよかったと思っている。いつも夏休みは何をすればいいのか分からなくなって、結局つまらない夏休みを送ってしまうから。だから、皆と過ごす夏休みはとても楽しく、夏祭りという夏の大イベントも楽しみで仕方ないのだった。




 ☆☆☆





〈夏祭り当日〉


「おまたせ〜」

「お、来たわね〜」


 今日は夏祭り。待ち合わせしていた場所には、もう3人とも来ていたようで、自分が最後だったようだ。


「今日の夜の薬は飲んできたのか?」

「心配してくれてありがとなりょう。ちゃんと飲んできたから大丈夫だよ」


 バーベキューの事もあり、りょうは心配になっていたようだ。


「こんばんわ、ゆっ君」

「ゆっ君?」

「あ、えっと。その! 夜色やしき君!」

「いいよ。ゆっ君で、紅井あかいさんもそう読んでるし」

「え? あ、ああ〜ソウナンデスネ〜。

 そういえばバーベキューの時も……聞き間違いじゃ無かったってこと?」

「どうかした? 可愛星かわぼしさん」

「い、いえ。なんでも、ないですよ〜」


 途中から小声でつぶやく可愛星かわぼしさん。しかし、紅井あかいさんもそうだが、なんでゆっ君なのだろうか。りょうからはゆうと呼ばれているから、呼ばれるとしてもゆう君とかだと思っていたのに。


 答えの出ない疑問を浮かべながらも皆に声をかけられ、考えても仕方ないことよりも祭りを楽しむことを僕は優先した。


 この夏祭りは毎年行われており、目玉がなんと言っても1000発もの打ち上がる花火だ。まだ、花火の時間まで余裕があるので、屋台で思いっきり楽しむことにする。


「ねぇ聞いてなかったけど、この浴衣どうかな?」

「あ、え〜と」

「似合う?」


 紅井あかいさんは恥ずかしがりながらも、よく見えるように両腕を広げながら浴衣を見せてくる。


 薄いピンクの女の子らしい浴衣で、柄が金魚なのがより夏を感じさせる。


「うん。似合って……るよ」

「……」

「な、なに恥ずかしがってるの? 言ってるこっちが恥ずかしいのに」

「べ、別に恥ずかしがってない!」


 恥ずかしそうにもじもじしてるのがギャップがあって可愛いと不意に思ってしまった。自分もだけど恥ずかしいのは分かる。しかし彼女の顔はそれだけでなく、浴衣姿を見てもらってとても嬉しそうな顔も見せてくれたのだった。


「許してあげるから、あれ一緒に買おうよ!」

「許すって何を?」

「だから、いいから!」

「分かったよ。ていうか、りんご飴とか食べるんだね」

「どういう意味よ」

「意外だな〜と思っただけ。可愛いところもあるな〜って」

「べっ別に好きってわけじゃないんだからね!」

「はいはい、いって!」

「ほらゆっ君、買いに行くよ!」


 僕の腕を引っ張りながら、可愛い一面と楽しそうな顔を見てつい僕も心が躍る。今までと違い、彼女のおかげで有意義な夏休みになっていると思った。


 買ったりんご飴を食べながら一旦、りょう達の元へと戻る。


 戻る途中、彼女がりんご飴を舐めるのを見て、僕の目にはなまめかしく映り、気づかれないようそっぽを向いた。


「あ〜、どこ行ってたんですか? あれ、ゆっ君顔赤いよ?」

「そ、そんなことないよぜんぜんないよ〜」


 りょう達と合流した後、可愛星かわぼしさんの言葉に動揺し必死に僕は誤魔化したのだった。


































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