第12話 バーベキュー
あたしは悩んでいた。最近になって知ってしまったこの気持ちを。ゆっ君のことは、アルバムを見て思い出した。私の小さい時の初恋の人だったこと。そして、まだその知らなかった時でも、あのサッカーの試合の必死に友人を応援する姿に心打たれていたことを。
「どうしよう。本人があたしの顔あれだけ見て覚えてないってことは……」
怖い。最近知ったとはいえ、私の事をどう思っているのか。私の顔を覚えてないってことは、それだけ時間が経ったということもあるけれど、あたしとの思い出や存在が薄いって事だと思うと辛くなる。
「今は夏休みよ! まだ、何かあるはず!」
あたしはパソコンを使い、夏休みの定番イベントを調べた。すると、沢山の項目がでてくる。
「え〜と、セッ! なんで一番上からアウトなのがでてくんのよ! 次、バーベキューに花火、夏祭り! これよこれ、こういうの探してたの!」
検索してよかったものから選び、皆と交換した携帯番号を一人ずつかける。
「あ、もしもしゆっ君? え、ほんとにこんな言い方だったっけ名前? こ、細かいこと言わないでよ! いいでしょ、あたしがどんなふうに言おうと! ってそうじゃなくて……皆で暇な日バーベキューしようよ! 親に車だしてもらうからさ。いい? やった! じゃあ、日曜日どう?」
☆☆☆
〈バーベキュー当日〉
「お父さん、今日はありがとう!」
「このくらいいいよ。皆と楽しむといい」
今私達は、お父さんの運転する車で水の綺麗な川辺のキャンプ場に向かっている。今日は日帰りだから泊まりはしないけど、目的は楽しい思い出とゆっ君ともっと仲良くなること。
「うふっ」
「うん? ……」
「お父さん! 前前!」
「おおっと!」
「安全運転してよ!」
「あ、ああ。ごめんごめん」
お父さんの運転で無事たどり着けるか若干不安になりつつも、なんとか無事目的地であるキャンプ場に着いた。
「う〜ん! っあ〜、シャバじゃなかった! 空気がおいしいわね!」
「今シャバの空気がうまいとか言おうとしてなかった?」
「ま、間違えそうになったのよ! 言わせないでよ!」
「どうやったらそんな間違いに?」
「でも空気がおいしいのは本当でしょ!」
「まぁ確かにね。後で、
好きな人の笑顔がこんなにも嬉しく思う。連れてきて良かった。そう感じた。
会話した後、皆水着に着替えて最初は川で遊んでお腹を空かせてからバーベキューをすることにした。
(あたしの水着姿、
見せつけてやるんだから!)
あたしが選んだ水着は攻めて赤いビキニ。
下はフリルがついていて可愛いので、気に入っている。
しかし、別の可愛さを兼ね備えた天敵、カワボで可愛い
その姿はまさしくヒマワリの妖精。頭にかぶっている麦わら帽子、そして極めつけは黄色の花柄に肩から背中にかけたフリルの付いている水着だった。
「どうでしょうか? その、この水着。似合ってますか?」
「うん……。可愛いと、思うよ」
「あ、え〜と。ありがとうございます」
自然に上目遣いで相手の感想を聞いている、こいつできる! と、あたし
運動してはいけないゆっ君は、今回は泳げないから水着姿じゃない。一緒に泳げないのは残念だけど、せっかく来てくれたこのチャンス。無駄にはしない!
「どっどぅうかな?」
緊張のあまり変な言い方で水着姿の感想を聞いてしまう。
「そ、その……。とても、綺麗です」
「あ、え、その。あ、ありがとう……」
「ひっ! あっ! はぁ〜ふぅ〜。大丈夫。ギリギリ見てない見てない見てない見てない見てない見てない見てない見てない」
「ど、どうしたの?」
急に様子がおかしくなったゆっ君に首を傾げる。すると、あたしの胸部付近を指差すので見ると、胸の水着が解けていた。
「きゃー! 見た?見た!?」
「大丈夫見てない見てない見てない見てない見てない見てない見てない見てない見てない! 慌てて目隠してギリギリ、はぁ〜はぁ〜深呼吸。落ち着け俺落ち着け〜」
急いで水着を結び、見られてはいないようだったので落ち着く。しかし、娘のボディーガードナーお父さんはしっかり現場を目撃していたのか、ゆっ君の背後に回りバーベキュー用のフォークをちらつかせるのだった。
ちなみに一緒に川に入った
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