第11話 可愛星輝色

 私は可愛星輝色かわぼしきいろ新谷高等学校にったにこうとうがっこうに転校して、まだ日が浅いです。


 しかし、嬉しい事がありました。それは、に出会えたこと。最初は、特徴が似ている人と思った。けれど、心臓が弱いという話を青島あおじま君から聞き、確信に変わった。


 けれど、私の顔を見ても覚えていない。気づかない。そりゃあ、幼稚園の時だから記憶も全然無いかもしれないけど。なんか悔しい。

 だから、気づいてくれるまで本当は知っているけど黙ったまま友達として接した。


「けど、なんで! どうしって! 

 気づいてくれないんじゃーー!」

「待って可愛星かわぼしさん! それ以上は死んじゃう! ノックダウンしてるのに顔ばっか殴るな!」

「あ、そうだった。ボクシングの練習だった」


 ボクシング部に入った私は、自分用のグローブを用意し、本格的にこの夏休みを使い部員たちと学校で練習をしていた。


「練習すればするほどあんた上手くなってるね。根性もあるし、飲み込みも早い。もっと早くボクシングやってりゃ有名だったかもね」

「いえそんな……」


 実はいまだに気づいてくれないゆっ君にストレスを感じて、その解消の為にボクシング部に入ったとはとてもじゃないが先輩に言えなかった。


「しかし、ちみっこくて可愛いなりなのにどっからその力がくるんだ?」

「過去の怒り……。ですかね?」

「お、おお〜」


 この怒りもあながち嘘じゃない。あんな事を言っておいて、何も言わずに勝手に引っ越しちゃうんだもん。





 ☆☆☆






〈幼稚園〉


「おいかけっこ楽しいね!」

「うん!」

「あ、またあの子とちゅうから来たよ?

 おねぼうさんかな?」

「だれだれ〜?」

「ほら、いりぐちのあの子」


 この時、初めて見かけたのがゆっ君だった。

 初めの印象は、よく途中から来たり帰ったりする子ということと、つまらなそうに遊んでいる私達を見ているという印象だった。


 ある時、ゆっ君が倒れて入院した。きっかけは、悪ふざけして風船で遊んでいた男子が風船をわった事による心臓の負荷が原因だった。


 この時、初めて寝坊とかじゃなく、心臓が弱いことが原因だと知った。


 もっと彼のことを知りたいと思ったので、先生に様子を聞いた。生まれた頃から心臓が弱く、皆と遊びたくても遊べない。だから、友達が作りにくいのと話してくれた。


 退院した彼は、目に生気を宿していた。あんな顔もするのだと分かった時には、夜色優心やしきゆうしんという人物を、存在を目で追っていたと思う。


 その当の本人は、ある日先生と何かを話しているようだったので、近づいて声をかけてみた。


「なにしてるの?」

「だれきみ?」

「わたしかわぼ、」


 この時が、初めて会話をした所だけど、先生が職員室から戻ってきて自己紹介を遮られる。


「はい、これが色のある名前の子よ優心ゆうしん君」

「ありがとうございます!」


 私と話している最中に、先生に見せるその目はまた生き生きしていた。その目が先生に向けているものだと思った私は、取られたくない一心だった。


「せんせいきらい!」

「え! 私何か嫌なことしたかしら?ごめんね」

「もういい!」


 ムキになった私は、側から逃げた。でも、心配してくれたのか後でゆっ君が私の元にやってきたのだ。


「なんでそんなにおこってるの?」

「しらない!」

「よしよし」

「なにするの!」

「だって泣いてるし」


 ゆっ君は優しかった。初めて会ったばかりなのに、怒っている理由も分からないのに、それでも側にいて頭をなでてくれた。


 これが私の初恋だったんだと気づくのは、この後のことだろう。


「あとでいっしょにあやまりにいこ?」

「なんでいっしょに?」

「いっしょならこわくないよ?」

「うん!」

「ねえ、きみなまえは? ぼくは、やしきゆうしん」

「じゃあ、ゆっ君だね! わたしは、きいろ! かわぼしきいろ!」

「きいろ? きみが、きいろ! 見つけた。やった! ゴホッゴホッ!」

「だ、だいじょうぶ?」


 なんで喜んでくれたのか今だに分からない。でも、私だけを見てくれたあの時に初めて好きだと感じたのだった。





















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