第8話 男子サッカーの試合(後編)

「……き……」


 なんだ? 誰の声だ? 僕に語りかけてくる。


「……夜色やしき!」


 僕の名前を呼んでる?


!」

「はっ!」


 目が覚めると、僕の目の前には紅井あかいさんの姿があった。今の状態を確認すると、どうやら僕は日陰のある木製のベンチがある所に移され、眠っていたらしい。


「生きてるよね? なかなか目を覚まさないから心配したんだから!」

「試合! どうなっ」

「たく、自分の心配しなさいよ。勝ったって。だから、もう少し横になってなさい。メーター見たら50前後だったから、疲れて気を失っただけって気づいて、の呼吸確認してここまで運んだの」

「あれ、そんな言い方してたっけ? 僕の名前」

「! い、いいでしょそれは!」

「でも、なんか懐かしいような気がする。何でだろうな」

「さぁ、気のせいじゃなかろうかな〜」

「なんでそんな変な口調?」

「もう! 知らない!」


 何か変な事を言ってしまったのか、紅井あかいさんは勝手に怒ってから、僕の額に熱冷まし代わりに置いていたハンカチをまた濡らしてくると言ってそばを離れた。


 後から、可愛星かわぼしさんもやって来て「無理して心配させたら応援の意味ないでしょ!」と怒られた。この2人に会ってから、心配させたり怒られることが増えた気がする。


 しかし、以前の僕とは違い、悪くないと不思議にも思えた。


 具合が良くなった後に僕たちは、試合を終えたりょうに会いにいった。すると、倒れた僕を見てたのか「無理するなって言ったろうが! この2人がいなかったら試合に集中できんかったわ!」と怒られてから僕たちは帰ったのだった。





 ☆☆☆



 



 次の日曜日の朝、薬を飲んだ後で僕は運動不足にならないようにやっている散歩をしていた。


 夏の朝は昼間よりも涼しく、照らす太陽と涼しい風によりなびく草の音が心安らぐ。背伸びをしたり、メーターを見ながら歩くペースを決めていく。いつも歩いている道の先には、公園があるので、そこから引き返して家に帰るようにしている。


「よし、公園まで来たな。後はいつもどおり、?」


 しかし、帰ろうとすると人のことは言えないがこんな朝早くに公園で1人、絵を描いている人がいた。ロングヘアーだけど、寝癖か髪がワカメみたいにうねっている。服は朝早いので少し肌寒く感じるのか、上に紫色の上着を着ていて、下は青の半ズボンを着ていた。


 真剣に描いているようだったので、邪魔せずに僕はまたメーターを確認しながら、そのままゆっくりと家の方へ帰っていくのだった。





 ☆☆☆





〈公園〉


「ななな、なんなんだよ。私が何したってんだよ。あの人どうせこんな朝早くにきて何やってんの気持ち悪いとか不審者かな? とか思ったんだろうな。やっと行った? 行った? 行ったよね? そうに違いない。そうじゃないと困る。深呼吸深呼吸。これならどう? いつも馬鹿にしてくる美術部の先輩や同級生を見返せるの? 無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理! 助けてよ。もう私にはゆっ君だけなの! ゆっ君に会いたい。会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい私を元気づけて。慰めて。嘘つき! 一緒に居てあげるからって言ったのに! なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!」


 私は描くしか無かった。描くことしかできなかった。目のクマが酷くても、描かなければまた馬鹿にされる。守ってほしかった。そばにいてほしかった。もう無理だ。何もかも上手くいかない。ゆっ君! そう、ゆっ君さえいてくれればいい! ゆっ君ゆっ君ゆっ君ゆっ君ゆっ君ゆっ君ゆっ君ゆっ君ゆっ君ゆっ君ゆっ君ゆっ君ゆっ君ゆっ君ゆっ君ゆっ君ゆっ君!


 だって彼は私の心の支え。私の王子。この傷ついた心を癒やしてくれる存在。……。


























































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