第7話 男子サッカーの試合

「本当に、あの時はごめんね。嫌がってるのに無理に聞いちゃって」

「いえ、私こそ重い空気にしてしまってごめんなさい」


 僕は今日、可愛星かわぼしさんに学校の教室で、部活を紹介していた時のことを謝っていた。しかし、彼女も話しかけづらい空気を出していた事を気にしていたようだった。


「おはよう、輝色きいろ

「あーちゃんもおはよう」

「……夜色やしきもおはよう」


 紅井あかいさんも登校し、挨拶を交わす。しかし、何故か僕に対しての挨拶だけ1回間を置いてから言われたような気がする。


「あ、そうだ。皆さ、今度男子サッカー部の試合あるから一緒に応援しに行かない?」


 僕は紅井あかいさんの挨拶のことはひとまず置き、りょうがでるサッカーの試合を皆で応援しに行かないかと誘う。


「あ〜、行く行く」

「私も行きます。頑張って応援しましょう!」


 2人とも来てくれるようなので、待ち合わせ場所を決めて土曜日に皆で集まって行くことになった。





 ☆☆☆






 男子サッカー部の試合当日、僕はちょっと早めに待ち合わせ場所に到着していた。


「おはようございます!」

「おは……よう……」


 休日なので僕も私服できているが、待ち合わせ場所に来た可愛星かわぼしさんの私服は僕には眩しすぎた。上が薄い黄色で下が白のワンピース。本人が元々可愛いせいか、とてもよく似合っている。


「可愛い……」

「え? あの、その……」

「へ? 俺なんか言った!?」


 無意識に恥ずかしいことを口走った気がする。彼女の顔も恥ずかしいのか顔を赤らめていた。


 変に気まずい空気になった待ちあわせ場所に、最後の紅井あかいさんがやってきた。彼女の服装はボーイッシュで、ワンポイントの半袖の上に半袖で黒色の上着を着ている。


「うん? どうしたの?」

「いや、服装格好いいなと思って。やっぱそういうの似合うな」

「あ、ありがとう」


 こういうことを言われるのは慣れてないのか、こちらも顔を少し赤くし照れていた。


 私服姿を拝んだ所で、全員来たことを確認し、試合が行われるサッカー場へと向かう。


「同じサッカー部としては、どうなんだ? 相手チームのこと知ってるんだろ?」

「そうだね、あたしたちの学校と同じくらいのレベルじゃないかな?もっとも元々強いんだけどねあたしたちの学校の男子サッカー部。だから、レベルの高い試合見れると思うよ」

「へ〜、そうだったのか」

「へ〜って、夜色やしきりょうの試合よく見てんじゃないの?」


 紅井あかいさんの言うとおり、よくりょうの試合を見に行っている。しかし、サッカーの事はりょうが教えてくれたルールぐらいしか知らない。なので、どこのチームが強いとか分からないのだ。


「簡単なサッカーのルールぐらいしか知らないんだよ」

「ま、興味のない人はそんなもんか」


 紅井あかいさんに説明すると、どうやら納得してくれたようだった。


 ちなみにサッカーは、11人で行われる。それぞれのポジションの役割を果たしながら、相手のゴールにボールを入れれば点数が入る。この点数が相手チームより多ければ勝ちというものだ。


「ここだな」

「へ〜結構広いんですね。サッカー場って」

「そういえば、サッカーは見るのが初めてなんだっけ?」

「はい。テレビもあんま見ないので、これが初めてなんです。ルールはさっき夜色やしきさんが教えてくれたので助かりました」


 どうやら可愛星かわぼしさんは、初めてサッカーを見るらしい。サッカーの練習は見てるからだいたい分かるかなと思う。


 もうそろそろ、試合が始まる。戦いの火蓋はホイッスルの音で落とされた。


「頑張れーー!」


「あ〜、トラップミス〜」


「頑張ってーー!」


 部活動の練習や試合を見ていると、いつも思うんだ。僕は、なんであんなに必死になれる、楽しそうなものさえできない体なんだろうって……。


「頑張ッゴホッゴホッ!」


 応援すると心臓に負担がかかる。辛い、苦しい。


 でも、毎回こうも思うんだよ。親友が頑張っているのなら、嫉妬なんかせずちゃんと自分の口で応援しろよって。


「頑張っ……はぁはぁ」

「大丈夫? この暑さだし、無理しないほうが。水分取りなよ」

「あ、ありがとう」


 紅井あかいさんが僕の異変に気づきそばへ寄る。僕は呼吸を整えながら、彼女に心配させないよう伝える。


「もう大丈夫。呼吸を整えたから」

「まだ顔色悪いし、凄い汗……。なんでそこまで……。心臓に負担かかるんじゃ」

「僕は生まれたときから心臓が弱くて、運動ができない体だった。だから、楽しそうに部活してるが羨ましいんだ! 妬ましいんだ! けどそれ以上にっ、友達を応援したい気持ちが強いんだ……よ」

「ちょっと、夜色やしき!」


 僕はそのまま心の中をぶちまけるだけぶちまいた後、気を失うのだった。


























































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