第6話 部活

 平日の朝ホームルーム前の時間。可愛星かわぼしさんと紅井あかいさんが会話をしていて、その中で1つの話題が出ていた。


「もうそろそろ決めなきゃいけないんでしょ? 部活」

「うん。先生に書類出さなきゃいけないから。でも、沢山あって迷ってるの」


 その話を聞き僕は会話に入り、1つ提案をする。


「じゃあさまた放課後、僕と一緒に部活動見学する?」

「え、いいんですか?」

「うん。可愛星かわぼしさんがよければだけど」


 今日もりょう紅井あかいさんは部活動で……。


「おいゆう、傘持ってきたか?」

「え? 晴れじゃないの?」

「何言ってんだ? 途中から雨が降るって天気予報で言ってただろ? まさか、見てなかったのか。もう今ちょっと窓から覗いたけど降ってきてるぞ」

「まじか。てことはさ、部活休みか? サッカー部」

「なわけ無いだろ。体育館使って練習」


 もしかしたら一緒に部活周りに来てくれるかもと思ったが、部活動は雨が降るくらいじゃやめないらしい。今思えば、大会の日が近いからですよねとなる。


「え? 男子が体育館使うんだったらあたし休みかも。後で部活の部長に聞かなきゃ」

「あ、じゃあもし……」

「分かってるって、休みになったら可愛星かわぼしさんの部活動探し手伝うよ」

「ありがとう! 一対一じゃ、どうしてもね」

夜色やしきって初心な所あったんだね。1年の時は、落ち着いてるっていう印象なのにさ」

「人のこと言えないんじゃ……」

「何か言った?」

「いえ、なんでもないです」


 こうして話し合った後に放課後、体育館に3人で待ちあわせをするのだった。




 ☆☆☆





 放課後になり、僕と可愛星かわぼしさんは体育館で紅井あかいさんを待っていた。


「お待たせー! 部長から聞いたら休みにするって言われたから大丈夫!」

「良かった〜」


 もしかしたら、また続かない会話をしながら案内するのかなと気が気じゃなかったので、つい本人が来てくれたので小声で本音を呟いてしまった。


「来てくれてよかった〜! 2人も協力してくれる人がいたら、きっと私のやってみたい部活絶対見つかる!」

「そこまで言われたら嬉しくなるな。ていうか、珍しく敬語じゃなくなってるね」


珍しく砕けた口調になる彼女。しかし、失礼だったかもしれないと謝る。


「あ、まだ会ってそんなに経ってないのでつい……。駄目でしたか?」

「いや、あたしはどっちかというとそっちの軽いほうが好き。堅苦しい言い方だと、あたしもついつい畏まっちゃうことあるからさ、だからタメ口でいいよ。それに、呼び方も名前の方にしよ? 呼びにくかったらあだ名でもいいから」

「あ、じゃあ私も名前で呼んでぐだ、じゃ無かった! 呼んで!」

「じゃあ〜、あたしは輝色きいろって呼ぶね」

「それじゃあ、私はあかちゃんって呼んでいい?」

「駄目、なんか違うの想像しちゃうから」

「じゃあ〜、あーちゃん!」

「それならいいよ。なんか、親しみやすくなって嬉しい」

「私も! とても嬉しいよ!」


 そばにいる僕が蚊帳かやの外になるほどに、可愛星かわぼしさんと紅井あかいさんは仲良くなった。改めて、誘って良かったと思うのだった。


「僕のこと忘れてないよね?」


 仲の良さが深まった2人に言葉をかけると苦笑いしていたので、図星と気づき少し傷ついた。少しだけだからね! ほんとだよ?


「そういえば、なんで体育館を集合場所にしたの? 紅井あかいさんだよね。ここ指定したの」

「あ〜、それはね、この体育館で練習してるサッカー部の練習でも見せようと思って。ほら、あたしも女子サッカー部だし」

「て、ちゃっかり勧誘だね!」

「バレたか」


 どうやら紅井あかいさんも部活動の女子サッカー部員としても、サッカーの良さを知ってもらった上で入部してほしいという気持ちから勧誘ついでに見てほしかったそうだ。


 僕たちは早速体育館の中に入り、見学するだけなので靴を脱いでそのまま男子サッカー部の練習の様子を見ることに。


「今やってる練習は、ドリブルして数カ所のポールを一周していくものだね」

「あーちゃんは、どういう効果があるか知ってるの?」

「あぁ知ってるよ。あれはスピードを落とさずに尚かつ、足元からボールを離さずに操れるよう練習しているんだ。相手チームにボールを奪われないようにね」


 僕もりょうに同じようなことを聞いたことがあるな〜と思い出しながら聞いた。練習をある程度見た後は、可愛星かわぼしさんの気になっている部活動を見にいった。


可愛星かわぼしさんの名字って星が付いてるから天文部とか似合いそうだよね。この学校にも一応あるけど見る?」

「いえ、絶対見ません」


 質問した直後、可愛星かわぼしさんの顔色が変わり即答だった。


「なんで? 見るだけなら……」

「……」


 悲しい事があったような顔をしながら、彼女は言いたくないと言いたいかのように沈黙を続けた。


「はい、そこまで。言いたくない事ぐらい、誰しもあるでしょ?」

「そうだな」


 紅井あかいさんに注意され、どうやら聞いてはいけない事を聞いてしまったと気づいた僕は、可愛星かわぼしさんの方を向いて謝る。


「いえ、変な態度をとってしまってすみません」


 気まずい空気は流れたが、改めて部活選びを手伝い案内は無事に終わった。


 最終的に可愛星かわぼしさんが入部したのは、まさかのボクシング部だった。


 というのもあのベンチで休んでいた時に、僕に拳を放った彼女をたまたまボクシング部の1人が見ていたらしい。なので勧誘を見学したその次の日に受け、試合をしているのを見学した後に本人は入部することを決心したのだとか。







 





























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