第2話 昼食

「ねぇ可愛星かわぼしさん、どっから転校してきたの?」


「趣味とか好きな食べ物とかある?」


「ねぇねぇ、何カップ?」


「こら男子! 女の子に何聞いてんの!」


 今は学校の昼休み。転校してきたばかりの可愛星輝色かわぼしきいろさんのことを知りたいというクラスメイトの人たちが、本人の席に集まり質問攻めしている。


「あの転入生、あっという間に人気だな」

「あぁ、でも初日からあれじゃ疲れるんじゃ……」


 僕の隣の席はりょうなので、いつも一緒に話しながら昼食を食べている。ちなみに僕の席は教卓を正面とすると一番左の後ろから二番目の位置。授業中うとうとしてしまう事があるので、この席はありがたい。


 そして、今日転校してきた可愛星かわぼしさんは、一番右の前から二番目の席にいる。よく見ると、集まっている人のせいで一番目の席の人や扉から入ろうとしている人の邪魔になっているのが分かる。


 それに、可愛星かわぼしさんも質問攻めで困っている顔をしている。見かねた僕は、自分の席から立ち上がる。


りょうちょっと手伝ってくれ」

「ナンパか?」

「……」

「冗談だって。優しいよな本当にお前は」


 僕達は、集まっている人たちの所まで行き、呼びかける。


「お~い、他の人や可愛星かわぼしさんも質問攻めで困っているし、他の人の迷惑にもなってるぞ~。もうちょい配慮してやれ。それに、本人転校してきたばっかだろ? 気になるのは分かるけど、その辺にしてやれ」


 一部の人はりょうの言葉を聞いたあとに辺りを見渡し、今の現状を見て納得し離れる。しかし、言い分に反抗する者がいた。


「なんで邪魔者扱いなの? 別にお話してるだけじゃん!」

「話すことは別にいいんだよ。けどね……」

「ならいいじゃん」

「一番前の人が困ってたり、出入り口塞いでるのがいけないんだって。それに、可愛星かわぼしさん転校してきたばっかなのに質問攻めで疲れ切ってるよ?」

「え、そうなの?」


 可愛星かわぼしさんの方を向く突っかかってきた女子。本人は苦笑いしながら「ごめんね。ちょっと疲れたかな」と気を遣いながら返答する。


「ご、ごめんなさい。可愛星かわぼしさん……」

「ううん、自分の気持ち伝えなかったこっちも悪いから。これからよろしくね」

「うん!」


 分かってくれたならいいかとその場から離れようとする。しかし、離れようとする僕たちを見た可愛星かわぼしさんと口論になったさっきの女子が引き止める。


「ちょっと待って!」


 僕の腕を掴み、先に引き止めたのは口論になった女子だった。


「さ、さっき……その……」

「何?」

「さっきはそのごめんなさい……。つい話すのが楽しくて、周り見えてなかったの」

「いいよ。分かってくれたなら」

「あ、ありがとう。よかったらその、一緒にご飯食べない? べっ別に無理にとは言わないけど……」


 僕とりょうを食事に誘う彼女に返事をしようとすると、可愛星かわぼしさんも会話に入ってきた。


「あの、先程はありがとうございました。もしよろしければ、私もご一緒いいですか?」


 断る理由もない。僕達はお誘いに乗っかり、一緒に食べることにした。


「そういえば、自己紹介がまだだったね。僕は、夜色優心やしきゆうしん。よろしくね」

「俺は、青島涼あおじまりょう


 先に僕たちから自己紹介した。今思えば、名前すら言ってなかったのに違和感なく会話していたので、心の中で笑ってしまいそうになる。


「改めて私は、可愛星輝色かわぼしきいろといいます。よろしくお願いします」

「私は、紅井茜あかいあかね。さっきは本当に、皆ごめんなさい」


 お互いに自己紹介したところで、一緒に昼食を取ることにした。可愛星かわぼしさんは大人しめに見える。笑顔が可愛く、髪留めもよく似合っている。紅井あかいさんは、人と話すことが好きらしく友達も多いらしい。けど、たまに強気な性格のせいか、言葉がきつかったりする時があるので自分でも反省しているとか。


 話してみれば、2人共いい人そうではあるのでこれからも仲良くしていきたい。そう思った。


 そういえば、名前……星って夢と関係? まさかね。
















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