5つの星に願いを

歩く屍

第1話 夢と転校生

『どんなねがいごとするの?』


『わたしは、……とずっといっしょにいたい!』


『きれいだね〜』


『手つないで〜』


『星っておいしいかな?』


『ぼくのねがいは……』


 夢の途中で僕は目が覚めた。窓から差し込む日の光が、『おはよう。目を覚まして』と言わんばかりに、僕の目を覚まさせる。



 あの夢はなんだったんだろうか。とても懐かしい記憶? 分からない。あれは確かに僕のような……それに、あの女の子いったい誰なんだろ。


 夢にでてきた女の子たちの存在が忘れられない。どんな服装とか髪型とかは、はっきりとは分からない。でも、どこかの星空を僕と一緒に眺めていた事だけは分かった。


「そうだ、今日の分の薬」


 小さいときから心臓が弱く、毎日朝昼晩に1錠ずつ薬を飲んで生活している。医者からは過度な運動や血圧が上がるようなことなどをしてはいけないと強く言われている。


 おかげで小学生の時は特に症状が酷かったせいか、友達と外で遊ぶことを禁じられ、大人しく部屋でできるゲームも長時間することを禁じられていた。


 けれど、体作りが大事な時期。身体能力の衰え防止の為に軽めの散歩や家事を手伝ったりして、生活に支障がない程度の筋力作りを欠かさず行っている。


 そのおかげなのか、高校生である今は普通に歩いて登下校をしている。心臓に負荷をかけなければ、他の人と変わらない生活を送ることができた。


「じゃあ母さん、学校行ってくるね」

「行ってらっしゃい。ちゃんと薬飲むのよ? いつも本当は心配でついていきたいくらいなんだから」

「もう高校生だよ? 自分の体調くらい管理できるよ。大丈夫」


 ここまで育ててくれた両親。特に母さんは、過去に何回か倒れ入院する僕の姿を見てからというもの心配性になっている。そんな母親に見送られた後、学校へと向かった。学校は徒歩で行ける距離にある新谷高等学校にったにこうとうがっこうといい、文武両道を目標にしている学校。だからか、部活動や勉強を頑張る人が多い。部活動には文化部もあるらしいが、定期的に病院に行かなければならない為、部活はやらない事にしたのだ。


「よっ、おはよう」

りょう、おはよう」


 先に挨拶してくれたのは青島涼あおじまりょう。僕が小学生の時からずっと一緒にいてくれた友達。スポーツ万能で女子からも人気がある。おまけに容姿も格好いいのだ。


「サッカー部で活躍してるりょうさん。今度の試合の意気込みは?」

「まぁ、ぼちぼち頑張るよ」


 このようにりょうはなんと言うか、う〜ん力を誇示しない。というか、野心に欠ける所がある。まぁそこも、ある意味いい所でもあるんだけどね。


「俺のことはいいよ。それより、ちゃんと薬飲んできたか? あと、誕生日プレゼントにやったあれもつけてるか?」

「ああ、心配してくれてありがとう。薬飲むのはもう日課になってるし朝は飲んだよ。それに、この時計型心音測定器メーターも腕に」

「それの使い方もう分かったか?」

「うん。心音の最大数値が100。基本的には正常な数値が50前後だから、その数値になってれば大丈夫っていうのは分かった」

「何かあれば迷わず誰かに頼れよ?」

「助かるよ。ありがとう」

「心臓が弱いこと知ってるのは先生やクラスメイト。ゆうの親御さんと俺ぐらいだからな。ま、その前に友達だしな」

「毎回感謝しているよ」


 小学生の時はここまで一緒にいられるとは思わなかったけど、仲がいいのはりょうぐらいだと思う。友達になってくれて感謝しかない。


 学校に着き教室に入る。しばらくすると、いつものようにホームルームが始まった。


「皆いるな、ホームルームの前に転入生を紹介する。さ、入って」


 男子は『可愛い女子だといいな〜』、女子は『イケメンな男子がいい〜』と小さな声で話す。


「失礼します」


 転入生のその子はとても可愛く、身長は140センチぐらいで髪型はツインテール。黄色の星がついた髪留めで前髪を留めていて、とても良く似合っている。


「えっと、可愛星輝色かわぼしきいろといいまちゅ! あ……」


 どうやら力みすぎて噛んでしまったようだ。ちなみに、この時僕の心音メーターが10上がって危険だったことは、自身の心だけに秘めておくことにしたのだった。


 こんなことで心拍数が上がる自分だが、この出会いから覚えていない過去の記憶に徐々に触れていくことになるとはまだ予想すらしていなかった。





























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