第69話 今後の対応 (side グラン)

ガルブの森で起きた一連の報告を聞き終えたが、言葉が出ん。


森へ着いて直ぐに銀狼フェンリル幼体ようたい遭遇そうぐう、続いて銀狼おや。まあここまでなら流れとしてもいたし方ないと言えるだろうが…ドラゴンにまでいたるのは流石さすがに無いだろう。

して、そのドラゴンが知性がある上位種であるどころかかつての竜王だとは他所よそ冒険者れんちゅうなら鼻で笑い飛ばすところだ。


さらに、こいつらが遭遇そうぐうした出来事の全てが今回の異常に関連するなど、通常であればあり得ない、想像のななめ上どころかはる彼方かなたへ飛んでいったかのような大事おおごと連鎖れんさ


「よくもまあ無事に戻れたもんだ。」


そう口にしながら、瞑目めいもくしていた目をひらいて目の前の二人を見た。


「俺も子銀狼こフェンリルと関わった時点で最悪の覚悟かくごはしたがな。」

「ヴェルデの強運の真価を見た。そんな感じです。」


二人は苦笑を浮かべながら言った。


「…あぁ。そうか。」


アルミーの言った事に思いいたり、俺まで苦笑を浮かべた。

本当にヴェルデの大物おおものりのたちは、相も変わらず限度ってもんを知らんらしい。


ヴェルデにドラゴンの血が流れてるだろうってのはカンセルの親爺おやじと話した事はあったが、まさか覚醒かくせいする程のモンだったとはな。


大昔の魔族侵攻しんこう以降、一部の血族以外の生き残った者達は種族を問わずに交わり,今となっては種族など、個人の特性を語る程度にしか意味はない。


だがまれ後天的こうてんてきに、流れる血族の特性が変わったり、特性が発現はつげんすることがある。

それが『血の覚醒かくせい』というものだ。

覚醒かくせいは個人差が大きく、人格が変わったり、時には命を落とすこともある。


ヴェルデが眠りから目覚めた時、もし人格が変わっていたとしても、それでも生きていてくれるならそれでいい。

もしおかしな暴走をするようであれば、しっかり矯正きょうせいしてやればいい話だからな。


そう結論けつろんけて、組織のかしらとしての思考へ切り替える。


森の奥にドラゴンが住んでいるとは言っても、たがいに不干渉ふかんしょうを望んでいるのならこちらとしてもいなは無い。

そして銀狼フェンリルが住み着くにあたっても敵対しなければ助力として森の監視をしてくれるという。


こいつらは今回の原因を探るどころか、事態を収めて最上の状況となる結果を持ち帰ってくれた。


竜王ドラゴンに関しては口外せずここだけの話にする。そして銀狼フェンリルについては手を出さないよう通達する。従わず手を出すやから冒険者ギルド資格を剥奪はくだつ、口外できないよう誓文せいもんきざむ。

ヴェルデについては気に入られて子守り中ということにするか…とまあ、こんなもんでいいか?」


今後の対応を上げて確認のため二人を見ると二人は黙って頷いた。

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