第68話 報告 (side ジェミオ)

「良く戻った!!」


報告におとずれた部屋にギルド長ギルマス歓喜かんきの声がひびいた。

が、部屋に入るはずの一人がけていることに気付くと途端とたんきびしい表情に変わった。


「…えず座れ。」


俺とアルミーはうなずくと、ギルド長ギルマスの対面へと腰を下ろした。


「………、報告を頼む。」


ギルド長ギルマスは少しの間瞑目めいもくすると、意を決したように言った。


「報告したいことはいくつかあるが、その前に会話がれないよう結界を頼みたい。」

「…分かった。『遮音フォモノシ』」


俺の要望ようぼうギルド長ギルマスはすぐさま結界を張ってくれた。これで安心して話せる。まずはうれいの一つをらしておこうか。


「始めに、ヴェルデは大丈夫だ。生きてる。」

「っ、本当か!?」


俺達が二人で戻ったことで、愛弟子ヴェルデの最悪の状況を覚悟していただろうギルド長ギルマスは身を乗り出す。


「ええ、本当です。現状、命の危険はほぼ無いかと。」

「そうか…。それじゃあヴェルデあいつが戻らない理由も含めて話してくれ。」


アルミーの言葉に安堵あんどの表情を浮かべたギルド長ギルマスは、一息くと落ち着いた様子でうながした。


「異変の原因は、銀狼フェンリルが森に住み着いたからだった。」

「フィオから報告は受けていたが、本当だったか。」


報告にギルド長ギルマス苦々にがにがしげな表情を浮かべた。

そこへ俺は続きを口にする。


「…と言うのが表向きの報告だ。」

「表向き?…どういう事だ。」


俺の言葉を聞いたギルド長ギルマスいぶかしげにいてくる。


銀狼フェンリルが森に住み着いた事はうそじゃない。だが、原因はそれだけじゃなかった。」

「森の魔力の件、ヴェルデが報告していたはずです。」

「ああ、魔力が濃い気がするという話しもあって、お前達を向かわせたんだからな。」


何が言いたいんだという表情で言うギルド長ギルマスに俺は原因となった存在を口にした。


「森にひろがった魔力はドラゴン魔力ものだった。」

「な、ドラゴンだと!? 間違いないのか!?」


ドラゴンと聞いてギルド長ギルマスの顔色が変わる。


「はい。実際にそのドラゴンにお会いして、直接お聞きしました。」

「っ、あ、会った!? 直接聞いた!?」


アルミーの肯定こうていした内容にさらに驚くギルド長ギルマス

そうだよな、こんな反応になるよな普通は。

このまま全部説明して、ギルド長は大丈夫か?

そう思いながらアルミーの様子をうかがうと、同じように苦笑していた。


驚愕きょうがくするギルド長ギルマスが落ち着くのを待って、俺とアルミーは二日前に森に着いてからの出来事を、順を追って話し始めた。


子銀狼こフェンリルとの遭遇そうぐうから銀狼フェンリルとの邂逅かいこう、ヴェルデの血の覚醒かくせいに、子銀狼こフェンリルとの従魔契約、竜王トニトルスへの請願せいがんとヴェルデの血筋ちすじのこと、現在のヴェルデの状況と、今後についての対話の内容。


話が進むにつれてギルド長ギルマスは表情を無くし、後半にいたっては瞑目めいもくして聞いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る