第65話  目覚めの条件

俺はドラゴン把握はあくしている状況をくわしく聞いた。


森の異常については事態は終息し、話し合いも済んでおり、当初の問題の解決と今後の事について、二人が町へ報告に戻っている事。


ゼーンは目を覚まし一度住処すみかへ戻った後は、親父さんと狩りや転移の練習をして過ごし、休む時は俺のかたわらにいる事。


俺自身については身体の治癒ちゆは済んでいるが、魔力が完全に馴染なじむまでもう二日ほどかる事。


そして俺自身についてはもう一つ。


「え、俺が倒れてから二日しか経ってない? いや、流石さすが冗談じょうだんだろ。俺の感覚にずれがあったとしても十日以上は確実に過ぎてるはず。」


聞かされた言葉が信じられず、冗談じょうだんかと言葉を返すと、ドラゴン否定ひていした。


冗談じょうだんではない。私が鍛練たんれんに使った魔法は時も引き伸ばす。まあ現実の時を引き伸ばす訳ではない、感覚だけのものだがな。よくあるだろう、長い夢を見たつもりが実際は然程さほどの時がっていなかったというあれだ。」


自分の感覚が夢と同じだと言われれば、実際精神こころ空間なかにいると認識にんしきできているのだから間違いではないのだろう。


先程は十日以上とひかえめに言ったが、正直なところ精神ここで気が付いてからすで一月ひとつき以上はった感覚でいる。

そしてだからこそあせっていたんだ。

だが、たせている事に急いでも、あせる必要は無くなった。


「状況は理解した。で、俺の身体からだが起きられるようになるまで後二日ほどかるって事だけど…さっき言ったよな『魔力を完全に制御できるまでだ。』って。」


俺がそう言うと、ドラゴンは目をすがめた。


「あれだけ感情をみだしながらも、聞いておったのか…。お前が魔力を完全に制御出来ねば、感情のたかぶりに魔力ちからあふれさせる。そうなれば今度はお前が大暴走スタンピードの引き金となりかねん。」


言われた内容に衝撃しょうげきを受ける。


「…俺が、…大暴走スタンピードを…起こす?」

「そうだ。お前が目覚めたのは竜の血。当然魔力ちからも竜の気配をまとう。そしてお前の血はい。たとえそれが私の気配よりもうすくとも、竜の気配であることに変わりはない。そして薄い気配がかてと判断される事もある。そうなればお前の周囲を危険にさらす。ゆえにお前が制御を完全にするまで、私がお前を精神このの世界へく。」


戸惑とまどう俺にドラゴンは現実を突きつける。

魔力を完全に制御できなければ、一生現実で目覚めることは出来ない。

だが無理に目覚めて災厄さいやくを呼ぶくらいなら、眠ったままでいた方がいい。

でも俺は…。


わかった。俺に制御の仕方を教えて欲しい。頼みます。」


俺はドラゴンへ頭を下げた。

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