第61話 家族 (side ジェミオ)

“うん、助けるのなんて当たり前だよ。だってヴェルデが大好きだからね。オレに「ゼーン」って名前もくれたんだ。相棒で家族で弟だって。”


感謝を告げると、子銀狼こフェンリルの嬉しそうな返事が返ってきた。たった二日の間、それもこちらが生死に気をんでいる間に、あの義弟おとうと子銀狼こフェンリル随分すいぶんと打ち解けていたらしい。


「そうか。俺はヴェルデの兄貴分あにきぶんでジェミオって言うんだ。よろしくな。」

“ヴェルデの? うんオレ、ゼーン。アニキブンって良くわかんないけど、家族ってこと?”

「そうだよ。俺はアルミー。俺もヴェルデの兄貴分あにきぶん、血の繋がりのない兄だと思ってくれたら良いよ。」


子銀狼こフェンリルに改めて名乗ると、言葉が難しかったようで若干じゃっかん困惑こんわくしたようだったが、すかさずアルミーが補足してくれた。


“そっか、オレと一緒だ。じゃあ、ジェミオとアルミーもオレもヴェルデの家族だね。”

「ああ、そうだ。それにヴェルデには他にも町に沢山たくさんの家族がいるんだ。その中にはヴェルデも知らない家族やつもいるけどな。」


アルミーの説明に納得した子銀狼こフェンリルに、ちょっとした遊び心で、町のみんなのことも家族だと言ってみた。


“ヴェルデも知らない家族? 難しいけどなんか面白いね。でもそれならヴェルデが大好きな人族が沢山いるってことだよね。ヴェルデもみんなのこと大事だって。いつも支えて助けてくれるみんなのこと守りたいって。だから生きてみんなのところに戻るんだって頑張ってたよ。”


軽い気持ちで言った言葉に、予想もしていなかった答えが返ってきて俺の方が驚かされた。

この真っ直ぐさは、ヴェルデにそっくりだ。


銀狼フェンリル殿、貴殿きでん幼子おさなごはその能力ちからの高さもることながら、おどろくほど早熟そうじゅくな子だ。契約と同時に血族このものの精神に降り立ち、血族このものを支えていたらしい。”


俺達のやり取りをもくして見ていた竜王トニトルス銀狼フェンリルへ、子銀狼ゼーンめ伝える。


御方おんかたにそのようっていただけるのは大変ほこらしく。だが契約を結んだからといって、人里に向かわせるには流石さすがに早すぎる。しばらくはわれもとにて学ばせる所存しょぞん。”


我が子をめられた銀狼フェンリルは、かたい口調でそううが、揺れる尻尾が内心を如実にょじつに表していて、親近感しんきんかんを得てしまったのはしょうがないことだろう。

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