第59話 原因 (side アルミー)

朝焼けがすっかり消えた頃に転移してきた銀狼フェンリル竜王トニトルスと向かい合う。

四者の囲む中央には、ヴェルデと子銀狼こフェンリルが眠っている。


“銀狼殿、庇護者達、もうこの二人の心配はいらぬ。血族は暫くかかるだろうが、幼子は直に目覚める。故に落ち着いて話しを致そう。”


竜王トニトルスが改めてヴェルデ達が大丈夫だとい、話し合いに集中できるよう配慮してくれる。

実際、うろこが消えてからのヴェルデの様子は落ち着いており、自身の魔力に包まれおだやかに眠っている。


御方おんかたには改めて感謝を。其方そなた達にも謝罪と感謝を。”

“もう良いとっておる。貴殿きでんがそのようだと、進む話しも進まんぞ、なあ庇護者ひごしゃ達。”

「ええ。謝罪はすでに昨日いただきました。互いに大切な者が救えたことを喜べば良いかと。」


改めて謝罪を告げる銀狼フェンリルに、竜王トニトルスえてあきれた様子で話しを振ってくる。

その意をんだジェミオが謝罪このはなしは終わりだと告げる。


“…承知した”


銀狼フェンリル渋々しぶしぶといった感じで了承を答えた。

そのかたくなな様子を見ていると、最初に対面したときの尊大そんだいさはなんだったのかと思うほどだ。

だがそれもほこりを重んじるという銀狼フェンリルの受けた恩を大切にする思いと、自身への厳しさが今のような態度に繋がるのだろう。


“さて、本題に移ろうか。昨夜、庇護者達からこの場へ至るまでの話しは聞いている。して庇護者達の目的はこの森に起きた魔力異常の原因の調査だったな。”


話しの区切りがついたと見て、竜王が本来の話題を切り出す。


「はい、そうです。」

“…貴殿きでん等はおおよそ見当がついておるだろう?”


俺が肯定こうていを返すと、竜王トニトルスは再び確認を取るように訊いてきた。


「ええ、昨夜銀狼フェンリル殿の事情をうかがったことで事態が飲み込めました。おそらくは竜王トニトルス殿が結界を張られた折りに、何か手違いがあったのかと。」

「そして外界より遮断されたこの場に居られたが故に、また精霊達にとっても問題とならなかったが為に、異変を認識されておられなかった。そう考えています。」


ジェミオに続き、昨晩話した推測を口にした。


おおむねその通りだ。森の魔力異常の原因は私にある。”


聞いた竜王はそう云って、推測が事実であると告げた。


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