第43話 諦められない

温かい光に包まれた後に何が起きるのかと身構みがまえたが、俺とゼーンの体が淡く光り続けているだけで何も起こらない。


「この感じ…これってあの剣の魔力か? 転生の準備とか?」

「魔力はそうだけど。ちがうよヴェルデ。ヴェルデはまだ生きてる。あの剣が体が壊れるの、止めてくれてるんだ。」

「え、生きてる?」


呆然ぼうぜんと聞き返した俺に、ゼーンはうなずいた。

一呼吸置いて、俺はゼーンを抱き締める力をわずかばかり強めると、温かな毛に顔をうずめた。


そして、そのままつぶやように言葉をこぼした。


「俺、さっきまで体がバラバラになるんじゃないかってぐらい痛くて、苦しくて、血まで吐いたから、てっきり死んじまったのかと思ってた。そっか…生きてんのか…」


俺がそうこぼすと、ゼーンが身動みじろぎをした。柔らかな温もりから顔を上げると、ゼーンが困ったような顔でこちらを見て言った。


「ほっとしてるヴェルデには悪いんだけど、まだ完全に助かった訳じゃないよ。」

「えっ、そうなのか?」

「本当はオレが助けたかったんだ…。でもオレの力じゃ足りなくて…。それでも一緒にいたくて、助からないとわかってて契約したんだ。」


俺と契約した時点で助からないって分かってた…そのうえで、まだ生きてるってことは…


「…じゃあ、いずれは死ぬってことか…」

「剣の魔力が失くなって、そのまま放って置かれたらそうなる。でも、ヴェルデの持ってたあの綺麗な剣がヴェルデを助けようとしてくれてるんだ。とと様もヴェルデと一緒にいた人族もこのまま諦めたりなんてしないよ! だからきっと大丈夫。」


ぽつりと言った俺の言葉にゼーンが必死ではげましてくれる。

そしてあの剣を手にした理由を思い出す。


リュネさんからの夢見じょげん親父おやじさんとの約束、ギルド長ギルマスやアルサドのはげまし、ジェミオとアルミーのおもいをもらって、死にあらがう為にこの剣を選んだんだ。


“生きる”事をあきめられない。


あの時、彼女あのひとつないでもらった“生きる”事を望まれた命。

何より、ゼーンと一緒にこれから“生きて”行くために、あきめる訳にはいかないんだ!


「ははっ。ごめんゼーン。大事なこと忘れてたよ。まだお前と契約したばっかなんだ。これから一緒に世界を見て回るためにも、あきめる訳にはいかないよなっ!!」

「ヴェルデ……うん! オレも手伝うから!」


俺が気力を取り戻したのを見たゼーンが嬉しそうに返した。









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