第44話 助け

さて、生きるその気になったはいいけど、何をしたらいいんだ?


そもそも、俺はなんで死の淵こんなとこににいるんだ?

俺はゼーンを向かい合うように下ろしていた。


「なあゼーン、俺に何が起きてるんだ? どうして死にかけてる? 原因も、その後に起きた状況もまったく理解できてないんだが。」

「オレも全部わかってる訳じゃないけど、とと様は血の目覚めに体が耐えられないんだって言ってた。それと一緒にいた人族が何度も治癒魔法をかけてた。もう片方の人族はヴェルデの体を抱えて、魔力の水をかけたりしてたよ。」


俺にかれたゼーンがコテンと首をかしげげながら答えるのを見て、真面目な話の最中さいちゅうだと言うのに無性むしょうで回したくなる。


「…ヴェルデ、聞いてる?」


俺がで回したい衝動しょうどうなか上の空うわのそらになっているところに、ゼーンがジトッとした視線を送ってきた。

俺はあわてて衝動しょうどうを振り切り、本題へと思考を戻した。


「ああ、聞いてる。俺の体に眠ってた別の種族の血が何らかの原因で目覚めた。そんでもって、俺の体は変化に耐えられなくて死にかけてる。そこにアルミーが治癒魔法を、あと魔力の水って…回復薬をジェミオがかけてくれてたってことだよな?」

「うん、そういうこと。そしてオレと契約をして少しだけ負担が減ったはずのところで、あの剣が俺達の体と精神こころを守ってくれてるんだ。」


例えるなら、綺麗きれいな水が流れる川が、急な大雨で濁流だくりゅうあふれたみたいなもの。それをどうにかしようと思ったら、き止めるか、岸に土をるか、川をひろげるかして大本おおもとの流れを変えないと無理だよな?


「ゼーン、確認させてくれ。アルミーが治癒魔法をかけてくれて、ジェミオが回復薬を使っても状況は変わらなかったんだよな?」

「うん。回復が間に合わないって。」


そんでもって魔法で対応しようにも、勢いが強すぎて止められないと。

ましてやそれが身体のいたる所で起きてるって、えっ…どうすんだよ!?


根本的な事として、俺の身体の器を広げて変化を受け入れるか、変化を止めないと駄目ってことか。


「俺の変化を止めることは無理なのか?」

「とと様は無理に止めると反動で死んじゃうって言ってた。」

「…そうか…。」


治癒も無理、止めるのも駄目だめとなったら、後は何とかして器を拡げて、変化を受け入れるしか助かる方法は無いってことか。


「…ごめん。オレにもっといろんな能力ちからが使えたら。もっと沢山知ってることがあれば、ヴェルデの助けになったのに。」


考え込む俺を見てゼーンがこぼす。


「何言ってんだよ。ゼーンが来てくれたからひとりじゃなくなった。ゼーンが教えてくれたから生きてるって事も、状況も理解した。それに何より…これからずっと一緒だって契約やくそくくれたじゃないか。ゼーンおまえがいてくれることが最高の助けだよ。」


俺はゼーンをわしゃわしゃとで回した。



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