第21話 子銀狼
無事、
幸いにも周囲に魔物の気配はない。
ジェミオも大丈夫と判断し、俺達に頷いた。
フィオと二人で木に向かい、俺が適度に育った実を採ると、フィオが用意した皮袋に入れていく。
十個程採ったところで
これは捕まった獲物だろう。よく見ると繭からふわふわとした白い尻尾が生えている。
普段ならこれも自然の営みと放っておくんだが、狩り主は先程斬ってしまったからな。
何となくそのままに出来なくて、その繭玉を抱えると、驚いたのか尻尾がバタバタと動いた。
問題なく生きているようだ。
「ヴェルデ、どうした? ん?白い尻尾?…
俺が遅れたことで様子を見に来たアルミーが、俺の抱えている繭玉を見て離れている二人を呼んだ。
俺は
「どうした?」
「またヴェルデが
寄ってきたジェミオにアルミーが答えると、三人が俺の手元を覗く。
そうして繭から出てきた姿を見て、てっきり
子狼のような姿に白銀の毛、青い瞳のその生き物は、話し語りに聞く
「「「………」」」
「白い狼? 珍しいな?」
いや、一人判っていない
繭から出た
ハッと我に返り見下ろすその姿は、思わず撫で回したくなる程愛らしい。
だが…これは不味い。
そこまで考えたところで、ジェミオが言った。
「行くぞ!! 急いで戻るんだ!!」
「えっ、うわっ。何だよ!?」
フィオの腕を掴んだジェミオが駆け出す。
アルミーと俺も黙って続いた。
「ちょ、ちょっと、何なんだよ!?」
無言で走り続ける俺達に、状況を
正直、答える間も惜しいがしょうがない。
「さっきのは
「え?
「焦って
「!!!」
俺とアルミーの説明に
「解ったなら、無駄口叩かず死ぬ気で走れ!!」
ジェミオの言葉に、俺達は暗い森を駆け抜けた。
◇ ◇ ◇
「「「「はぁ……はぁ……はぁ……」」」」
どうにか街道まで戻った俺達は、必死で息を整える。
馬達の方では何事も無かったようで、その場にいてくれた。
だが、俺達の只ならぬ様子に、若干緊張しているようだ。
「…っはぁ。取り敢えず、フィオは急いで町へ戻れ。俺達は予定どおり、このまま夜営場所へ向かう。」
水を飲んで落ち着いたジェミオが指示を出す。
「このまま行くって大丈夫なのか?」
フィオが不安そうに聞き返す。
「一緒に町に戻る訳には行かないだろうが。取り敢えず直ぐに離れたんだ、たぶん大丈夫だろう。今回の事態の原因かどうかはまだ分からんが、一応
「それに、
「…分かった。」
返すジェミオとアルミーの言葉にフィオは頷いた。乗ってきた馬に股がると俺の方を見た。
「ミニスとミオスの事、頼んだぞ。後、ホリーには余計なこと言うなよ!」
「お前がちゃんと帰ってきたら黙っておいてやるよ!」
俺の言葉にそう返すと、フィオは馬を走らせた。
ミニスとミオスの事は心配だが、後はフィオに任せるしかない。
孤児院にはホリーも
ギルドや町の皆も力になってくれるはずだ。
二人は絶対に大丈夫だ。
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