第20話 十字蜘蛛
馬で駆けた俺達は、半刻とたたないうちに森へ着いた。
馬を降りると、そっと首を撫でてやる。
木に繋ぐことはしない。待っている間に襲われても逃げられるようにするためだ。それに一端逃げても呼べば戻ってくるよう訓練されているので問題ない。
「ここから
馬を降りたジェミオが訊いてくる。
「普通に進んで四半刻ぐらいかな。ただ少し離れた場所に、
この糸が厄介で、目では非常に分かりにくい。微かに甘い香りがするため、周囲の匂いに注意しながら進む必要がある。
「それならアルミー、風で進行方向周辺にある糸を先に切っちまえ。そうすれば、蜘蛛本体だけの注意で済む。」
「了解。……『
アルミーは返事をするなり直ぐ様、魔法を練り上げ二つ同時に放つ。
『
魔法は発動と効果をしっかりとイメージしていないと発動しなかったり、暴発を起こす。
特に『
俺も両方使えるが、これ程早く同時には打てないな。
「それじゃあ、俺が先頭でアルミー、フィオ、ヴェルデは後方を頼むぞ。」
ジェミオの言葉に、俺達三人は頷いた。
◇ ◇ ◇
日が傾き暗くなった森の中を急ぎ進む途中、フィオが話しかけてきた。ちなみに、森に入って直ぐ、アルミーが全員に『
「ヴェル、お前よく森のどこに何があるか覚えられるな。俺、久々に来たせいもあるんだろうけど、一人で戻れる気がしないわ。」
「そうか? 森の場所によって生えてる木や薬草の違いがあるし、
フィオに俺が答えると、前を歩くアルミーが苦笑を溢した。
「
「おいフィオ、あんまり油断してると危ないぞ。」
そうジェミオが言い終える頃には、フィオを除く俺達は剣を抜いていた。
「えっ!?」
戸惑うフィオに向かって、上から黒い影が飛びかかる。その影をジェミオが切り上げた。
地に落ちた物体を確認したフィオは驚いて冷や汗を流した。
「うわっ、
「フィオ、お前は油断しすぎだ。少し前から甘い香りがしてただろう。まだ当分は
フィオはがっくりと肩を落とした。
先程から緊張感の無いやり取りのように聞こえるが、皆本心では焦っているのはその
ミニスとミオスはまだ子供だ。魔力の拒絶反応に二人の体がどれだけ耐えられるのか。
少しでも早く
「もう少し進むと、下草が低くなって開けてる場所がある。そこに
「他の
「分かった。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます