第13話 聞き取り

二階のつきあたりの部屋の扉を叩く。


「入っていいぞ。」


扉を開けると、部屋の中には二人の人物がいた。


「アルサド?」

「おう、俺にも話聞かせろ。」


ギルド長キルマスは当然として、もう一人はアルサドだった。


「とりあえずこっちに来て座れ。」


ギルド長ギルマスうながされ、対面の長椅子に腰を下ろす。


マルゴの町の冒険者をたばねるギルド長ギルドマスター

グラン・シャリオ。

元ランクAの冒険者で、弓と魔法の腕は現役の上位者ランカーでもいまだにかなわないと聞く。

俺もランクFみならいの頃に魔法を教えて貰った。

ちなみに『シャリオ』は家名かめいではなく、ギルド長ギルドマスターに与えられる称号らしい。


「ヴェルデ、昨日森の外縁そと大猪おおものを狩ったそうだな。その時の事と、森の様子を教えてくれ。」


俺はひとつうなずくと話を始めた。


「昨日は採取の依頼を受けて、いつもの採取場ばしょより、少し西おくに進んだ外縁ところってた。小型の魔物ちいさいやつは多少見かけたけど、いつもより少ない感じはしたな。」


ギルド長ギルマスは軽くうなずくと、続きをうながした。


「昼を過ぎてしばらくしてから地響じひびきを感じて、普通のボアだと思って待ち構えたら、近付ちかづ地響じひびきが予想よりも大きくなるんで少し迷った後、取りえず近くの木に上がって、突っ込んでくる大猪ボアを確認して、町に追って来られても面倒めんどうだと思って、仕留しとめることにした。」

「どうやって仕留しとめた?」


アルサドが訊いてくる。


「木の上からいつものように『ラスピ』で足留あしどめしたけど、ぐにくだかれた。で思わず声をらして居場所がばれたんで、『大気の塊アエラススフェラ』を顔にぶつけて気がれてるすきに、飛び降りて剣に魔力を通して首を刺した。仕留しとめた後、その場で血抜きだけして戻ってきた。」


話し終えるとギルド長ギルマスはアルサドを一瞥いちべつしてうなずいた。


「他に何かないか?」


改めて訊かれ、昨日の事を思い出す。


「う~ん、他にと言っても、俺の剣が折れたことぐらいか? まあ、関係ないけど。…あ、ほんの少しだけど、森とその周辺の魔力がいつもより濃かった様に思う。」

「魔力が濃かった?」

「気のせいかって程度だけど、何となくいつもより濃く感じたな。」

「そうか……」


そのままギルド長ギルマスあごに手を当て、考え込んでしまった。


「剣が折れたって、新しいはもう見つけたのか?」


代わりにと言った感じで、アルサドが訊いてくる。


「それなんだけど、親父さんの店で新しい剣を見繕みつくろってもらったけど、金が足りなくて引き出そうと思ってたんだ。」

「なんなら、今手続きしてやろうか? 幾らどのくらいだ?」

「え、ほんとに? なら助かる。全額頼みたかったから、どうやってホリーにバレないようにしようか悩んでたんだよな。」

「……」


この場で手続きをしてくれると言うので、これ幸いに全額を引き出したいと告げると、アルサドまで黙ってしまった。


あれ? 何か不味まずかったか?



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