第186話 鱗雲のことわざに祈る

鱗雲が出た後は雨風ということわざがある。

祖母に教えて貰ったそれを頭の中で繰り返し、私は共に空を見上げながら妻の手を握った。

日常の断片に縋っているのは自覚している。

空を覆っているのは雲自体が血のように赤い鱗雲。


――ああ、雨風であってほしい。

そう呟いたのは、私か妻か定かではない。

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