その4
受け取る資格がありそうな人物は、全部で六名である。
①:
人柄はいいのだが、情にもろく、いささか騙されやすい感あり。既婚。息子一名あり。
②:
真面目ではあるが神経質に過ぎるところがあり、部下の些細な失敗も見逃さず、すぐに叱り飛ばすので知られている。結婚歴はあるが妻とは離別。子供が二人あり。
③:
学歴は工業高校までしか出ていないが、職人としての腕は確か、但し頑固一徹に過ぎ、時に良く社長など上層と衝突するが、自説を絶対に曲げない。
ただ、部下の面倒見は良く、決して憎めない男。
④:
ただ、惜しむらくは人の価値判断を数字で決めたがるところがある。上に厚く下に薄い性格。取引銀行の頭取の娘と結婚。一男一女あり。
⑤:
⑥:
能力は高いのだが、無口で、あまり人と溶け込まないタイプ。本田氏の遠縁の息子。
”さて、どうしたもんかな?”
俺はファイルをめくり、写真付きのプロフィールを声に出して読みながら考え込んだ。
”箱”を受取って、いわばグループ全体の時代を担う人物をこの中から見つけろという。
一旦引き受け、しかももう着手金まで受取ってしまったわけである。
とはいうものの、いずれの人物も、帯に短し、襷になんとやらというやつで、どれを選んでも合格であるともいえるし、不合格だともいえる。
本田氏は本人達にはそれとなく”箱”の存在については伝えてあるものの、そのために骨肉の争いを起こそうという気配は、今のところなさそうだ。
”これは本人達に一人づつ当たってみるのが一番良さそうだな”
リストを折りたたみ、コーヒーを飲み干すと、俺は大きく伸びをして、椅子から立ち上がった。
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