第74話
――????――
「――様、首輪の外れたDが湧きましたが、如何致しましょうか?」
「あ〜やっぱり。おかしいと思ったんだよね。面倒くさいなぁもう。それで君はどこまでやってくれたの?」
「はい。問題のあった廃棄悪魔ガチャは既に封鎖しております」
「うん。じゃあ〜……いつもの通りにやっといて」
「はい。畏まりました」
「あ〜面倒だなぁもう。なんで次から次に問題が発生するかなぁ……」
――――
――
―悪魔界、悪魔第7位の屋敷―
ゲーゲスから支配地を奪った第D2↓位悪魔は、自らをディディスと名乗り手に入れた感情値を己に注ぐと第2位格相当の力を取り戻した。
通常の第2位格悪魔ならば、納値が発生し第7位悪魔の支配していた圏域程度では、到底賄えるものではないのだが、ディディスは支配地持ちでありながら、主のいない廃棄悪魔扱いで納値義務などない。
己の欲望のままにその感情値を利用するのみ。
ディディスは集まる全ての感情値を己の力としていた。
「フム。まずはこんなもんだろウ」
感情値の光を失った大きな魔水晶に手をかざしていたディディスがそう呟くと、屋敷全体に激しい揺れと轟音が響き渡るが、それもすぐに止み、ディディスは何事もなかったかのように、己の手の平を開いたり閉じたりと繰り返しセラバスに向き直った。
「フン、まあまあカ……セラバス皆を集メロ!」
「はい。畏まりました」
セラバスはディディスに頭を下げると管理の間を後にした。
支配地持ち悪魔は、管理悪魔からの補佐を受け支配圏域に人口増加につながる策や感情を刺激する何かしら行動を起こす。
だが、今のディディスにとってそれは関係のないことだった。
「我らはこの屋敷に配属された悪魔だぞ。勝手な……ぎゃあ」
「フン! 納値対象(紐付き)ノ配属悪魔など要らぬワ」
ディディスは己の置かれた状況を理解せず、ディディスを咎めようとしてきたこの屋敷に配属されている配属悪魔を処分して周り残った配属悪魔は唯一忠誠を示したセラバスただ一人となっていた。
「クックックッ! 懐かしイものダ……」
管理の間の内装に視線を向け、そう呟くとディディスはゆっくりと玉座の間に向かった。
――――
――
「よし、これでハンター登録は終わったな」
「主殿すまない」
セリスは初めこそ申し訳なさそうな顔をしていたが、実際にハンターカードを受け取ると、よほどうれしかったのか、そのカードを眺めてはだらしなく口元を緩めていた。
聖騎士だった頃の騎士然としていた姿からは想像できないほどセリスは表情を表に出していた。
「気にするな。その方が俺たちも都合がいいからな。これで、この都市にも用がなくなったから……」
表情を露わにするセリスが珍しくて、ついセリスに視線を向けていたのだが、セリスが一歩踏み出した拍子にマントがはらりとめくれ大きく弛むおっぱいが目に入った。
たゆ〜ん。
セリスが一歩歩くたびにおっぱいがたゆんたゆんと揺れている。
美綺の鎧弍型、その効果は意中の異性に癒しを与える効果もある。
——な、なんだこれは……
しかもこの場に留まっていても仕方ないと思い、セリスから視線を外し歩こうとしたのに、セリスのおっぱいが目に焼き付いていて視線を逸らしてもなおその余韻が残り続けている。
――セリスのおっぱいが頭から離れない……
不思議に思い首を傾げる。まあ、驚きはしたが、俺にとっては眼福なだけなので構わないんだけど。
「ああ〜!! クローの顔が緩んでるよ」
「まあ本当だわ。もう、クローったら」
マリーは両手を腰に当てぷくっと頬を膨らませ、エリザは俺に腕を絡めて頬を膨らませた。そうか俺の顔は緩んでいたのか。
「あ〜否定はせんが、決してエリザとマリーに不満があるわけじゃないぞ。
むしろ大好きなんだが、ただセリスのが……なんでなのか、おかしい……よく分からんがおかしいのだ」
もう一度首を傾げると、エリザとマリーは軽く息を吐き出す。
「はぁ。もういいですよ。理由は分かってるから。ね、エリザ」
「そうね。これは……しょうがないことだわ」
エリザとマリーの視線もセリスに向けられ、そこで初めてセリスが俺たちが立ち止まりセリスの方を向いているの気づく。
「何かあった……あ〜なんか私のことですまん」
途中まで口を開いたセリス。皆の視線は自分に向けられているが、よく注意してみるとその視線は美姫の鎧・美綺弍型に向けれていることに気づき思い出す。その効果を。
「どういうことだ?」
「「クローはいいの!!」」
「そ、そうか……」
なんか仲間はずれにされた感があるが、エリザとマリーがおっぱい強く押しつけて否定するので今回は諦めておく。二人のおっぱいが気持ちいいし。
なぜかセリスに頭を下げられたが、頭を戻した拍子にセリスのおっぱいがまた揺れてるよ。
たゆ〜ん。
——おお……
またしても思わず口元が緩む。
それに反応するエリザとマリーはわずかに眉間にしわを寄せていた。
「ぷっ、あははは。クローさまも大変だねぇ」
ケラケラと笑うナナが楽しそうにそんなことを言ったかと思えば「あたしも」っと言う声の後に背中に柔らかな感触。
ナナまでおっぱいを押しつけてきたのだ。
「こ、こらナナ。背中に抱きつくな!」
「え〜、ほらあたしはクローさまの配下だし、クローさまが困っていたら助けないといけないかなぁと、これでも思っちゃたりしてるのですよね、にしし」
「お前は、よけいに、ややこしくするだけだからやめろ」
「ええ、そんなことないよ、ね?」
ナナはエリザとマリー、そしてセリスに笑顔を振りまきつつ同意を求めて場を和ませる。
俺がセリスのおっぱいばかり気にしていたのがいけなかったことをナナはしっかりと見ていたらしい。
気づけばエリザとマリーも笑顔を取り戻している。
――ナナが俺のために初めて配下らしいことを……
だが、そんな和んでいた時間もすぐに終わりを告げる。
「む!?」
「どうしたのクロー」
「クロー?」
「主殿?」
「いや、今何か頭に……」
「そ、それあたしも〜」
ナナも同じく何やら聞こえたらしいが、こんなこも初めてだ。状況が分からず俺は周りを警戒する。すると、
【**お尋ね者**】
【悪魔ディディスとその配下、及び協力者の討伐せよ】
【**お尋ね者**】
【悪魔ディディス討伐者には感情値を1億カナを与える】
【**お尋ね者**】
【悪魔ディディスの協力者及びその配下を討伐した者は一体につき感情値を1万カナを与える】
今度ははっきりと俺とナナの頭に無機質な声が響いてきた。
「なんだ、いまのは? これも悪魔の囁きか? しかもお尋ね者って何だよ。こんなこと初めてだが……まあ、面倒だし俺には関係ないかな」
「うん。そうだね」
かなり警戒したが、俺にはあまり関係なさそうなので気にしないことにする。
俺よりも業界に詳しいナナも同じ判断なので考えを改める必要はなさそうだ。
「「「何かあったの? (のか?)」」」
「ああ、俺たちには……!?」
「関係ないことのようだ……」そう三人に伝えようとしていたその時――
悪魔の囁きが再び聞こえてきた。
【場所はゲスガス小国王都】
【場所はゲスガス小国王都】
【その場にいる者は行動を起こせ。対応が遅れれば、それ相応の処罰を下す。早急な対応を期待する】
「おいおい、こんなことってあるのかよ」
「おかしいな、あたしも知らないよ」
ナナが業界に詳しいのは、教育してくれた悪魔がいるかららしいが、その悪魔からは聞いたことがないと、ちゃんと教えてくれてないと困るよ、とその悪魔に向かってぶつぶつ文句を垂れていた。
「しかし、参ったな……」
俺は雲ひとつない青い空を眺めそう呟いた。
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