第67話
「私を君の女にしてくれないか?」
美しい顔立をしたセリスが笑み浮かべて俺を見ている。
その瞳は少し妖しくもあるが十分魅力的であった。
――あの、けしからんおっぱいが俺の癒しに……ふむ、悪くない……悪くな……い、んん? いやいや、違う……
違うぞ……どうしてこうなった。思い出せ。思い出すんだ……
――――
――
「な、なんてことだ」
ぼよ〜ん。ぼよ〜ん。
――つるぺただと思っていたのにぼんっ、だとっ!?
たゆ〜ん。たゆ〜ん。
「けしからん、けしからんぞ……なぜに」
――はっ!? そうか、分かったぞ。これは聖騎士団の罠だな……
鎧下から予想外のボリュームを見せつけ、おっぱい好き悪魔の動揺を誘う……
あわよくば籠絡させ契約交渉においてマウントを取る……
なるほど……なるほどな。さすがは聖騎士、いやクルセイド教団。侮れん……
ふふふ、はははっ、だが見破られてしまっては意味がないぞ。くくく、はははは……!
————
——
そうだ、あの時は確か……あり得ない状況を理解しようと必死に考えた……
まあ、考えたところでセリスとの契約はすでに締結してしまっているので意味がなかったのだが、あの時はセリスのおっぱいに動揺してそのことを失念してしまっていたわけだが……
その後のセリスの扱いを心配しての行動だったと考えれば……問題ないはずだ……
まあ、すぐにクルセイド教団の思惑(突然のおっぱいボンで契約交渉を有利にする)を見破ってしまったのは申し訳なかったが……
これはおっぱい好きな悪魔にしか通用しないが俺のほかにもそんな悪魔がいるのか知らんけど……
ここまでは何も問題ない。よな。その後はたしか……
————
——
「ん? ……どうかした……ああ、これか」
俺がセリスのけしからんおっぱいを抽出していると、セリスはなぜか申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「すまんな……女性聖騎士でも鎧の下は皆
「なっ」
――な、なんだと!!
セリスの自嘲じみた告白を聞き俺は全身に衝撃が走った。正に青天の霹靂。
たゆ〜ん。たゆ〜ん。
――こんなモノ……こんな……モノ……しかも……これで……足りない……だと。
なんだでは、このけしからんボリュームのおっぱいを女性聖騎士は皆、標準装備しており、なおかつ、まだ足りないと言うのか……
目的はもちろん交渉を有利に運ぶため、俺はそんな事実を認めたくなかった。
宿敵であるはずのクルセイド教団に所属する女性聖騎士たちが、まさかの
――いや、まだ間に合う。俺はまだ
決して女性聖騎士=大きなおっぱいに屈した訳じゃない。
俺は寛大なのだ。だから認めてやった。
もちろん俺の視線はセリスのおっぱいに釘付け。
ぼよ〜ん。ぼよ〜ん。
——けしからんよな……
「?」
俺に見られているのを不思議に思ったのか、セリスは俺に構わず脱いでいた鎧の手を止め不意に俺の方を見くる。
「まあ、なんだ……」
その表情は眉尻が下がりなぜか申し訳なさそう。
「すまない」
そして俺に謝ってくる。
「ん?」
セリスがなぜ俺に謝ってきたのかちょっとわからないが、
「いきなり……ああ……なるほど。それくらいでどうこう言う俺ではない。気にするな」
話していて俺はピンときた。セリスはおっぱいボンの罠のことについて詫びてきたのだと。だからすぐに許してやった。
「そうか……」
まあ、びっくりしたのは事実だが、おっぱい好きな俺にとっては寧ろご褒美。クルセイド教団には悪いがな。くくく。
「むしろ好ましいぞ」
——そう俺はおっぱいが好きだからな。そんな罠になら何度だって受けてやるよ。ふふ。
俺の言葉にセリスは目を見開き驚いていた。
――ほう、意外だったか? だが何度仕掛けてこようが俺には癒しになるだけだぜ?
「こ、これが好ましいのか!!(色気も何もないただのシャツなのだぞ……)」
セリスはよほど動揺しているらしく、慌てふためきつつ、地味なTシャツっぽい上着の胸元あたりを両手で摘み、見せつけてくる。お陰でおっぱいの谷間が何度も顔を出している。
――こ、これは……けしからん。だだが、この程度では……何のために俺は妻たちと……平常心だ、平常心で返すんだ……
ムラムラっときて危うくクルセイド教団の思惑にのるところだったが、妻たちの顔を思い出しどうにか耐えた。俺にはおっぱい攻撃が有効なのかもしれない。
だが、この勝負(なぜか勝負になっないる)負けるわけにはいかない。
「……ぁあ……好ましいな」
俺のは昂ぶる心を落ち着かせようと、息を吐き出した後、余裕をみせるために不敵な笑みを浮かべた。
それから当然のようにセリスのおっぱいを堂々と眺める。これは俺からの精一杯の挑発だ。
目を逸らしたら負けだと思った……
「うむむ」
セリスが、俺から視線を逸らしたかと思えば腕を組み何やら考え始めた。
「!?」
だが、これにはさすがの俺も驚いた。
けしからんおっぱいが組んだ両腕によって押し上げられ、俺に見てくれ、と言わんばかりに主張しているのだ。
――ぐはっ! け、けしからん……けしからんぞ……だがその程度……
俺がぐぬぬと唸りそんなセリスのおっぱいに抗っていると、
「そうか君には、これでも好ましいと思ってくれるのだな……
私は……女性としては全然(おしゃれが)足りないと思っていたのだが……」
セリスは笑みを浮かべ嬉しそうにそう言葉を続けた。
――これで足りないとな……でもな、俺はそれ以上はいかんと思うぞ……それ以上はおっぱいではない、それは乳だ。
「気にしすぎだ……それで十分だ……」
俺は優しく諭すようにセリスに伝えた。セリスよ理解するのだ……何事にも限度があるということを。限度を超えると一気にダメなのということを。そう喉元まで出ていたが、
「ふっ、正面からそう堂々と言われると……悪くないな。いや、これは……私は嬉しい、のか?」
セリスが理解を示したので言うのをやめた。
――? 今のその反応……セリスはあんなにけしからんおっぱいを持っていて……自信がなかったということか?
むむ、そうか、そうなのか。よし、ここはもっと自信を持たせるべき、だよな?
「ふん。そんなこと……でもまあ何度でも言ってやるさ、お前はもっと自分の魅力に自信を持つべきだということを」
セリスが胸に手を当て、またもや目を見開いている。
「ウソじゃないぞ。お前は十分魅力的だぞ」
——だからそれ以上大きなおっぱいがいいだなんて望むんではダメだ。俺の癒し理想から離れてしまう。
「ふふ、そうか私は魅力的か。ふふふ、君だけだよ。そう言ってくれたのは。
……私は今まで聖騎士として、その役目を果たすためだけに生きてきた……だから私は女らしくない。全然足りていないと自覚していた」
――やはりな……だがしかし、聖騎士として活動するのは当然の義務だろうが、周りはなぜ理解してやらなかった……あのおっぱいなら十分であるということを。
「それでも気づくはずだと思うのだが、まあ、それは相手が悪かったのだろう」
「そう、かもしれんな。君も知っていると思うが、私にはこの虚実眼がある……
そのせいで、私は避けられ、正面からまともに会話すらしたことがない。
ましてや堂々と見つめられることすらなかった。
だから、私も相手に期待し求めることを諦めていたのだよ」
――はて? なぜここで虚実眼のことが……? おっぱいと……何か関係あったか?
「それは今の俺たちに関係ないはずだが?」
——俺たちは今、おっぱいのことを話していたのだろう?
セリスの瞳が僅かに揺らいだ。
「ふっ、君はそういう奴なのだな」
――必要ないからな。それに、悪魔とバレてしまった今の俺に虚実眼など無意味……
「そうだ、お前なら分かるだろ。虚実眼くらいで俺は変わらない」
――そう、俺はおっぱいが好きさ。そのおっぱいに癒しを求めることも。その事実は変わらないのだよ。
「ふふ、やはり君と契約できて良かったと思うよ。
私はこれを機に……そうだな……もっと君に、いや、君のための女になろう」
――……へあっ!? 契約? おあっ!? すでに締結してたよな……危ねぇ、おっぱいの話に全部持っていかれてたわ、ってあれ? セリスとは今何を言ったんだ?
セリスの契約と言った言葉をきっかけに俺の頭は一気に冷静さを取り戻していく。
――――
――
「うーむ」
――全てを思い出したが、やっぱり分からん。
ただ俺がセリスのおっぱいに夢中になっていただけだ。おっぱいの話をしていてなぜセリスがエリザやマリーのような優しげな表情を浮かべているんだ……
「ま、まて早まるな。もっとよく考えろ。それに契約も履行されてないんだ。
時間はあるからゆっくりいこうではないか、な?」
――あの表情は危ねぇ、胸の奥から熱い何かがこみ上がる、ムラムラとしたものが。
でも俺は契約履行前に手を出したら違反になる……
いや、でも相手の同意があれば大丈夫だったような、いやいや、歯止めが利かなくなる、やっぱりダメだ。契約違反は怖い。
「? そうか。少し残念であるが、君にそう言われてしまっては仕方ない。履行されるまでは我慢するとしよう」
「あ、ああそうしてくれ。ところで、お前、ああもう契約したんだセリスでいいな。セリスはまだ何かしなくてはいけないんじゃないのか?」
俺はそう言ってから地に散らばっている聖騎士の鎧を見渡した。
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