第50話

【契約者エリザから感情値1000カナ獲得した】

【契約者マリーから感情値1000カナ獲得した】


 いつもの悪魔の囁きで俺は目が覚める。テント内もまだ暗く、前世の感覚でいうと朝5時くらいだろう。


むにゅん。


左腕に妻エリザの柔らかさを感じる。昨日はだいぶハッスルした記憶があるが……


――あれ、途中から記憶が……


そう思い至り恐る恐る妻の方に目を向ける。


 ――うおっ!!


 そこには両脚や口元、色々な部分がだらしなく開いたままの状態の妻のエリザが姿があった。


――やばいっ。


 どうやら俺は暴走してヤりすぎたみたいだ、俺は心の中で謝りつつ慌てて回復魔法をかけてやる。


「ん、んん……すぅ、すぅ」


 ぐったりとしていた妻だったが俺の回復魔法で無事元どおり。妻はスヤスヤと気持ち良さそうに寝息を立て始めた。


 状態も半壊って出ていたし、危うくエリザ自身を壊しかけていたようだ。危ない危ない。本当よかった。


「ふぅ。気をつけないとな……?」


 暴走してしまったことを深く反省していると、何やら右側にも人の気配を感じた。


「ま……まさか……」


 俺は嫌な予感がした。


 ――マリーっ!?


 右側にはダラしない格好で、ぐったりしてるマリーがいた。当たり前だがマリーは全裸だった。どうやら俺はマリーにも手を出してしまったらしい。


「!?」


 ――うおぉっ!!


 しかもマリーは初めてだったらしく、その形跡がバッチリと見受けられる。しかも、マリーの状態も半壊だったのだ。俺は頭を抱えた。


 ――すまん、すまん、マリーっ! いや、それよりもまずは回復だ。


 俺はマリーにも心の中で謝りつつすぐに回復魔法をかけた。するとマリーからも気持ち良さがな寝息が聞こえ始めた。


「はぁ」


 ――やっちゃったよ。やっちったよ俺。


 だが、冷静になればなるほど不思議と後悔がなかった。むしろこれでマリーも俺のモノだとさえ思えてくる。これは俺が悪魔だからだろうか?


 自分のモノにできたという満足感というのか、安堵感というのかそっちの方が強く感じた。


 もちろん、肉体関係だけで、人の心をどうこうできるわけではないのだが……本能はよくやったとやたら訴えてくる。俺もついつい笑顔が漏れる。


「しかし、なんでマリーが……あ、そういえば」


 朧げだが、妻と仲良くしていた、いや、すでに暴走しつつあったあの時……

 突然裸のマリーが俺たちの中に混ざってきたような気がする。


 朧げな記憶を探っていると、不意にマリーが目をバッチリと開く。


「おっ、マリーおは「クローごめんなさい!」


 いつものように朝の挨拶をしようとして今の状況を思い出す。

 やってしまったことに後悔はないが、初めてを奪って少しばかり悪い気がしたので、俺はマリーから目を晒してしまった。


 でもそんな俺に向かってマリーは慌てた様子で上体を起こすと頭を床につけて謝り出した。


「? どうしてマリーが謝る……?」


 ――俺の方がやっちゃた感があるんだぞ? 


そうは思うも、マリーは以前して頭を下げたままだった。


「クローほんとにごめんね」


「いや、俺はマリーは悪くないと思うが……むしろ俺が……」


 マリーとそんな会話をかていると、


「クローおはよう」


「ぁ……」


どうやら妻エリザも目を覚ましたらしく、ゆっくりと上体を起こした。俺は少しバツが悪くなりテント内を目が泳ぐ。


まさに今の俺の心は浮気がバレた旦那状態。


 ――あれ?


 少しは罵倒されることを覚悟していたんだが、妻からそんな声は一向に飛んでこない。


 不思議に思いつつゆっくりと視線を妻に向けてみれば、エリザは気まずそう俺から顔を背ける。


「エリザ?」


「えっと……その……実は……」


 俺は余計に訳が分からなくなり、妻の名前を呼んだ。

 するとエリザが観念したかのようにぽつりぽつりと語り出した。


 どうやら彼女たちは既に話し合っていて、こうなることもお互い同意の上だったようだ。知らなかったのは俺だけ。


 マリーが俺に惹かれているのに気づいた妻が、手を差し伸べ夜に忍び込んでくるように提案したようだ。


 妻は初めて心から仲良くなれたマリーと離れたくなかったらしい。そしてそれはマリーも。お互い似たようなことがあったから余計にそう思ったらしい。


 ――そういえば、初めからそれっぽいことも言っていたもんな……エリザは。


「それにクローのは激しいから私だけじゃ満足させれないって思ったの……」


 ——うっ、な、なるほど。


 やり過ぎた感の俺が、トドメにそんなことを言われてしまえば俺からは何も言えるはずはない。いやむしろ喜ぶべき展開だ。


 だが、マリーへの確認は大事だ。俺は無理やりってのご嫌いだから。そう思った俺は早速頭を下げたままのマリーの肩にそっと触れ、優しく頭を起こしてやる。


「マリー、その、こんな状態で言うのもあれだが、ほんとにいいのか?」


 マリーは顔を真っ赤にして、恥ずかしそうにしながらもハッキリと頷いた。


「うん。いい」


「そっか……」


 しかしマリーが俺に惚れていたとは、どこに惚れる要素があったのかさっぱり検討もつかないが、好かれて悪い気はしないので深く追求することもしない。

 ほら、やっぱりやめたいって言われたら俺が嫌だし。


 それから俺はマリーは俺の加護について説明してあげると、マリーも不老スキルを取得し、俺の妻となった。

 妻が一人増えようが、夫婦の営みは毎日欠かさずするつもりだからマリーもその内きっと魔法が使えるようになるだろう。


 これらのことも先にエリザから聞いていたようで、マリーは少し驚く程度ですんなりと受け入れていた。


 エリザは元高位貴族だけあって根回しがうまい。

 まあ、俺としてもスムーズに事が進んだからありがたいんだけどね。


 新しく俺の妻になったマリーはもちろんのこと、俺の初めての妻であるエリザももっと大切にせねばと改めて思う。


「えへへ」


 そこで俺は前世の記憶にあった結婚指輪とやらを3人で嵌めることにした。思い出した俺、なかなかいい仕事をしてると思う。


 でもその結婚指輪はごつごつとした宝石の嵌った指輪ではなく、邪魔にならず、ずっと嵌めていられるシルバーリングに病気耐性を付与した。


 彼女たちが左薬指に嵌めた指輪を眺めてにまにま口元を緩めていたので俺も嬉しくなる。


 ――良かった、思いつきだが喜んでるみたいだな……


 ただ後日、彼女たちは再び暴走モードとなった俺を相手にして、二人でもダメ。とても受けきれないと悟り、何やら思案しはじめていたことになど俺が知る由もなかった。



 ――――

 ――



 お日様が顔を出し、俺たちがテントを片付け終わる頃、使い魔のラットが1匹の大きなネズミを引き連れて帰ってきた。


『あるじ……戻った』


『おお、ラット……仲間でもできたのか?』


『違う。あるじ……』


 ラットから詳しく話を聞けば、このネズミ。この辺りを一帯を治めているボスネズミだったらしいが、ラットが力を見せたことで、従属する形となった。


 そして今日はラットの主である俺にわざわざ挨拶にきたらしい。ネズミながらになかなかできた奴だ。


 そのボスネズミは俺に挨拶を終えると踵を返し森へと帰ろうとする。本当に挨拶にきただけのようだ。


 ——そうだ。


 そこで俺はあることを思い出す。エリザの母親であるマリンの行方。俺はラットを通してマリンを探せないか頼んでみた。


『あるじ任せる。おれ指示だした。手が足りなければ他のネズミも使う、大丈夫』


 ボスネズミもラットから指示を受けたらしく、ラットを向いてこくこく、俺に向いてこくこくと頷くとすごい速さで去っていった。


『速いな』


『あるじから頼られてうれしい、そう言ってた』


『ふむ。そうかなかなかやるなラット。でも無理はするなよ』


『大丈夫』


『そうか。でもラットはよく子分を増やそうって気が付いたな』


『あるじ、おれ一人……手が足りない……だから考えた』


『ああ~なるほどそうか。そうだよな、すまん。そのうち、素質のある奴が居たら、使い魔を増やすからな。

 それまで待ってくれ……ついでにラットが気に入った奴がいれば連れてきてもいいぞ』


 俺はご褒美に大きなチーズをラットにやった。


『だが今は少しゆっくりするといい』


『ちーず♪』


 ラットはこくりと頷くと、俺が与えた大きなチーズを器用に両手で掴み幌馬車の荷台の中に入っていった。


 それでラットに任せた盗賊たちがどうなったかというと……

 ラットは野犬を盗賊けしかけ襲わせたらしい。しかもその内容はちょっと引く。


 なぜかというと、ラットはまず盗賊20人に対して、発情したメス犬のフェロモンが、体内から放出され続けるようになる悪因を刻んだ。


 つまり、俺が暴走モードに突入している時には、盗賊たちも野犬とお楽しみだったらしい。まあ、盗賊たちの方が襲われ犯される側だけど。散々自分たちがやってきたことだから、たまにはされる側になってもいいだろう。


 ラットは盗賊たちが逃げ出さないよう、律儀にも近くでずっと見張っていたようだ。


 ただ、報告の後に確認してくれと言ってラットが送ってきた映像思念は想像以上に凄かった。


 発情したメス犬のフェロモンに引き寄せられた雄野犬の数の多いこと……


 妻たちとの楽しかった余韻がすべて吹き飛んでしまった。


 でも夜間での盗賊と野犬の問題を一気に片付けたラットは優秀だ。これからも頼りにしたい。



 因みに悪因を埋め込まれた人族からは、いくら願い捧げようとしても、悪魔大事典が召喚されることはない。


 これは悪因を埋め込まれた人族からは感情値が入手できなくなるからだ。悪魔側に何のメリットもないからだ。


 

 その後、なぜかこの街道には盗賊が全く出なくなり、町の人々が喜んでいたそうだが、それは俺たちの知らぬところの話だった。



 ――――デビルスキャン――――

 所属: 悪魔大事典第29号 

 格 : ランクG

 悪魔: ナンバー960

 名前: クロー

 性別: 男性型

 年齢: 23歳 

 種族: デビルヒューマン族


 固有魔法: 所望魔法 

 所持魔法: 悪魔法 攻撃魔法 防御魔法 

      補助魔法 回復魔法 移動魔法

      生活魔法


 固有スキル: 不老 変身 威圧 体術 信用

       物理攻撃無効 魔法攻撃無効

 所持スキル: デビル系汎用スキル

 契約者: エリザ マリー

 使い魔: ラット(ネズミ)


 ――――デビルスキャン――――――

 称号: クローの妻(一人目)

 名前: エリザ

 性別: 女性

 年齢: 17歳

 体形: ボンッ、キュッ、ボン


 クローの加護: 不老

 保有スキル:

 礼儀 剣術 ダンス 魔法


 装備品と能力:

 クローの小剣     防御不可:改

 クローのガントレット 金剛力:改、収納

 クローのベルト    認識阻害:改

 身体強化:改

 回復:改

 クローのブーツ    俊足:改、回避:改

 保護ネックレス   防護:改、障壁:改、位置情報

 クローの指輪    病気耐性

 冒険者のワンピース  胸元が大きく開き丈が短い

 セクシーなパンツ   布面積が狭い

 クローへの信用(愛)  すでにMAX

 ――――――――――――――――――

 称号: クローの妻(二番目)

 名前: マリー

 性別: 女性

 年齢: 20歳

 体形: チマ、キュッ、ボン


 クローの加護: 不老

 固有スキル:

 キョウ運(強運) 弓術 短剣術 狙い 

 

 装備品と能力:

 クローの弓・矢    防御不可:改

 クローの短剣     防御不可:改

 クローのガントレット 金剛力:改、収納

 クローのベルト    認識阻害:改

 身体強化:改

 回復:改

 クローのブーツ    俊足:改、回避:改

 保護ネックレス   防護:改、障壁:改、位置情報

 クローの指輪    病気耐性

 ハンター女服上・下   

 クローへの信頼(好意) すでにMAX

 ――――――――――――――――――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る