第38話

【契約者エリザから感情値500カナ獲得した】

【契約者マリーから感情値100カナ獲得した】


 俺は、いつもの頭の中に鳴り響く悪魔の囁きで目覚めた。

 どうせなら愛らしい妻の声で目覚めたいものだと思う今日この頃。


 室内はまだ薄暗いが、窓の外がうっすらと白くなりはじめているので、もうすぐ夜が明けそうだ。


 ――履行せずに寝てしまったからマリーからも感情値がもらえたのか……


 そんな事を考えながらも、俺の両手は隣に寝ている妻のおっぱいへと吸い込まれがっちりと鷲掴み。がっちりといっても力は入れていない。


 もみもみ。


 ――ふむ。


 妻の生肌のおっぱいは弾力があるのに最高に柔らかい。ん? なぜ生肌かって。それはもちろん俺が寝る前に、すでに寝ていた妻の服を勝手にぬぎぬぎしてやったからだ。


 もみもみ。


 ――むほっ。


 夫婦になってからも妻のおっぱいは毎日のように触れているのだが、これが全く飽きがこない。というかこれからもきっと飽きることはないだろう。

 それだけ俺は妻のおっぱいを、いや妻自身を大切な存在だと思っているのだ。


 もみもみ。

 ――むほっ、さいこーです。エリザさん。俺、癒されてますよ……


「ん、んん……はぅ……」


 しばらく妻のおっぱいを堪能していると妻の口から艶やかな声が漏れてくる。


「すまんなエリザ。やめてあげたいのはやまやまなのだが、俺の両手がやめることを拒むのだ」


 もちろんそんなことはないのだが、揉み出すと止まらないから困るのだ。

 まるでスナック菓子のかっぷるえびせんのように……


 ――やめられないとまらない〜♪


「ふふふ、おはようクロー」


 途中から目が開いていたらしい妻の視線が俺に向けられ、にこりとして目を細める。


「おはようエリザ」


 上体を起こした全裸の妻が嬉しそうに俺に抱きついてくる。


「まあ、クローったら……ふふ、そうね、昨日は仲良くできなかったものね。朝だけど、ちょっとだけならいいわよ」


 朝の生理現象で大きくなった俺の砲口に視線を落とした妻がそんな事を言った。


 ――おや? エリザも昨夜できなかったことを気にしてる?


 昨日までと少し様子の違う妻。妻の意外な言動に俺自身も驚くが、もちろん俺に拒む理由なんてない。

 なので二つ返事した俺は、妻の気が変わらないうちに急ぎ身体を抱きしめ、そのままベッドに押し倒した、のだが。


「あ、あの……」


 そこで待ったの声が頭上から聞こえる。


「ぼ、ボクもいるんだけどな……」


 全裸の少女がベッドの上、俺たちのすぐ隣に座り(女の子座り)して、申し訳なさそうに小さく右手を挙げている。

 昨夜、身体を回復してやったマリーだ。


 ――うん。知ってた。昨日は妻の隣に寝ていたもんね。


 マリーが全裸なのは治療後、嬉しさのあまり泣き疲れてそのまま寝てしまっていたからである。


「マリー、すまんがしばし待て」


「え!? え、ええ!?」


「ごめんなさいねマリー」


 スイッチの入ってしまった俺にやめるという選択肢はない。

 驚き固まるマリーを無視して俺と妻は朝から夫婦の営みに励んだ。


 ――――

 ――


「も、もう。信じられないよ。カイルたちだって目の前じゃなく隣の部屋でしていたのに、経験のないボクの目の前で始めるなんて……」


 顔どころか全身を真っ赤に染めたマリーが恨めしそうな目を向けてぶつぶつと呟いていたが、気付いているのだろうか、マリーは自分は処女だと言っているようなものなんだけどな。

 ちなみにマリーは二十歳。エリザの三つ歳上。ちっぱいだけど三つ歳上だったのだ。

 昨夜デビルスキャンした時に見ていたから間違いない。


「すまんすまん」


 まあ、見た目は十五歳くらいにしか見えない。いや見えれば良い方なので不思議でもないのだが、


「むう……」


 頬を膨らませるマリー。なんだから余計に子どもっぽくみえる。


 そうなのだ。俺たちの仲良し行為は一戦では止められず、三戦ほどしてようやく落ち着いた。だいぶ日が昇っている。


 それでも俺はクリーン魔法で部屋中をきれいにして何事もなかったかのように振る舞う。


「ごめんなさいねマリー」


 俺の相手にちょっと慣れてきた妻は、三戦程度ではケロッとしている。まあ俺も暴走モードにならないように気をつけてはいるからな。

 一度暴走モードになった朝は大変だった。もちろんそれは俺じゃなく妻エリザの方が。

 妻の精神状態が半壊という、とんでもないことになっていて、俺はすぐに使える最上級の回復魔法をかけてやったら元通り戻っていたんだけど、今思い出しても恐ろしい。


「ほら、クローから悪魔でもなる心の病気の話を、昨日聞いたから……妻として、夫のあの状態は心配で見過ごせなかったの。

 それに私、昔習ったことを思い出したの。あんなにパンパンに膨れているあの状態は男性の身体にはとても悪くて辛いんだってことを……」


 ――いや、あれは朝の生理現象なんだけどな……しかし、エリザにしてはやけに積極的だと思ったが、そんな事を考えての言動だったのか……


 こんなにも俺の身体のことを気遣ってもらったことは、過去の記憶を探ってもたぶん初めて、なんとなくだが、そんな気がした。しかもいまは悪魔の身体。

 だから尚さら、俺の身体を心配してくれた妻が愛おしくてたまらない。


 ――よし……決めた。


 俺は悪魔だが今さらそんなことは関係ない。俺はこんな妻を絶対に幸せに何不自由なく過ごさせてやろうと心に誓う。


「男の人はみんなそうなの?」


「ええ。詳しくは言えないけど、私はそう習ったもの。クローにはずっと健康でいてもらわないと私が嫌だもの」


「……ボク知らなかったよ。男の人も大変なんだね」


 少し不機嫌そうにしていたマリーまでも、妻の言葉を信じて俺に慈悲の目を向けてくる。


 ――こらこら、お前の方が大変な目に遭っていただろうが。


 やはりマリーは冒険者にしては素直でいい娘すぎる。だからカイルにも騙されたのだろう。

 これは別れる際に、一つくらい身を守る魔法具を作ってやらないと、また騙されて酷い目にあうかもしれないな。


 ――んん!? なぜだ? 俺はなぜそんな事を考えていた? ……夢、か。夢のせいだな。彼女の夢を見てしまったから……彼女の過去を少し知ってしまったから……そんなことを俺は考えてしまったのだろう……なるほど。


 ここにきて漸く俺は理解した。

 他の悪魔はどうだか分からないが、妻の時もそうだった。

 どうも俺は、契約して繋がりを持った相手ののことには放っておけなくなる性分らしい。


「それで、全裸のまま待っていたのは約束した契約を守るためか?」


「そうだよ。ボクだって感謝してるんだ。小さいけど、ボクのおっぱいもちゃんと揉んでくれるよね?」


 これも契約ではあるが一応、妻が目の前にいるので確認してみる。

 なぜか彼女は満足げな顔をマリーに向けこくこくと頷いていた。


 ――?


 嫉妬してもらえるかもって少しは期待していたが、とうも妻にそんな素振りは見受けられない。

 もしかしたらだけど、妻は逆にマリーの身体を元に戻した俺のことを誇らしく思ってくれているのではないだろうか? 

 なんだかそんな気がしてきた。それならば俺は遠慮することはない。


「分かった」


 一言そういってから俺はマリーのちっぱいに両手を伸ばす。


 むに。

「!?」


 ――ほお。


 触れるもすぐに彼女の肩が大きく跳ね上がる。

 彼女のちっぱいはちっぱいなだけに柔らかさよりも弾力というか張りが強い。

 まあ、それでも女性らしさと柔らかさも十分にあるので気持ちがいい。


 ――ふむ。ちっぱいでも、これはなかなか癒される……全然悪くない。


「んん……」


 それでも、やはり悪魔の俺に触れられるのには抵抗があるのだろう。


 瞳だってきつく閉じているし、身体全体も力が入り強張っていて僅かに震えている。


 ――頃合いか。


「マリー、なかなかよかったぞ」


 数秒ほどで俺は彼女のちっぱいから手を離した。


「……? もう、終わり、なの?」


 ゆっくりと目を開けた彼女が少し物足りなさそうに俺を見上げてくる。

 物足りなさそうというのは俺の勝手な解釈なんだけど。

 でも、彼女のその言葉から感じとてる思ったより短いと思ってくれたのならまあ、俺としてもよかったのではないだろうか。


「ああ……終わりだ」


 俺がそう返事をしたその時に。


【*契約履行*契約は終了しました】

【契約者マリーから感情値1000カナ獲得した】


 そんな悪魔の囁きが聞こえ、プツリとマリーとの繋がりが切れるのを感じた。


「あれ……」


 それはマリーにも感じとれたらしく。彼女は自身の胸に手を当てて何やら考え込むようにじっと俯いていた。

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