第32話
冒険者ギルドから依頼を請け生計を立てる者、その活動内容は幅広く、依頼者の護衛から魔物や獣の討伐、採取に建築、他にも修繕、清掃などの雑務まで何でも請け負う何でも屋だ。
そして今、俺たちは常設依頼の〈薬草の採取〉と〈獣狩り〉を受けて、町から馬で30分くらいの場所にあるソコソコ森の中にいた。
ちなみに獣狩りとは食肉になるノウサギ、イノシシ、オオカミやクマ、食べれる獣なら何でもいい。とにかく狩って帰ればいいだけ簡単依頼。買い取り価格は当然違うけどな。
というのも、この町には目ぼしい依頼が少ないから滞在する冒険者も少ない。
だから慢性的な食料不足(特に食肉)に陥っているらしいのだ。
だから、俺たちの冒険者登録も受付のおっさんが両手を上げて大歓迎してくれ、手続きは驚くほど簡単で早かった。
職員の言葉を疑うわけじゃないが、あまりにも手続きが簡単に終わったため、何かの罠かと思った俺は、このソコソコ森に入ってから他の冒険者の気配を探ってみた。だが人の気配はない。
――近場で薬草の採取や獣狩りと言えばこの森が一番だと言っていたのに、この有り様。冒険者不足ってのは、本当らしいな……
受付のおっさんは本当のことを語っていたのだと知る。
――ん……俺たちの気配を感じとられて、距離を取られているな……
反応があった気配も複数の獣のみで、森の入り口付近のためか、その獣も小動物っぽい。
「エリザ。まずは薬草から採取しようと思うが、そのついでに、獣を見かけたら手当たり次第狩っていこうか」
「はい!」
元気よく返事をして拳をぐっと握る妻は、初めての依頼で張り切っているらしい。
早速、薬草を見つけようと少し前屈みの前傾姿勢で薬草を探しながら歩き始めた。
振り子の様に大きく揺れる妻のおっぱい。全裸の妻の姿もいいが、見えなくても、いや、見えてないからこその良さがある。
――ふふふ、眼福だな。
「あっ!」
しばらくそんな妻のおっぱいを眺めていると妻が薬草に似た何かを発見したらしい。
「これかしら……?」
嬉しそうに駆け寄る妻が、よく見ようと両手を膝に置きさらに前屈みなった。
ぽろん。
――ふおっ。
俺の渡した冒険者の服は、俺が意図してぽろりとチラリを狙った仕様にしていた。
チラリはよくあるが、ぽろりはなかなかお目にかかれないと思っていたが意外に早かった。
大きなおっぱいが開いた胸元からこぼれ落ち、妻のおっぱいが元気にゆらゆら揺れている。
「ぁ……」
妻もすぐに気づいて、声にならない声で驚き、慌てておっぱいを服の中に押し込めたみたいだが、傍に俺がいたことを思い出したのか、ちらりと俺の顔を見てくる。
「……見てました?」
そう言いながらも頬を赤くして照れている様子の可愛い妻に笑顔で頷く。
「エリザ。眼福だったぞ」
「もう……クローったら」
耳まで真っ赤になった妻だが、口元からは笑みが溢れているので、見られて嫌がっているわけではないようだ。
「ほ、ほらクローも、わたくしばかり見てないで、一緒に薬草を探しましょう」
「悪かった。そうするよ」
胸元を正した妻は再び視線を地面に向けるときょろきょろと薬草を探し始めた。
そんな可愛い妻を眺めつつ思う。
――魔物はいないよな、やっぱり……
この世界、魔物は存在するがその活動のほとんどは迷宮(迷宮主がいる)や、ダンジョン(迷宮主がなんらかの事由で消滅した迷宮主のいない迷宮のこと)に限られているらしく、それ以外ではほとんど見かけることができないのだとギルド職員に聞いている。
職員曰く、魔物は地上にもいるのだが、なかなか遭遇することができない。
そもそも地上の魔物は、迷宮やダンジョンから漏れ出した不安定な魔素溜まりから現れるらしいが、その魔素溜まりはどこに発生するのかは分からない。
発生すると、その魔素溜まりから一定数の魔物が吐き出されその魔素溜まりは自然に消滅するという。
その規模はその魔素溜まりの大きさによって様々で、場合によっては冒険者だけでは対応できず国から騎士団が派遣してもらうような取り決めも結んでいるようだが、迷宮やダンジョンの魔物とは違って、そのほとんどの場合、獣が変異したような魔物で、その強さも獣とそう変わらないらしい。
だから今までも、国の騎士団が動くような危機的状況に陥ったことは一度もないのだと教えてくれた……
そんな魔物の特徴は目が赤く額に一本の黒い角がある。狩っても死体は残らず、お金になる魔石や素材を残して消滅するため魔物は解体すらする必要がない。
ただ、迷宮の魔物と違って、地上の魔物は狩られなくても一週間ほどで自然に消滅して、その場合は何も残さないらしい。
だから遭遇できた冒険者はラッキーで、嬉々として魔物狩りに精を出す。
これが滅多にお目にかかれない理由の一つでもある。
そんなギルド職員の言葉を思い出していると、
「クローっ!」
――?
ふと俺を呼ぶ妻の声が耳に入る。すぐに妻の方に視線を向けた俺は、少し先でしゃがみ込み満面の笑みを浮かべて手招きしている妻の姿を発見する。
その喜びようから想像するに、どうやら妻は薬草を発見したのだろう。
「ほらほらクローもこっちに来て見てください」
珍しく年相応にはしゃぐ妻が可愛い。俺は妻の傍まで歩み寄ると、妻に手を引かれて、その正面にしゃがみ込む。
「ほら、薬草ってこれですわよね」
妻の片手には冒険者ギルドの登録時に銅貨五枚で購入した冒険者手帳が広げてある。
妻は目の前に自生している薬草と手帳に描かれている挿絵とを見比べているのだ。
冒険者手帳にはギルド規約以外にも魔物や薬草、鉱石といった特徴が簡素に描かれ、素材は刈り取り方、獣は解体の仕方まで描かれていた。
「……どれどれ」
俺も薬草の特徴なんて知らないが、目に魔力を込めるだけでその名称くらいはすぐに分かる。詳しく知りたかったらデビルスキャンスキルを使えばいいしな。
今は目に魔力を込めるくらいでいいだろう。目に魔力を少し込めると薬草=ポーションの素材と俺の目に映る。
「……喜んでいいぞエリザ。これは薬草で間違いない」
「ほんとですか。よかったわ」
妻が嬉しそうに目を輝かせ、その葉っぱ一つ一つ丁寧に摘んでいく。
――ん?
薬草を丁寧に摘む妻を見ていてふと気づく。
――おっ、おおっ!?
しゃがんでいる妻のスカートは短い。しかも俺は妻の真正面の位置に座っている。
妻の履く超セクシーパンツが俺の目に入る。
「ふふ……薬草の香りも素敵ですね……」
妻は俺が見ているとも知らず摘んだ薬草の匂いを嗅いでご機嫌だ。
――ふふ、これもまた眼福……
妻は長いドレスを履いていた貴族時代が長かった所為か、短いスカートを履いていることをすぐに失念してしまうようで、脚を組んで座ったり、今みたいに夢中になった時にはよくサービスしてくれ、その度に俺の施した認識阻害はやはり正解だったと自画自賛したくらいだ。
――いや、これは癒される……
俺はそんなことを思い返して一人頷いていると――
「できました」
笑みを浮かべた妻が摘み終えた薬草を両手に広げて俺に見せてくれる。
「お、おう。どうやら問題ないようだな。では、素材を入れる袋は準備してきたが、そのガントレットに収納しておくほうが傷まないし、鮮度を保てるだろうからそっちに収納しておくといいぞ」
「そう、ですわね。そうします。収納」
妻はすぐにガントレットに手を当て薬草を収納した。
初めこそ妻はガントレットの収納機能を不慣れでぎこちなく使用していたが今ではスムーズに扱えるようになっていた。
「ふふ、収納って便利だわ」
収納したガントレットを嬉しそうに撫でる妻。
その後、薬草を数本摘んで、ウサギを二頭狩ったところで時間的にちょうどいいと思い、俺たちは帰路に就くことにした。
――ふふふ、冒険者活動も捨てたもんじゃないな。
冒険者活動は始まったばかりで、少しの時間だったが、それでも短いスカートを木の枝に引っかけてはパンツ姿をサービスしてくれた妻、前傾姿勢をとりポロリをしてくれた妻、短いスカートで普通にしゃがみ込みセクシーパンツを披露してくれた妻、そんな妻は、しっかりしてるようでどこか抜けているところもあることに気づいた。
――はしゃぐエリザも可愛いな。
その時の妻の様子を思い返す度に俺は口元が緩んでしって大変だったけど……
どうにか平静を保ちつつ、馬を走らせて腕の中にいる妻に話しかける。
「やはり昼からだと活動するには、少し時間が足りないな」
「でもわたしすごく楽しかったわ」
平民となった妻は一人称をわたくしからわたしに変えようと今努力中。度々間違えているけど、そんな妻が可愛くて俺は気にしていない。
「そうか。それならよかった」
「ふふふ、次はどんな依頼をしてみようかしら……」
そう言った妻が嬉しそうに回していた両手に力を入れて俺の胸に身体を寄せて頬を当ててくる。
むぎゅ。
当然妻の大きなおっぱいが俺の身体に当たっているので気持ちがいいが、顔には出さないよう努めている。
「急ぐ必要はないんだ、気になった依頼を少しずつやっていこう」
「そうよね」
目的はないが、当初の予定通り、俺たちは冒険者活動をしながらゲスガス小国を抜けて帝国に向かうことに決めている。
そして、まだ妻には話していないが、帝国に着いたら適当な屋敷を買いたいと思っている。
ほら、妻がいるのに、宿暮らしというのも何だか嫌だった。
そのあとは冒険者活動をたまにやって妻と楽しくいちゃいちゃダラダラのスローライフを目指すのだ。
感情値を集めるのはそのついででいい……
だがこの時の俺は知らなかった悪魔格ごとに存在期限が設けられていることを、第十位格の悪魔の存在期限はたったの五年しかないことを……
そんなことを考えているとあっという間に町のギルドに帰り着く。
それから薬草とウサギの肉を買い取ってもらう頃には日も暮れていた。
「エリザ。報酬も貰ったし、そろそろ宿に戻って食事にしよう」
「はい」
食肉と薬草の報酬は銀貨二枚だった。
なんだか、すごく安い気もするが、こんなモノなのだろうか? まあ俺たちはお金には困っていないので夕食代の足しにでもなればいい。
「ふふふクロー、外に出たら、手を繋いでもいいですか?」
妻が嬉しそうにそう言って俺を見上げていた。
――そんな嬉しそうに笑顔で言われると、我慢できなくなるぞ。
「それは……ダメ、かな。俺が我慢できない。今繋ぐぞ」
俺はそう言いつつも、すでに妻の手を取り握っている。
「まあ、ふふふ、クローったら。でもうれしいわ」
少し驚いた顔をする妻がこれまた可愛くて、ついその頭をひと撫でしていた。
「よし、帰ろう」
そんな矢先だった。ギルドの入口が騒がしくなり五人の冒険者が入ってきた。
「ん?」
どうやらこの五人はパーティー仲間のようだ。男が一人に女が四人いて、なんとも羨ましいパーティーだが、何やら揉めているように見える。
「今日の依頼で分かっただろ、お前はもう足手纏いなんだよ。その足で俺たちに付いてくるのは無理だ」
「それってつまり、ボクをパーティーから追放するってこと?」
「そうなる。すまない」
「いや。そんなのいやだよカイル。これは君を庇ったからで……それにケガなんて関係ない、ずっと傍にいてほしいってボクに言ってくれたよね?」
「マリー諦めな。その足じゃカイルにも危険がおよぶ。あとのことは私たちに任せて、マリーは他の仕事を探しな」
「そうそう、マリーはしつこい、のっ」
男女が向き合って口論となっていた最中、突然、男の側にいた一人の少女がマリーと呼ばれていた少女の身体を平手でどんと押した。
「きゃっ!?」
その少女は両足で踏ん張ることができなかったらしく、バタンッと大きな音を立て盛大に転んだ。
――ほう。
その際、その少女の白いパンツが見えて、ちょっと得した気分になるが、妻から冷たい視線を感じたので笑顔で返しておこう。
「ふっ」
「もう……」
妻が頬を膨らませジト目を向けてくるが、これは仕方ないのだ。妻も本気で怒っているわけではないので、すぐに、その視線はその少女に向けられていた。
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