第二部 第31話 追放されてるっぽい少女編
エリザと伴侶契約を交わしてから一週間。
俺たちは国境村から馬で移動し、少し大きめの町へとやってきていた。
「我ながら、今朝もすごいな……」
そして、今はその宿。俺は寝起きにクリーン魔法をかける。
すると、瞬く間に、部屋中がきれいになった。
「ふぅ。これでいいだろう」
毎朝、酷い状態になっていると妻が知ったら、どう思うだろうか。
少し心配になった俺は、これを毎朝のルーティンにしたのだ。
他にもこの一週間の間で、変わったことがある。
〈お金が欲しい……〉
〈彼女が欲しい……〉
〈お腹減ったよ……〉
〈いい男、捕まえたい……〉
そう、俺は成人の儀式を経て、正式にランクGの悪魔として認められたわけだが、これがなかなか面倒くさい。
〈サボりたい……〉
〈眠たい……〉
俺は聞きたくもない人族の欲望『人族の渇求』が聞こえるようになってしまったのだ。
その範囲は俺を中心に半径50メートルくらい? よく分からないが、たぶんそれくらいの範囲だと認識している。
そいつらの欲望を満たして納値分の感情値を集めろってことなのだろうけど、分かってはいるがやはり、気が乗らない。
というのも、俺は妻エリザから毎日得られる感情値が500カナとまた少し増えていた。
これを一年間毎日得たとして換算してみると500カナ×365日=182,500カナ。と結構な感情値となる。
これは俺が第10位悪魔の年間納値分を賄え、且つお釣りまでくるという十分な量だ。
だから俺は無理して感情値を稼ぐ必要がないのがその理由だ。
「おぅふ。なんだこれ。フィルターができたのか……」
新たな能力(人族の渇求)に初めて向き合い、意識を向けたことで、色々と条件変更が可能だと能力に目覚めて一週間目にして俺はようやく気がついた。
「まあいい……ふむ。とりあえず男は当然省くとして……この条件でもいける? よし、これでいいか」
俺が試しにと設定した条件は、絶望を感じているほど、切羽詰まった人族(女性の渇求)のみ受け付ける。とセットしてみた。
「おっ」
セットした途端、無数に聞こえていた人族の渇求がピタリと止んだ。
「ほう。これはいい。んで、これは切羽詰まった女性はいないってことか……」
もしそんな女性がいれば速攻でその願望を満たしてやり、高い感情値を得てみるのもいいかと思ったが、そう都合よくはいかないようだ。
あ、そうそう契約について簡単に説明すると、契約には超短期契約、短期契約、長期契約の三通りある。
超短期契約はその日の内に人族の欲望を満たしてやるというもの、これだとかなりの量の感情値を得ることができる。
ちなみに、俺が今考えていたのはこれに該当する。
あとはそう難しいことではなく、短期契約は履行までの期間が三ヶ月以内のもの、長期契約はそれ以上のものとなるが、当然、期間が延びれば延びるほど、履行時に得る感情値は少なくなる。
つまり長期になればなるほど、履行時に得る感情値が少なくなるというデメリットがあるが、その分、毎日一定量の感情値を長く得ることができるというメリットはある。
エリザの場合は、護衛契約は短期契約に該当して履行時に6000もの感情値を得てしまった。
通常ならそこで契約は終了するのだが、エリザとはすぐに新たな契約、伴侶契約を締結したから、今も契約状態で感情値を得ているってことになる。
これは俺から離婚することはないから長期契約になるだろう。
そして、他にもエリザ、妻にもこの一週間で変化があった。
俺と彼女は毎日のように夫婦の営みをしているのだが、彼女には一度目で俺の加護を与えた。
悪魔は体液を介して加護を与えて自身が保有する固有スキルを一つだけ付与してやることができる。
俺の場合は、〈不老〉〈変身〉〈威圧〉〈体術〉〈信用〉〈攻撃無効〉〈魔法無効〉から妻に選ばせたのだが、妻が〈不老〉を選んだ。その理由は、いつまでも俺の傍に居たいから。
悪魔は長寿だ。だから妻はそれを望んでくれたのだろう。これで妻も、不死ではないが寿命で命が尽きることはなくなった。
悪魔には不要なスキルだと思っていたが、あってよかったとこの時ほど思った。
だが妻の変化はこれだけじゃない。
俺の加護を与えた彼女は風属性の魔法が使えるようになった。
ただし人族に与えられる魔力は低くそれほど役に立つわけでもなく保険にでもなればいいと思っていたが、驚いたことに俺と夫婦の営みに励む度に彼女の魔力量が少量ずつ増えていった。
それでも彼女の魔力はまだ微々たるもので、小さな風の魔法を数発打つだけで魔力切れとなるが、それでも、少しずつであるが彼女の魔力は日を追うごとに増えているのでいずれバンバン打てるようになってくれるだろう。
「……おはようクロー」
俺が隣で眠っていた妻の頭を撫でていたためか、窓の外はまだ薄暗いのに、その妻を起こしてしまった。
「おはようエリザ。すまん。起こしてしまったようだ」
「ふふ。そんな別にいいのよ……」
笑みを浮かべた妻がゆっくりと上体を起こして大きなおっぱいをぷるんと揺らすと、俺の身体に抱きついてきた。
昨晩もたっぷりスキンシップに励んだはずなのに、妻の柔らかいおっぱいに刺激された俺は――
「エリザ……」
「きゃぁ、く、クロー待って、今日は……ぁ、ぁん……」
上体を起こしたばかりの妻を再びベッドに押し倒し夫婦の営みに励むのだった。
――――
――
「もう、クローったら。昨日は時間の都合で登録だけでしたから、今日は冒険者ギルドで依頼を受けるって言ってましたよね? もうお昼前ですよ……」
本気で怒っている感じではないが、頬を少し膨らませた妻がゆっくりと起き上がると、冒険者用のバッグから今日着ていく服を取り出そうとしている。
「すまん……エリザが可愛いから止まらなくなった」
悪魔である俺の性欲がすぐに治るはずなかった。朝から仲良くして今は昼前なのだ。少し反省する。
俺はクリーン魔法を使いベッドを綺麗にしてから妻に謝るとバレない程度に妻にも回復魔法をかける。
なんとか自分を戒めて初めて悪魔モード(暴走モード)を抑えてみたが、まだまだ人族には辛いものがあったのではと危惧している。これは念のための回復魔法なのだ。彼女に何かあったら俺は自分自信を許せなくなるのだから。
「もう、そんなことを言ったら……クローはずるいですね……ぇ!?」
替えの服を取り出していた妻が、手を止め少し驚いている。
――むっ、あれは……
国境村では冒険者用のバッグを買うだけに留め、すぐに出発したわけだが、妻には数枚替えの服と下着(パンツ)を渡している。もちろん俺が魔法で出したやつ。
下着は、もちろんすべてセクシーなもの。一枚だけ透け透けで布面積がかなり狭い超セクシーパンツを混ぜてみたが、彼女は履いてくれるだろうか。履いてくれるといいな。と思っていたら、今、妻の手にあるのはまさしくその超セクシーパンツだ。
それを広げた妻が、顔を少し赤くしている。
もちろん、彼女の大事なところだ。他の誰にも見られるわけにはいかない。だから俺は、その下着すべてに超強力な認識を阻害する魔法を付与していて俺以外の誰にも認識されることはないだろうと彼女にもそう伝えている。
つまり俺以外の人は彼女の下着を見たいと思わない、仮に事故って見えたとしても変な光が邪魔をして見えない仕様のおまけ付き。
ふふふ、自分でも知らなかったが、どうも俺は独占欲が強かったようだ。
「もう……」
一言、そう呟いた妻は少し恥ずかしいそうしながらも、その下着に足を通した。
――うおぉぉ。エリザが履いてくれたよ!
妻の心遣いに嬉しくなり俺の心もほっこり。
――ありがとうエリザ。その履いている立ち姿も眼福です。
その後、遅めの朝食を宿の食堂で摂って、俺たちは冒険者ギルドに向かった。
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