第12話
ぐりぐり。ポヨ〜ン。
ぐりぐり。ポヨ〜ン。
お腹を満たしている間に屋敷があった街を出たのだが、はっきり言って暇だ。小石や木の枝を投げてきていた野次馬がいなくなったからかなり暇になってしまった。
ぐりぐり。ポヨ〜ン。
ぐりぐり。ポヨ〜ン。
というわけで俺は、彼女の大きなおっぱいに俺の後頭部をぐりぐりと押し付けて遊んでいたわけだが、ふと、あることを思い出した。
ぐりぐり。ポヨ〜ン。
『あいつそろそろじゃないか?』
「……クロー、あなたねぇ。わたくしの胸で遊んでいて第一声がそれなの。意味が分からないわよ、ちゃんと話しなさい」
ぐりぐり。ポヨ〜ン。
『ん〜ほら、あいつだよ、あいつ。エリザのお尻を触った不届き者の変態騎士だよ』
ぐりぐり。ポヨ〜ン。
「ああ、あの方ですの。ふ〜ん……あら、でも、どこのどなたかしらね? 人様の胸にぐりぐりと頭を押し付けて遊んでいらっしゃる方は」
俺の頭に視線を感じるが気にしたら負けだ。気持ちいいから俺はやめないぞ。
『ほう。そんな輩がいるのか。それはけしからんな』
ぐりぐり。ポヨ〜ン。
『うむ。実に……けしからん』
ぐりぐり。ポヨ〜ン。
『エリザのおっぱいで遊ぶ……などと……実にけしからんな』
後頭部に感じる柔らかな感触は最高です。クセになりそうだ。
――くふふ……
ぐりぐり。ポヨ〜ン。
ぐりぐり。ポヨ〜ン。
「……はぁ」
ぐりぐり。ポヨ〜ン。
「……もういいわ」
深くため息をついた彼女の視線が俺の頭から離れた。俺に言っても無駄だと思ってくれたらしい。そうそう諦めも肝心なのだ。
『そうか』
「気になるから外の様子を見てみるわ」
彼女も騎士にかけた俺の魔法の効果が気になっているようだ。
揺れる車内だ、彼女は床から壁へと片手をついてバランスを取りながら立ち上がった。
その際、俺は彼女の胸に抱かれたまま。
揺れる車内だから俺を離したほうが楽に立ち上がれるのに俺は彼女の精神安定剤的なものになってしまったのだろうか。
――それとも……いやいや。
自分にとって都合よく考えそうな思考を首を振って否定する。
――そういえば……
すると前世の記憶にも猫を抱いたまま過ごしていた記憶があることを思い出した。ただ何となくそこに猫が居るから抱く。抱き心地もいいし。
やはり俺は彼女の精神安定剤的なものだろう。
でも、これは彼女にとっていい傾向でもあるのではないだろうか。
というのも彼女はまだ17歳だった。俺の前世の記憶の感覚でいえば青春真っ只中の学生。
彼女の夢でもみたが、幼い頃から王妃教育を受けていた彼女。どういうわけか世間では悪女とまで呼ばれてしまっていたが、俺が接した限りでは真面目。そして根は素直、さらに気遣いできる程度の優しさもある。
第一印象で抱いた高慢さはすでにない。悪女どこいった? 不思議だ。俺が見かけで判断してそう見ていたからなのだろうか?
だからこそ俺は思うのだ。彼女には肩の力を抜きもう少し羽目を外すこと覚えさせようと。
とはいうのは建前で、俺は自己中な悪魔だ。俺が楽しんでいるんだから彼女も楽しむべきだろうと思うのさ。
「ぼーっとしているけど、見ないのかしら? クローが気になるって言ったんでしょう」
俺が物思いにふけっていると、彼女が俺を両手で持ち上げようとしている。
『おお、すまない。ありがとうな』
それから彼女が窓の外が見渡せる位置まで上げてくれ外で騎乗している騎士たちが目に入る。
『えっと、ヤツはどこだ……おっ、いたいた! エリザちょっと見てみろよ。面白いことになってるぞ。
あいつ自分の尻を押さえてる。くははは』
「あら、そうね。でも心配して損したわ。クローのかけた魔法は、自分のお尻を触るようになる魔法だったのね。自分の行いを自覚させるための」
悪魔法の効果を勘違いしている彼女は、ホッとした様子でその騎士を眺めている。
まあ、効果のほどはアレだが、命までとるような魔法じゃないので、彼女にはこのままで勘違いしていてもらおうかな。
『まあそんな感じだ。ほらエリザ見てみろよ。自分の尻の触り心地が良くなかったらしいぞ。顔が真っ青になってる』
――ぷっくく、これは相当堪えてるな。
「そうね。でもいいのかしら隊列がおかしくなったわね。一人だけ後ろに下がって、たるんでるんじゃない」
『あーそこは。そんな姿をほかの騎士たちに、見られたくないんじゃないのか』
「……そうね。そうかもしれませんね。けど、隊列は守るべきだと思うわ」
『そうだな。まあ、俺のエリザに手を出したからそうなったんだ。ほかの隊員からも処罰を受ければいいんだよ。できればキツイ処罰をね』
「……おれのって……」
彼女が何かしら呟いていたが、俺はすぐに様子の変わった(焦っている)騎士のほうが気になった。
――お!?
青ざめた表情から一転して鬼の形相になっているのだ。それでいて周りをきょろきょろと見渡している。
それから身体をぷるぷると震わせているので相当お尻の筋肉に気合を入れているに違いないが、恐らくすぐに限界がくるだろう。
――頑張るなぁ、さてさていつまで我慢できる……?
俺が注意深くその騎士を見ていると、唐突に膝をガクガクと揺らし始めた。そろそろ俺の望んだ結果が見れそうだ。俺は静かにほくそ笑む。
――……ぷふっ!
そう思ってから間もなくして、馬が蹴り出す土煙に混じって、黒っぽいものや水っぽい何かが飛び散りはじめた。
遠目だが俺の目ではハッキリ捉えることがでいる。あの騎士はとうとう限界突破したらしい。
――あぁーあ……
俺は当然の報いだと思ったが、騎士の脚元から流れ続けるう◯こ。
魔法をかけた本人が言うものなんだが、これは酷い。汚いしなんだかこちらまで臭ってきそうで思わず顔をしかめてしまう。
――ふ、ふむ。こ、これはさすがにエリザには見せられんな……そんな気がする。
素直な彼女が穢れるような気がした。幸い、少し遠目だから彼女からは見えていない筈だ。
『エリザもういい。そろそろ座ろう』
俺がそう言い彼女の顔を見上げれば彼女の顔がなぜか赤くなっている。
『……エリザどうした? なんか顔が赤くなってるぞ』
「な、何でもないわよ」
わけがわからない。怒っているのか? そう言いつつも俺をぎゅっと抱きしめるエリザは素直に座り直す。
――?
「な、なんでもないんだから」
彼女が横に座り直してからも俺がまだ、彼女を見ていたことに気づいたのだろう、彼女はそう言ってから顔を背けていたが、彼女の顔はずっと赤いままだった。
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