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「Aランカーの二人を連れて参りました」


二十代後半の女はマルティーナとジネーヴラの二人へと直立不動で敬礼した。階級で言えばマルティーナは少佐、ジネーヴラは大尉である。余所の国であるなら能力者へ階級など与えられないが、ベルツは能力者と言えど、実力などにたいしてはきちんと評価するといったところがある。特にジネーヴラがそれだけ特別だということも大きいが。


「はいエルダとレオンティーヌです」


ぺこりと頭を下げるエルダとレオンティーヌの二人を紹介すると女は部屋から退室して行った。二人とも、ジネーヴラの知っている狂戦士である。共に何度か任務を行ったことがあり、ジネーヴラも信頼のおける二人だった。


「エルダとレオンティーヌの二人なら君も何度か一緒になったことがあり、信頼もおけるだろう?」


甘栗色の緩いくせっ毛のある短い髪、そばかすのある頬、高い鼻、凛々しい眉に百七十センチを越える長身が少女と言うより少年を思わせる。凛々しさとその長身から十五才には見えないエルダ。


ピンクの髪色にピンクの洋服、大きな蒼い瞳にピンクの唇。名前の由来である『メスのライオンのように強い者』とは裏腹な見た目であるレオンティーヌ。こちらは身長百五十五センチと低く、エルダよりも一つ年上の十六歳であるが、どう見てもレオンティーヌの方が年下にしか見えない。


「しかし、Aランカーを二人も連れていかなければならない程の任務なのでしょうか?特にこの二人はAとはいえ限りなくA+に近い実力です」


「確かに普通ならBからB+を連れて行くのだろうが、君の能力について行くにはA-以上のランカーじゃないと無理なんだよ。君はあの死神少女DeathDollと同じSランカーなんだから」


死神少女DeathDoll……噂は耳に」


ジネーヴラは死神少女DeathDoll、1103とまだ会ったことがない。特にベルツとハインツは敵対しているわけでもないし、クラン帝国という大きな国が二つの国の間にある。面識がないのは当たり前である。


「確かまだ七才だと聞いたな」


「はい、しかしその強さは、ここベルツにまで届くほど。クラン帝国はかなり手を焼いているそうで」


「戦ってみたいかい?」


「いえ、特に……私は任務以外では戦いたくありませんので」


そう言うと、窓際からすっと離れ目が見えていないのが本当なのか疑うほどスムーズに歩き、ソファへと座った。


「まぁ……任務とあれば別ですが」


マルティーナはジネーヴラがそう言うと、ぞわっとする笑みを浮かべたのを見逃さなかった。


『さすがは死刑執行人 BoiaCieco と呼ばれるだけはあるな…』


そんなジネーヴラが頼もしくもあり、敵ではなくて良かったと思うマルティーナであった。

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