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「ふへっふへっふへっ」
下品な笑い方をする隣の女を嫌そうな顔をして見ているもう一人の女。そして、少し離れたところにも、もう一人、女が寝転んでいる。
ユリア監察官達が襲撃しようとしている山岳地帯の駐屯地から少し離れたところにある東側の森の高い木の上に女が三人。三人とも美しく整った顔をしており、クラン帝国とベルツ連邦の国境線付近の市場で一悶着起こした女二人と似たような格好をしていた。
「ふへっ、これが笑わずにおれるか」
下品な笑い方をする女は、前髪を厚く真っ直ぐに、そして横は顎の先程で切りそろえられ、後ろの長く伸ばした髪は二つ結びで纏められている。
他の二人も同じような髪型をしており、一人は頭の上でお団子二つ、もう一人は額当てをして一つ結びで長い後ろ髪を纏めている。
望遠鏡で駐屯地の方角を見ている二つ結びの女は、ヘラヘラした笑みを口元に浮かべ、相変わらず楽しそうにしている。
「おい、夕顔。私にも見せてくれぬか」
夕顔と呼ばれた女はちらりとお団子頭の女へと視線を向けると、ぽいっと投げるようにして望遠鏡を渡した。それを受けったお団子頭は、望遠鏡を目にあてて駐屯地の方角へと向けた。
「ふん、狂戦士が六体。一人は片目無し。あれがクラン帝国最強と呼ばれているリオニーとか言う狂戦士か」
望遠鏡を覗きながら独り言ちるお団子頭の女。それを隣の枝に移り笑いながら見ている夕顔。
「ふへっ、高々一人の狂戦士相手に六体の部隊。クラン帝国も余程の人材不足と見える。ふへっふへっふへっ、そう思うだろ、紫陽花」
「クランはA程度の狂戦士が最強と言われる位だからな。それに引き換えハインツの狂戦士の能力の高さは侮れん。しかし、百人強の駐屯部隊と七体の狂戦士部隊。さすがにA+の狂戦士でも一人では壊滅は無理に等しい」
紫陽花と呼ばれたお団子頭の女は、望遠鏡を覗きながら言うと、夕顔へそれを返した。そして、枝の上に胡座をかき座ると、少し離れた所にいる一つ結びの女へと声を掛けた。
「おい、朝顔。どうする?ハインツの狂戦士が駐屯地に着くまで待機か?」
朝顔と呼ばれた一つ結びの女は、片目を開け、ちらりと紫陽花を見ると、ふぅと一つ息を吐いた。
「まぁ、ハインツの狂戦士の監察官も、多分応援を呼んでるさ。さすがにあれに突っこむ馬鹿な奴はおらんだろう。まぁ、我々三人なら問題無く壊滅出来るがね、でも、待機だ」
そう言うと、また目を閉じ小さな寝息をたて始めた。しょうがないなという様な顔をして朝顔を見ていた紫陽花も、枝の上にごろりと横になると目を閉じ寝始める。
「ふへっふへっふへっ、さぁ、ハインツの狂戦士達よ、早く来い。そして私達を楽しませておくれよ」
望遠鏡を覗きながら笑う夕顔。そして、望遠鏡から目を離し自身の腰の刀を一撫ですると、再びその美しい顔に下品な笑みを浮かべた。
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