第60話 後日談 その1

 エリスとカイの結婚式から5年が経過した。


 二人の間には今年で5歳になる男女の双子が誕生していた。男の子はリク、女の子はクウと名付けられた。男の子は母親に、女の子は父親に似るというが、まさしくその言葉通り、リクは母親に似て既に魔力を発現させていた。そしてクウは父親の飛行能力を受け継いでいた。


 二人はすくすくと成長した。やがて成長するにつれ、次第にやんちゃな面が表に出るようになって来た。そしてこれは恐らく、二人ともエリスの性格を受け継いだのだと専らの噂だった。エリスは真っ向否定したが、カイは間違いないと確信している。


 そして今日もエリスのカミナリが落ちる。


「こらぁ! クウ! お兄ちゃんを乗せて飛んだらダメだっていつも言ってるでしょ! 落ちて怪我でもしたらどうすんの!」


「だってだってママぁ~! お兄ちゃんが絶対大丈夫だって言うんだもん!」


「心配すんなよ、母ちゃん! 俺はもう身体強化が使えるんだから、落ちたって怪我なんかしねぇよ!」


「そういう問題じゃないわぁ! あと二人とも! お母様と呼べっていっつも言ってんでしょうがぁ!」


「まぁまぁ、エリス。落ち着いて」


 そこへカイが宥めに入る。


「全然落ち着かないわよ! あなたからもビシッと言ってやってよ!」


「分かった。ビシッ!」


「舐めとんのかぁ~!」


 エリスの鉄拳が炸裂した。


「へぷしっ!」


「お~! 良いツッコミ! さすが母ちゃん!」


「ママとパパって息ピッタリだよね~」


「うるさいわぁ! あとお母様と呼べ!」


 今日も今日とて賑やかなエリス一家である。



◇◇◇



 エリスが領主として治めるこの地、ベリンガム領は、この5年で他に類を見ない程の急成長を遂げていた。


 ます魔獣牧場は、10種類もの魔獣を育てる大牧場となり、規模を拡張することにした。そのため『エリス&カイ農場』の土地を全て酪農地に改造した。今では『エリス&カイ牧場』と呼ばれている。


 農場で育てていた野菜類は、街の近くに大規模なビニールハウス農場を作り、そこで育てることにした。地熱を利用して中を暖めているので、寒暖の影響を受けなくて済む。


 これら魔獣の肉と野菜類は、地産地消を補って余りあるため、領の特産品として出荷されるようになり、今や観光業と肩を並べる程の収益を上げるまでに成長し、領の財政を潤している。 


 ホテルを始めとする観光業の人気は今もうなぎ登りで、予約は3ヶ月先まで埋まっている。新たな観光スポットとして、魚の養殖場の隣に釣り堀をオープンした。釣りを経験したことのない人達に大人気である。


 牧場体験ツアーも大人気で、定番の牛の乳搾りや乳製品の作業工程見学、バーベキューなどに加え、最近では週末になると草競馬を開き、人々の目を楽しませている。


 更にもう一つの目玉として、近日中に魔獣動物園をオープンする。これは比較的大人しい種類の魔獣だけを集めて、魔獣の形態や身体的な特徴を見せる形態展示という画期的なシステムを導入する予定だ。


 このように「ここでしか見れない」「ここでしか体験できない」を次々に企画して、集客率UPに繋げてきたエリスだったが、彼女はまだ満足していなかった。


 次なる一手は...

 

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