第34話 報告します

 街の中央広場に戻ると、そこでは芋煮会が開かれていた。


「ん~♪ 良い匂い~♪ お腹空いたね、カイ」


「そうだね、食べようか」


「お~い、エリスちゃん。こっちこっち! ほら、エリスちゃんの為に作った肉たっぷりの芋煮だ! 沢山食べてくれ!」


「わぁ~♪ おじさん、ありがとう~♪ いただきま~す♪ 熱っ! ホフホフ...おいひ~♪」


 カイは、肉の塊にしか見えない芋煮に若干引き吊りながらも、嬉しそうに食べるエリスの姿にホッコリした。


「そうだ! ねぇ、おじさん、良かったらこの肉も使って!」


 そう言ってエリスは、ストレージから次々と獣の肉を取り出した。


「え、エリスちゃん、こ、これは!?」


「これがオークの肉、つまり豚肉ね。こっちはブラッディベアーの肉、つまり熊肉ね。んでこれがブラックゴートの肉、つまり山羊肉ね。それからこれはホーンシープの肉、つまり羊肉ね。あとは...」


「待った待った、エリスちゃん! こんなに大量の肉、一体どうやって手に入れたんだ!?」


「あぁ、これは以前、魔獣のスタンピードを止めた時にね、大量に入手したのよ。まだまだ沢山あるわよ?」


「へ、へぇ、そ、それはまた...」


 おじさんも遠い目になった。カイは「そういえばそんなこと言ってたなぁ」と最早達観していた。エリス相手にいちいち驚いていたら身が持たない。


「今までは地産地消ってことで、地元で獲れた魔獣の肉だけ使ってたけど、もうそろそろ解禁してもいいよね♪」


 的を得てるのか得てないのか微妙なエリスの発言に、街の人達は揃って苦笑した。

 


◇◇◇



「みんな、ただいま~♪ これ、お土産だよ~♪」


 たらふく食ったエリスとカイは農場に戻って来た。


「お帰りなさい、エリス様、これは?」


「芋煮だよ。鍋ごと貰って来たから、みんなで食べて?」


「あ、ありがとうございます! これが芋煮!?」


 肉しか見えない鍋にユリは困惑し、カイは苦笑した。



「そうですか...そんなことが...」


 ユリ達が鍋を食べ終わった後、クズと対峙した件をエリスが報告した。


「うん、だからあのクズが街に来ることはもう無いから、安心してね?」  


「ありがとうございます...あの...エリス様が領主様になったらここはどうなるんでしょうか?」


「ここはそのままだよ。なにせ街の重要な資金源だからね。私がここに住み続けるのは難しいけど、新しい人を雇ったりして規模は維持するつもり。寧ろより発展させていこうと思ってるわ」


「そうですか、良かったです...」


「まぁ、何れにしてもまだ先の話だから。今は職場環境の整備をしながら待遇に関しても色々と...あぁっ!?」


「ど、どうしました!?」


「いやだわ、私ったらすっかり忘れて...っていうかあなた達の方から言ってくれても良かったのに...お給料のことよ」


 すると四人は顔を見合せて、


「あぁっ!」「そういえば」「すっかり忘れてた」「それどころじゃなかったもんね」


「まぁ、お互いうっかりしてたっていうことで...あなた達、今まで幾らぐらい貰っていたか教えて?」


 四人が提示した金額を確認したエリスは、ゆっくりと頷いた。


「それじゃあこれだけ払うことにするわ。どうかしら? 不満があったら言って?」


「こ、こんなに頂いていいんですか? 貰い過ぎじゃ...」


「危険手当と出張手当が入ってるからそれでいいのよ」  


「危険って...魔獣の世話のことですか...」


「それもあるけど、ほら、ここ山の中でしょ? 魔獣の襲撃に備える必要があるから」


「やっぱり襲って来たりするんでしょうか...」


 四人は肩を震わせた。


「全く無いとは言えないわね。でも安心して。この農場を囲うように柵を設置してあるから。例え襲って来たとしても中には入れないわ」


「ホッとしました...」


「それじゃあこの金額でいいわね? 利益が上がって来たら昇給も考えるから」


「はい、よろしくお願いします!」


「カイもそれでいい?」


 いきなりフラれたカイはビックリした。


「僕も貰えるの?」


「当然じゃない。もっともカイの場合は危険手当じゃなく能力手当になるけど」


「あぁ、なるほど。分かったそれでいいよ」


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