第35話 計画してます
翌日、今度は初収穫した野菜類を持って、エリスは街を訪れた。
今日も街の中央広場は人で溢れている。エリスが次々と収穫品をストレージから出す度に歓声が上がる。最早見慣れた光景になりつつある。
「野菜に合う肉も用意してあるからね~♪ 肉肉肉、野菜を挟んでまた肉を食べる。このルーティンを忘れないようにね~♪」
そう言ってエリスが取り出したのは、昨日同様、他で獲れた魔獣の肉である。集まった人達は苦笑するしかなかった。
「エリス様、連日ありがとうございます。お陰様で街に活気が戻ってまいりました」
「あ、町長さん、後で相談したいことがあるので、お時間頂いていいですか?」
「もちろんですとも。いつでも仰って下さい」
「ありがとうございます。では後程」
そう言ってエリスは肉の焼ける芳ばしい匂いの中に消えて行った。
◇◇◇
「温泉リゾート化計画ですか!?」
「えぇ、この領地を更に発展させようと思っています」
エリスは計画の概要を町長に説明した。
「これはまた...壮大なスケールですね...」
「町長さんはどう思われます? 忌憚のないご意見をお聞かせ下さい」
「そうですね...まず気になったのは、初期投資の資金をどうするかという点です。ちょっと伺っただけでもかなりの金額が必要になると思われますので」
「あぁ、資金面は心配要りません。私の個人資産から出しますので」
「エリス様個人のお金ですか!? いやしかし、いくらなんでもそれは...そこまでして頂く訳にも...」
「いえ、これは必要な投資なんです」
「と言いますと?」
「他所者の私が、すんなりここの領主になるための謂わば実績作りです」
「でもエリス様は既に様々な実績を上げていらっしゃるのではありませんか?」
「あれは他領でのことですからね。あのクズに対してはああ言いましたが、やはりこの地で目に見える成果を上げておく必要はあると思っています」
「なるほど...そういうものですか...」
「今までの実績でも十分かも知れませんが、念には念を入れておきたいんです。私が領主になるために力を貸して頂けませんか?」
「もちろんです! 私に出来ることがあれば何なりと申し付け下さい」
「ありがとうございます。ではまず、温泉リゾート化計画の説明会を開きたいと思いますので、街の有力者の方々にお声がけをお願いします。あと牧場の関係者にも」
「牧場ですか!?」
「えぇ、牛の乳搾りや乗馬体験などは、観光の目玉になりそうですから」
「なるほど、了解致しました」
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