第34話 カール視点 失望

「何!?リカ・ハイドが男と住む事になっただと?」


「・・・はっ。さようでございます」


日時はリカがボットの屋敷に住む事になった数日後


ここは王城


その王城の中の王位継承権第2位の男が住む部屋である


「何故だ?リカは『神に仕える未熟な身』だからと俺の申し込みを断ったはずだ。もし、婚姻が出来る状態になったらまず俺の所に来るのが筋ではないのか!?」


目の前にいる片膝をついている家来に喚き散らしているのは部屋の主であるカール・フィリップ


王を父に持つ次男である


「・・・『噂』ではございますが、お伝えしてよろしいでしょうか?」


「なんだ!?さっさと言え!?」


「・・・はっ。カール殿下とリカ様の婚姻を反対された方がいらっしゃった様で、それが原因で婚姻が結ばれなかったと」


「なんだと!?王子の俺の婚約を邪魔できる奴などいるはずがないだろ!?」


「・・・国王陛下がお許しにならなかったとの事です」


「・・・はぁっ!?」


膝から崩れ落ちるカール


「何でだ・・・何故、父上が・・・」


「お気を確かに・・・」


「何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ!!!!!!!??????俺は父上に認められるように剣術は勿論、魔術、帝王学に至るまで全て努力した。

どれも王族として恥ずかしくない域までたどり着いた才能もある。何故、父上は俺にその様な仕打ちを!?」


カールの喚きに黙る家臣


「・・・何とか言ってみろ」


「・・・はっ・・・ですが、これ以上の噂を口にすると不敬に当たりますので」


「構わん!?早く言え!?」




「・・・国王陛下は嫡子であらせられるレオ殿下をお世継ぎにとお考えの様です」




家臣の言葉に一瞬の沈黙


「・・・お前、何を言っているんだ?父上の次は長男の兄上が国王になられるのが当たり前だろう?俺はそれを補佐し良い国を作る。それに俺は何の文句も無い。それが何故リカ・ハイドとの婚姻の断りにつながる!?」


「・・・陛下はお世継ぎ問題が起きるのを懸念し、崩御なされる前にレオ殿下に全権与える準備としてカール殿下を・・・」


「・・・俺を・・・消そうとしているのか?」


カールの一言に静かにうなずく家来


「・・・そのような『噂』は色濃く貴族たちに浸透している様です。リカ様と御婚姻なさればカール殿下ご家族を滅ぼす時、現役で唯一『鑑定・大』を使えるリカ様も消さなくてはならない。それでは王族の成人の儀・またハイド家との関係も考えた時、陛下は都合が悪いとお断りに・・・」


「あはは・・・あはははっははははははははっはははははははっはははは!!!!」


壊れたように笑いながら、しかし涙を流しながら全ての感情を爆発させるカール


「何故なのだ・・・俺は国王にならなくても良い。父上の自慢の息子。兄上の良き弟として精一杯、国の政を補佐出来ればそれで良い。『良くやった』『頼りにしている』とお褒めのお言葉を戴ければ、俺は馬車馬の様に働く覚悟も、戦場の前線にも躊躇わず向かう。俺は父上を心の底から尊敬していたのに・・・そ、そうだ。それは『噂』なのだろう?なら父上に直接確認を・・・」


「・・・おやめになった方がよろしいかと。仮にその噂が事実であった場合、カール殿下がその噂を知ったと陛下がお耳にすれば確実にカール殿下のお命は・・・」


「・・・どうすればいい?」


「・・・」


カールの問に黙る家来


「答えろっ!?」


「・・・不敬をお許しください」


「なんだ!?」






「・・・カール殿下がお世継ぎに・・・いえ、陛下になられるのです。全権がレオ殿下に移される前に、今すぐにでも」






「・・・どういうことだ?父上は兄上を世継ぎにするのは決まってい・・・」


最後まで言い切らずハッとした顔をするカール


「・・・今、お前・・・父上を・・・消せと言ったのか・・・?」


「・・・お許しください。ですが、私は忠実にカール殿下に仕える身。忠臣である私の首が無くなろうともカール殿下に降りかかる災いは避けたいと言う一心からの忠言でございます・・・」


「俺は・・・もう、どうしようもないのか・・・?父上・兄上に褒めいただき、側で政の手伝いをさせて頂く事は叶わないのか・・・?」


涙をぼろぼろ流しながら、呆然としながら家来に問う


「・・・はい。残念ながらもう・・・」


「・・・俺は疲れた・・・もう下がれ・・・」


「はっ・・・殿下の身に危険なき様、兵を集めておきます。カール殿下の御一言で動く貴族はわたくしめを含め大勢おります。カール殿下・・・わたくしめにお任せ下さいませ・・・」


カールは虚ろな目をしたままベッドに倒れこむ


そのカールに背を向けて出ていく家来


家来は小さく呟く






「本当に扱いやすい御方だ。これからも俺の『傀儡』として動いてもらうぞ」






その家来の口角が上に歪み、ほくそ笑んだのをカールは勿論知る事は出来なかった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る